「隊長、ハセガワ少尉の攻撃により、敵のデカブツにダメージを与えることに成功」
「中尉、ご苦労、俺達が相手している雑魚の残機は？」
上空のルッグンでモガミと共に戦況分析したスザキ中尉は答える
「基地の規模から察しますに残り５機ってとこですかね？」
「十分だ。ボウヤ達には、後５分頑張れやと伝えてくれや」
「了解、モガミ、復唱！！」
「了解、マスター・・フブキ、後５分頑張って頂戴ね」
「モガミさん、フブキ、了解しました。マスター、もう少しですよ！」
「そ・・そうだといいのだがな！」
ソニックブームをなんとかいなしながら、ゴードンの照準を外すことに集中していたユキムラは答えた。
「マンチヨ、無事か？」
「お・・俺はまだいけるぜ・・ユウダチ、グフの損傷程度はどうだ」
「右腕は吹き飛んだけど、火力はまだあるっぽいよ」
「そう、ヒートサーベルは使えるかな」
「使えるけど、この状態じゃ抜くことはできないぜ」
「だろうな」
「苦戦してるようだな・・ユキムラ、時間稼ぎぐらいはしてやるよ？」
「ノブシゲ、お前がどうしてここにいるんだ？」
「知りたいのか・・・と言いたいが、それを説明するのは後だ。手を貸してやるよ。オオヨド、いくぞ！」
「おい、まて、ノブシゲ！」
ユキムラの問いかけに答えなかったノブシゲは、動きが止まってるナオマサのグフカスタムを救援すべく、ハイザックを駆った。
「どこのだれかは知らんが、ユキムラの仲間だな。助けにきたぜ」
オオヨドに１２０�瀬泪轡鵐�ンを撃たせながら、ノブシゲはナオマサに語りかけた。
「赤に塗った角付きのザクだと・・誰だ？」
「近衛にハイザックはまだないってか・・、まあいいや。キサマの敵じゃないぞ。援護してやるから、ヒートサーベルをユキムラに渡せてやるんだな」
「マスター、人助けは素直に受け入れたほうがいいよぽい？」
「そうだな・・恩に着る！」
ユウダチのアドバイスとノブシゲの援護で、ユキムラに近づいたナオマサはヒートサーベルを渡した。
「使ったら再チャージはできないけどいいか？」
「大丈夫だ。ありがとう。マンチヨ！」
「ところで、ヤツとキサマはどういう関係なんだ＞」
「ノブシゲは僕のいとこで、ボクが父上の命令でゲオポリスで入学して、ノブシゲは出家する予定だったんだ」
「そうか・・坊主くずれか？で・・そいつがどうしてＭＳを・・」
「そんなものはこの戦いで生き延びた後に、ゆっくり教えてやるよ。マンチヨ、ボヤボヤしてると敵にガンつけられるよ！」
「へいへい・・ユウダチ、まだやれるよな？」
「ガトリンクの一連射はできるし、ハンドバルカンがまだあるぽい」
「それだけあれば上等だよ。ユキムラ、もうひと踏ん張りだぜ！」
気力を取り戻したグフカスタムに激励されたザクFZに、赤と黒に塗られたハイザックが回線を開いてきた。
「ユキムラ、おしゃべりは終わりだ。仕事だぜ」
「ノブシゲ、言われるまでもない！」
「そうか、じゃあ、キサマにいいことを教えてやるよ。あのデカブツは、５分後に自爆する」
「どういうことだ！？」
意外な事を教えられて戸惑ってるユキムラに、ノブシゲは、この戦いの種明かしをした。
「お前は、機械人の依頼でこの基地を占拠したのか？どうして、占領したことを近衛師団に報告しなかった？」
「『一から説明』したら近衛師団のお偉いさんが納得してくれると、浦塩で騙された俺に言わせるのか？細かいことは後々に説明してやるけど、キサマ等が苦戦してる地獄王ゴードンを起動させたのは俺たちだよ」
「なんだと、アレや機械獣を起動させたのはお前なのか？どうして、そんなことをする！？」
「知りたいのなら、次の５分を生き延びる事に集中しなよ・・来るぜ！」
さきほどの脚部での攻撃で、ソニックブームを出せなくなったとはいえ、４本の腕からのビーム砲と胸のメガ粒子砲で、小隊を全滅させるのは十分な火力を有するゴードンからの一斉射が襲い掛かった。
「このまま逃げ回っていても仕方がない。反撃に出るぜ」
「そうか・・だが、小隊の指揮官は僕だからな。僕の指揮に入れよ！」
「マスター・・・」
ゴードンのことを知ってるのは私たちなのにと言いたげなオオヨドに、ノブシゲが答えた。
「オオヨド・・ここで意地をはってもしょうがない。ユキムラ小隊長殿、ノブシゲは小隊のアドバイザーとして指揮下に入ります。これでいいか？」
「ああ、それでいいよ。さっそくだが、アイツの行動パターンをルッグンに教えてくれないかな？皆で情報共有したい」
「あいよ・・・オオヨド、上空のルッグンとデータリンクしてくれや」
「は、はい」
上空のルッグンに乗るモガミとオオヨドがデータリンクすると同時に、ユキムラとノブシゲは、ナオマサたちの援護の元にゴードンの懐に飛び込んだ。
「怖いか・・ユキムラ？」
「一発、直撃したら終わりだけどさ・・昔の連中が言ってた『脳汁が出る』というのはこういうことかな？」
「だろうな。熱くなるよ！」
