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2024年04月10日21:56

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徳島旅行《壱》プロローグ

徳島に旅行に行こうと思い月～木で休みを取った。普段の土日を加えれば６連休である。

土曜の夜はインディアカに誘われていたが、人が集まらなさそうで迷ってた。旅行も控えてるし正直気が進まない。だが直前で参加者が増え、『勿論ケンさんも来るでしょ？これで人数揃うね』と先に言われてしまい今更ノーとも言えない。夕方に家を出て、天王寺で天一を食べて桜ノ宮へ。今日は９人も集まったのでなかなか楽しかった。

終わって蒲生四の豚吉(とんきち)で餃子で一杯やり、止せばいいのに大盛りチャーハン。案の定食い過ぎて大後悔。歳だよな、歳！
漫画喫茶に泊まり、日曜は昼からインディアカ。いつもの様に練習後に宴会。帰宅した。

月曜から徳島に行く予定だったが全く予定が決まってない。何泊するかも未定だ。極端な話、日曜のインディアカが終わってそのまま出発も考えた。淡路島経由のバスに乗れば夜には着く。だが店は殆ど閉まってるだろうし、着いても寝るだけだ。おまけに洗濯物も抱えてる。
日曜日は一旦家に帰った方がいいだろう。やはり出発は月曜って事になるな。
連休最後となる木曜に運転免許更新の予約を入れていたので、水曜には帰って来るか。だとしても２泊３日。充分だろう。場合によっては水曜泊まって、木曜の朝一に出れば昼過ぎからの免許更新に滑り込めるだろう。最悪免許更新をキャンセルし、後日改める可能性も頭の片隅にはあった。

計画がまとまらなかったもう１つの理由はルートだ。徳島に行くには淡路島を経由するのが一般的かもしれないが、うち(泉佐野市)からはかなりの大回り。料金も高い。もう１つは南下して和歌山からフェリーって方法がある。どちらかで行ってどちらかで帰って来るとしたら、帰りは陸路の方が良い。平日の大阪市内を通るのだから激混みの店、オムライス発祥の『北極星』や平日しか営業しない『弥七』に行けるだろうし、水曜の夜はインディアカの練習をやってるそうだから、そこにも参加してみたかった。旅行帰りにそのまま免許更新に行く可能性があるのだから帰りは淡路島経由がベストだ。て事は、フネは往路って事になる。
勿論同じルート、交通機関で往復したっていいのだけれど、そこはやはり旅人の血だろうか。違う景色が見たいのである。
考えてみれば、フネに乗って旅に出るなんて最高の旅情だ。そう思い始めたら、もうそれしか考えららない。波に揺られながら四国に渡る事を決めた。

それより数日前に話は戻るが、親父の手術が決まった。既に全身に癌が転移しているのだが、高齢なので進行も遅く、病気と共存している形だ。本人も散々暴れ回った人生だったから未練は無く、もう手術は受けないと言っていた。しかし生きるか死ぬかと訊かれたら、誰だって答えは決まってる。母と医者の説得もあって手術を受ける事になったのだが、それが月曜日だった。
連絡を受けた俺は一瞬実家に帰ろうかとも考えた。徳島旅行の為にちょうど休みも取ってある。だが俺が帰っても特に何か役立つ訳でもないし、取り敢えずは見守る事とした。そんな、まんじりともせず迎えた週末だったのである。

月曜日、親父の手術の日。何も手につかない、と言ったら大袈裟かもしれないが、何をしてても脳裏をかすめる。
さてどうしたものか。ホントに徳島に行っちゃっていいのだろうか。阿波尾鶏で一杯飲んでる頃に手術の結果を聞く事になるだろうが、それが良い結果ならまだしも、もしそうでなかったら…？
旅行に行きたい気持ちは勿論あるが、その一方で、やはり気が重い。起床が少し遅かった事もあったが、そんなこんなやってるうち、時計の針がフェリーに間に合わない事を告げた。

まぁ、これは『行くな』って意味なんだろうな。後ろ髪を引かれる様にして旅行したって楽しいはずがない。そう自分自身を納得させようとする。ただその一方で、それじゃまるで最初から悪い結果を予想してる様ではないか。せめて俺１人だけでも遊び回って、元気を届けるべきじゃないのか。いやいや、そんな空元気、寧ろ痛々しいぞ？
胸の内ではそんな押し問答をしつつも、頭では今日からの４連休をどうするか、冷静に考えを巡らせていた。そしてふと思い付く。
免許の更新を今日に変更できるとしたらどうだろう？面倒くさい仕事を今日片付けてしまい、後は結果次第で考えればいい。月～水で考えてた旅行だが、火～木にスライドするのだ。あまり考えたくはないが、旅行に行かないって選択もできる。
俺は大急ぎで木曜の予約をキャンセルし、今日(月曜)の予約状況を確認した。最終は14時の回だが、今家を出れば間に合う。調べてみると意外にもガラガラで予約が取れた。俺は急いで準備して電車に飛び乗った。
路線を調べたり時間を確認したり、免許更新の書類を揃えたりと、慣れない事に気を紛らす事ができる。
連休の最終日に重くのし掛かってた用事も今日済ませられる。
一石二鳥である。

免許更新の話は前回の日記に書いた通りで、言ってみればこの日記はその前日譚。ただ、裏には親父の手術が絡んでいたので、かなり感傷的になっていた。年老いて自暴自棄になりつつある親父と衰退する日本が重なり、いっそ桜の花の様に、パッと散るのも美学かなと思った。いや、そうとでも考えなければやってられなかった、と言うのが正直なところである。

免許更新は無事完了。せっかく知らない街に来てるのだから知らない店で買い物して行こう。面倒な仕事をやり遂げた嬉しさも手伝い、久し振りに寿司でも食うか。(スーパーの３割引きだがw)
身体に悪そうだからと敬遠していたカレーせんべいも今日くらい解禁しよう。
帰宅してビールを開けた時、携帯が鳴った。間違いなく『あの結果』だ。

桜満開で１年で１番良い季節。入院手続きから手術と、それ所じゃなかったけど…
との前置きが珍しいな。こりゃ結果が良くて饒舌になってるか、或いは正反対で、悪い報告に口籠ってるかのどちらかだと直感した。無意識に奥歯を噛み締めた。
母にしては長い文面を焦る様にして読み進めると、結果は前者であった。
右肺の1/3を切除。悪性ではなく肉芽腫との事で、それは今検査中。
との事。その検査結果も気にならないではないが、ひとまず大丈夫らしい。
張り詰めていた緊張は、アイスクリームが溶ける様にドロドロ崩れ去っていく。

よかった…

それ以外の言葉は何も浮かばなかった。
おっとそうだ！寿司を買って来てるんだ。これを見越してた訳ではないけれど、結果オーライだ！