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2024年03月02日02:09

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『毒ガス怪獣出現』の出現

１）『毒ガス怪獣出現』が出現する前に

　言うまでもなく『帰ってきたウルトラマン』は『ウルトラマン』のリメイクである。
　だからそこには、『ウルトラマン』をそのままコピーした部分と『帰ってきたウルトラマン』独自の部分が混在している。その混在した部分も制作スタッフが意図して練り上げたポイントはそう多くはなく、多分に偶然そうなってしまった要素が入り混じっている(当時の常識もある。人外のレギュラー隊員はいないとかアラシはザラガスに飛び掛かってナイフでグサグサ刺したりしないとか)。

　『ウルトラマンマックス』は一話一話世界観がリセットされたという想定で造られたそうだ。今となっては違和感しかないが、元々『ウルトラマン』も世界観は統一されておらず、特に第26話『怪獣殿下(前編)』など、大阪の子供たちは怪獣をフィクションの存在と信じ、ウルトラマンごっこの挙げ句ベータカプセルを天に掲げるポーズまで披露する。時代設定の共通意識も見られず、果てはパリに行ったはずのハヤタも次の週には何事もなかったように日本支部に勤務していた『地上破壊工作』。これらの何の配慮もない展開は天然で、前後のつながりなどはっきり言ってほとんど誰も気にしていなかった(ニュージェネの時代になってもそんな部分は散見される)。
　『ウルトラセブン』の時代となればそれなりに基本設定は尊重されるようになった(申し合わせを守らない監督もいたけど)。時代設定を放映日リアルタイムとする共通認識が成立したのは『帰ってきたウルトラマン』からだ(『怪奇大作戦』からだと思ってもイイよ)。ここでやっと、旧日本軍の化学兵器が物語に(再)登場する余地が現れる(『ウルトラシリーズ』最初の『旧日本軍の化学兵器』は『ゴローと五郎』の青葉クルミだろうケド)。

　さて、企画案の『新ウルトラマン』では最初の話の新ウルトラマン登場編から何話目かの変身者確定編まで数話に渡る流れがある。恐らくその後の改定案でもウルトラマンの帰還に関しては複数話で処理しようという構想があったのだろう。この頃にはまだ、新規で巨大ヒーローの出現を描く物語構造などに慣れてる者はいないし、どの設定が不可欠でどの設定がいらない子なのかなど、試行錯誤で整えてゆくしかなかったのだから。
　実際に放映された『帰ってきたウルトラマン』でも『怪獣総進撃』と『タッコング大逆襲』は緩い前後編になっているし、第６話までで一つのプロローグをなしているというのは、みんな賛同してくれるんじゃないかなぁと思う…、どうかしら(自信がない)。

　一応第６話までの『プロローグ期』の後の『帰ってきたウルトラマン』は安定期というかルーティンと呼んだら怒られそうだが、当初の勢いを失いそうになっていたように感じられる。『停滞期』とでも呼ぶべきか、そんな気分を打ち破ろうとしたのが劇場用作品レベルの大規模な破壊特撮を企図した、俗に言う『大東京破壊シリーズ』だ。満を持して襲い掛かってきたレベル違いの脅威である宇宙怪獣との死闘までを含め、円谷プロがその持ち味の粋を尽くして造り上げた大作志向の力作は、元々『銀幕で活躍する大スターである怪獣をお茶の間に』という円谷プロの想いを形にした『大作期』だ。
　その後はまたあまり芳しくない出来の話が続くが、第三クールには作家性の強い力作が制作されるようになり、その辺りの『帰ってきたウルトラマン』をベースに、新作『ウルトラＡ』が企画されていくのであった。

　『帰ってきたウルトラマン』の、そんな『流れ』の中で偶々『毒ガス怪獣出現』が制作された、と小生は考える、…別に賛同を強要するつもりはないが。

２）『毒ガス怪獣出現』の出来はいかがかな

　『毒ガス怪獣出現』は『帰ってきたウルトラマン』の第11話、『プロローグ期』と『劇場版的大作期』に挟まれた、呼び方は悪いけど『停滞期』、足踏み状態の頃の作品だ。

　何と云うべきか立ち位置上不可避な不遇としか形容することができないのだが、『帰ってきたウルトラマン』の比較対象は、完成度高レベルでどのお話をとっても一つとして風作・凡作とかしくじりとかがなかったと言われる『ウルトラマン』以外になく、最初っからハードルがめちゃくちゃ高かった。それでも『帰ってきたウルトラマン』は前作に果敢に挑んでいたし、実際開幕直後の『プロローグ期』の完成度は高く、決して『ウルトラマン』の後塵を拝するような出来ではなかった（ついでに言うと同期のライバルはまだまだ微妙な出来の時期で、比較対象にはならなかった）。
　そんな『最初のピーク』を越えちゃった『帰ってきたウルトラマン』は、まぁそういう訳で相対的に落ち込んだ状態となった。飽くまでも個人的な意見なのだが、結果的にここらの一ヶ月程のレベルが『帰ってきたウルトラマン』の、更には後の『ウルトラマンシリーズ』の、標準と云うかスタンダードレベルとして定着したんじゃないかと思うのだ(理由は定かではないけど)。

