叔母ちゃん、82年の長いような短い人生、本当にお疲れさまでした。
ゆっくり休んでね。
叔母ちゃんは亡くなった俺の親父の妹だから、子供の頃から凄く俺の事を可愛がってくれたね。
うちの母親とも仲良くて、大人になってからも、良く実家に遊びに来て酒呑んでたっけね。
その実家も、もう無くなっちゃたよ。
叔母ちゃんもいなくなっちゃったし、ちょっと寂しいや。
叔母ちゃんの訃報を聞いて、慌てて福島まですっ飛んで行ったんだけど、さすがに着いた時間が遅くてさ、斎場に詰めてた親戚ももう寝るって言うから、お通夜に顔出せなくてごめんね。
でもお通夜も沢山の親戚が来てくれて本当に良かったね。
お花も沢山あって綺麗だったよ。
叔母ちゃん、俺、斎場まで行った後、駅前のアパホテルにチェックインしたんだ。
叔母ちゃんもアパホテル知ってるでしょ?
ほら、あのパンチの効いた社長がやってるホテルだよ。
テレビで見た事あんじゃない?
叔母ちゃん、俺、アパホテルの会員になってるから驚くほど安く泊まれたんだ。
安い割には部屋も凄く綺麗だった。ペットボトルの水もタダでもらえて、サービスも良かったよ。
ただ俺バカだからさ。禁煙室取ったつもりが喫煙室取っちゃったみたいで、当日なんとか変えてもらったんだ。
叔母ちゃん、俺、相変わらずバカでしょ?子供の頃から変わんないよね。
叔母ちゃんのお通夜にどうしても出たくて、俺、飯も食わずに車すっ飛ばして伊東から福島に向かったんだよ。
だから、ホテル着いた頃には腹ペコでさ、チェックインしてすぐにホテルの近くの寿司居酒屋に行ったんだ。
腹ペコだし、喉カラカラだったから、寿司をつまみに冷たい生ビール呑もうと思って、店員さんに注文しようと思ったら、そこの店、まさかのQRコードで注文するスタイルでさ。
原始人の俺は注文するまで10分ぐらいかかったちゃったよ。
しかもさ、叔母ちゃん。
寿司食いたくて寿司居酒屋行ったのに、注文の仕方が良く分かんなくて、食べたくもない牛タンとアヒージョ頼んじゃったよ、俺。
寿司でお腹一杯にしたかったのに、パンでお腹一杯になっちゃったよ。
叔母ちゃん、俺、こう見えて1人で居酒屋行けないんだ。
この日も1人でこの居酒屋行くのが凄く憂鬱でさ、どうしようか思ってたんだけど、QR注文が忙し過ぎてあっという間にラストオーダーになっちゃった。
出発前にその事を、1人呑み好きなウチ店長に相談したら『ワイヤレスイヤホンでYoutube見ながら呑んでたらどうですか?』って言われたから、ポケットに入れてったけど、一度も使わなかったよ。
使うどころかホテルに戻ったら、そのワイヤレスイヤホンが見当たらなくて、酔っ払ってどっかに落としたか忘れて来ちゃったみたい。叔母ちゃん、俺、ホント馬鹿だよね。
叔母ちゃん、その寿司居酒屋出た後は、ガキの頃散々遊び回ってた、駅前の繁華街を散歩してみたよ。
35年ぶりに歩いたけど、懐かしかったよ。子供の頃、叔母ちゃんとも一緒に買い物に来たりしたよね。
叔母ちゃん、35年前との違いは、キャッチのお兄さんが増えてたとこかな。少し歩いただけで、何人にも声かけられたよ。
声掛けられる度に「近くに美味しいラーメン屋さんあります?」って言って適当に断って歩いてたけど、途中フィリピン人女性から「ラーメン屋なんていいから、気持ち良いマッサージしてってよぉ〜」って声かけられた時は、本当に付いて行きたかったけど必死に我慢したよ。
叔母ちゃん、その後ラーメン屋さんに入って、焼酎呑んで餃子食ってラーメン食った辺りまでは覚えてるんだけど、その後はあんまり覚えないや。
1人で呑みに行けない。なんて言ってた割にはしっかり酔っ払ってたよ。ただ居酒屋で隣で呑んでる知らない人に声かけて意気投合する的な、上級者テクニックはまだ俺には早いかな。
叔母ちゃん、次の日の葬儀には俺の弟も来て、お通夜同様沢山の親戚が来てくれたね。
これも叔母ちゃんの人柄だよ。
葬儀の後は火葬場に行って、とうとう叔母ちゃんは空に行っちゃったけど、向こうに行ったら、医者に止められてた大好きなお酒もタバコも、好きなだけやんなね。
叔母ちゃん、むこうには俺の親父や、叔母ちゃんの兄さんや姉さんや旦那さんもいるから、仲良くやるんだよ。
叔母ちゃん、皆によろしく言っといてよ。いずれ俺もそっちに行ったらまた遊ぼうね。その時は一緒に呑もうよ。それまで天国から見守っててね。
叔母ちゃん、葬儀も無事終わったし、雨も強いし、時間もかかるから、俺、そろそろ伊東に帰るわ。
叔母ちゃん、さっき『天国から見守っててね』なんて言ったけど、帰り道の5時間。運転中ずっと叔母ちゃんに見られてる気がしてたよ。早速向こうから見守ってくれてるのかな。
叔母ちゃん、でもその目線は叔母ちゃんのじゃなくて、この人のだったよ。
その後も運転に集中してるのに、何度も目が合って困ったよ。ずっと俺の方見てんだもん。
叔母ちゃんは賑やかで笑う事が大好きな人だったから、俺はあえて賑やかなブログで見送るよ。じゃあね、叔母ちゃん。バイバイ。
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