ビーム砲の弾幕をかわしながら内懐に再度飛び込んだユキムラは、最後のグレネードを装填して、関節部を狙った。
「マスター、LＯＣＫＯＮしました。撃ってください！」
「わかってるって・・えっ！？」
ウラジオでノブシゲと立ち合った時と同じ太刀風を頭上に感じたユキムラは、やられたと覚悟したが、それは落ちてこなかった。
「あ、無事だ・・・」
「ユキムラ、動きを止めるな・・もう一度狙いをつけろ！」
「言われなくたって！」
ゴードンが振り下ろした太刀を、シュツルウムファストをぶち込んで破壊したノブシゲに激励されたユキムラは、足の付け根をグレネードで狙った。
「マスター、ＬＯＣＫＯＮしました！」
「食らいな！」
発射されたグレネードは右足の付け根にヒットしてゴードンがよろめいた。
「よくやった。これでソニックブームは使えない。後少しの辛抱だぜ！」
「だと言いがね。飛び道具はないよ」
このマガジンを使ったら、弾ギレなマシンガン以外は格闘しか手がなくなったユキムラが愚痴る
「大丈夫だよ…後1分でゴードンは自爆する。ルッグンに連絡してくれや」
「わ、わかったよ」
ルッグン経由でノブシゲの報告を受けたミナセは、ノブシゲ隊によくやったと褒めてタカツキに話しかけた
「ボウヤ達は、よく頑張ってる。俺達ももう一踏ん張りだぞ！」
「はい、ですが…」
「何か気になることがあるのか？ホシイ・ノブシゲへの尋問が気になるのか？」
オエンベリ領で出くわした青臭いボウヤが存外やるじゃないかと内心喜んだタカツキは、話題を変えた
「それもそうですが・・ゴードンが機能停止するかは疑わしいと思います」
「そうだな。やっぱし俺達の助けは必要だよな・・ん、コンゴウどうした？」
「マスター、大変なことになったYO、サイクロプス隊がPOWされたよ」
「な・・なんだと？」
「残念だけど・・『解放の条件としてパックリーダーと我々のセキュリティを確保しろ』とノブシゲのMENは要求してきたよ！」
「ふ、ふざけたことをして！」
「大隊長、待ってください！我々が暴発したらタニベ中尉が・・ここはヤツらの言う通りにしてください！」
「ち・・・コンゴウ、ルッグンを呼び出してくれ」
「はい、マスター、モガミ、リピート」
スザキ中尉が出たのを確認したミナセは、沖合のサブマリン402に、アレの使用は待つように伝えるように要請した。驚いたスザキが聞き返した
「大隊長、破壊命令を現地判断で中止したらタダですみませんよ！」
「エトロフ島のマエダ司令には俺の責任でやったと申し開きするつもりだ。まずはマエダ大佐にはそう伝えてくれ・・いったん、戦場から離脱していいぞ。後は俺達でなんとかする。30分経っても連絡がなかったら、全滅と判断して４０２に破壊命令を出すよう伝えろ」
「は、はい、大隊長にご武運を！」
上空で離脱するルッグンを見送った、ミナセはタカツキとハヤトと協力して残存機械獣を一掃し、ユキムラ達の支援に向かった。
「おい、ノブシゲ、5分経ったけど、自爆せんぞ！そういう筋書きじゃないのか？」
「そのはずだが・・オオヨド、ヤツに自爆コードを打ち込んだんだろうな？」
「マスター、打ち込んでますよ！」
オオヨドは感情的に反発した。その反応を見て打ち込んでると察したノブシゲは、ユキムラに作戦を変えたいと提案した。
「ユキムラ、すまない、どうやら小細工は通用しなかった。ゴードンに突撃する」
「なら仕方ない・・突っこむっぞ！なんか策はあるか？」
「・・・オオヨド、やつの弱点を探れ」
「・・・ゴードンの弱点は、胸の髑髏です。ですが、そこは胸の拡散ビーム砲の真上です！」
「その周りの装甲箇所は実弾兵器で破壊できるのか？」
「バズーカやパンツァシュレックはもちろん・・自爆覚悟で突っ込んでも破壊するのは無理ですね」
「だということだ・・カミカゼは無理だとよ！どうするよ、ユキムラ隊長殿、お宝をコイツにぶち込むのけ？」
「そんなものを喰らうマヌケな奴だったら、とうの昔に破壊できてるよ！突っ込むよ！」
「そうこなくりゃ、キサマ等もいくんだろ！」
損傷したMSのコクピットの中で気落ちしてるナオマサたちを、ノブシゲは喝を入れた
「バカ言うんじゃない！まだイケるぞ！ユウダチ、まだ戦えるだろ！」
「マンチヨ、当り前じゃないっぽいよ。まだハンドバルカン砲があるから、フブキとオオヨドの突撃を支援することはできるっぽいよ。ムツキ、イナヅマも戦えるよね」
「もちろんなのでし、マスター、いくのし！」
「なのです。マスター、できれば、このまましていたいのですが、弾はありますよ？」
「いくに決まってるんだろ！」
「なら、選択肢は一つ、最後まであの馬鹿どもにつき合ってるよ！」
「ということだ、ユキムラ突っ込むぜ！」
「お、おう！み・・みんなありがとうよ！！」
気力を取り戻した小隊は再度、ゴードンに突撃を開始した。
(続く)
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