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2024年04月29日16:38

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ミツバチのささやき(El espiritu de la colmena)

 スペインの名匠ビクトル・エリセが1973年に発表した長編監督第1作。スペインの小さな村を舞台に、ひとりの少女の現実と空想の世界が交錯した体験を、主人公の少女を演じた子役アナ・トレントの名演と繊細なタッチで描き出した。スペイン内戦が終結した翌年の1940年、6歳の少女アナが暮らす村に映画「フランケンシュタイン」の巡回上映がやってくる。映画の中の怪物を精霊だと思うアナは、姉から村はずれの一軒家に怪物が潜んでいると聞き、その家を訪れる。するとこそには謎めいたひとりの負傷兵がおり……。2017年、世界の名作を上映する企画「the アートシアター」の第1弾として、監督自身の監修によるデジタルリマスター版が公開。(映画.comより)





<2024年3月31日 劇場鑑賞>

 この名作を未見でした。今回、和歌山にできたミニシアターが、近くのシネマコンプレックスで上映された「瞳をとじて」に合わせてビクトル・エリセ監督の特集を組んでくれたのでした。実は最初は少しケチな発想をして、DVDレンタルを見に行ったのですが、たったひとつの「ミツバチのささやき」は借りられてしまっていて、縁がなかったのでした。

 しかし、おかげで大画面で見ることができました。本当に名作でした。小さくても女の子独特の感性、姉との独特の関係性などを垣間見るにつけ、「そうそう」と共感することしきりでした。私自身は弟しかいないので姉がいる感覚って想像でしかないのですが、この映画の主人公アナのように、物心ついたころから姉とずっと一緒だったら、姉の言う世界が100%になりますよね。

 比較的裕福とは言え、厳格な父親が君臨している家庭。養蜂場を営みながら蜂の研究を続けている父親は、かなり気難しそうです。そんな中、村で定例の映画上映会が開かれます。今回は「フランケンシュタイン」、小さなアナは衝撃を受けます。わからないことを姉イザベルに聞くのですが、イザベルは「あれは映画だから怪物たちは死んでない。怪物は精霊だから見えない。でも、友人になったら話すことができて、私はすでに友人なんだ」みたいなことを言います。小さいアナは姉の言うことを信じ、いつか精霊と友達になりたいと思います。そして、村のはずれには井戸つきの廃墟があるのですが、イザベルは「ここに精霊が住んでいる」と姉さんぶったウソをつきます。すっかり信じたアナは、時々ここに来るようになります。

 ある時、脱走兵が(少し前までスペインでは内戦が起きていた)この廃墟に逃げ込みます。やって来たアナに見つかった脱走兵。でも、アナは「精霊かな」と思ってリンゴを差し出します。そして、その後もコートや食べるものを持って来て、なにかと世話を焼き始めるのです。この辺はどうなんでしょうね。もちろん、筋書き通り「精霊と仲良しになりたい」と思っていたでしょうが、それだけではないような気がします。つまり、女の子独特のオマセな感覚、秘密の場所で自分だけが、他人が知らない人と会っている・・・そんな感覚もあったのでは?と推測します。うがった見方かもしれませんが。

 やがて脱走兵は追っ手に見つかり、射殺されます。コートに名前が書いてあったせいで父親が呼び出されます。まさかあんなに小さなアナが脱走兵の世話を?驚く父親。そうとは知らず廃墟までまたやって来たアナ。血痕を見て驚くと同時に、探しに来た父親に呼び止められ、走って森の中まで逃げるアナ。一晩みんなが探しても見つかりません。やがて帰ってきたアナはしかし、精霊の存在をしっかり信じていて、夜の暗闇に「私はアナ」と呼びかけます。

 自分は子供の頃、こんな機会はなかったけれど、同じ状況に置かれたら同じことをするかもしれないと思いました。いろんな勘違いに気付かないまま、自分が感じたことだけを信じて「こんなことした」と思い込んでいるかもしれません。どちらにしても、少女の気持ちが沁みるほどわかる映画だと思いました。名作ですね。
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