　誰もが胸をわくわくして観ていた『ウルトラマン』と比較されることになった『帰ってきたウルトラマン』だが、個人的には当然胸をわくわくさせて観ていた、当然だ。だが今この年齢になって思い出してみると、『ウルトラマン』の再放送を観る時の方が、わくわくレベルが高かったように思える(まぁ当時の小生以外の視聴者･ちびっ子たちがどう受け止めてたかは知らない)。放映版(ソレも再放送だ)を観るか怪獣辞典を読むか、とにかく独学で作品をおベンキョする以上の方法を持たず、青葉クルミやらゲラン鉢の幼虫やら宇宙時計やらの意味も知らない温い自称マニアでしかなかった小生には作品をどう評価するかなど発想すらなかった(今知っているとか言う気もないケド)。

　それでも例えばファンタスティックコレクション･空想特撮映像の素晴らしき世界Ⅱなぞを読んで、そこで紹介されていた『帰ってきたウルトラマン』の批判的な評価(ウルトラマンの強さが感じられない、ＭＡＴの規模･働きが物足りない、怪獣の魅力が何となく薄い)を知って、大きく同意できた訳ではないにしろ、結構合点がいってしまったのだ。で、その印象が何処に起因するかとつらつら考えてみるに、恐らく初見の、第７～12話くらいだったんだと思う訳で、つまり小生が『停滞期』と呼んでる辺りのお話だと結論づけられる(明確な理由はないンだけど)。
　その後の『帰ってきたウルトラマン』は、乱暴な呼び名で申し訳ないが、『大作期』『低迷期』『中興期』『ダメな侵略者続々登場期』とまぁ展開していった訳なのだが(もっと穏便で適切な名称募集中)、その中でもこの『停滞期』こそが基準というか『普通』レベルとして認識されている。更に付け加えれば、この『停滞期』レベルのお話こそ『ウルトラマンシリーズ』全体にスタンダードとして要求されている、というのが小生の判断だったりしてるのだ。
　そのスタンダードレベルの『停滞期』を『垂れ下がった電線を下から竿で持ち上げている』かのように下支えしているのが、この『毒ガス怪獣出現』という作品なのではなかろうか。

３）『毒ガス怪獣出現』危機一髪

　『昭和の地上波放映』には令和の時代には考えられないおっトろしい設定がよく見られた。コンプライス案件やら共演不可案件やらタブー案件やら、『ウルトラセブン』12話ほど脚光を浴びていなくても、今となっては口にはしないけどレベルで封印された欠番作品もたくさんあるのだ。
　我らが『帰ってきたウルトラマン』にも世が世なら欠番となるまで炎上しそうなお話があって、例えば津波案件だの私刑案件だの轢殺案件だの下手な解説を加えるとあっと言う間に拡散され、新たな欠番案件に至る可能性もある(だからどれかとか言わないでおく)。正直なトコロ、意識のお高いお節介の皆様に目をつけられないよう極力気をつけながら声高に語るってのは無神経な小生には荷が重いので、極力目立たないよう心掛けるべきかも知れない。『毒ガス怪獣出現』はその程度にはヤバい作品だ。
　だがその一方で、『毒ガス怪獣出現』は『帰ってきたウルトラマン』でも完成度が高いお話だ。テーマもドラマも物語もキャラクターも堅実でスキがない、ついでに付加価値もある。個人的にはスキがなさ過ぎるのが何となくアレで中々MYBESTには入れないケド、まぁ最高傑作の一本だと言っても過言ではないと思う。

　物語は初っぱなから既に事件が発生済みでＭＡＴは作戦行動中、怪獣の行方や実体を追っているという緊張感溢れる導入だ。ＭＡＴ内部のイライラ、山中で発見された奇妙な姿の死体、遺された映画フィルムから恐るべき惨劇が明らかになる。更にエスカレートしていく驚異の脅威、その恐怖が岸田隊員の家族の因縁に繋がり、物語は更に深い深淵へと雪崩れ込む。
　冷静に真面目に事件に相対していた岸田が毒ガスフィルムを目の当たりにしたことを切っ掛けに人知れずして自らに内包していた闇に沈んでゆく。怪獣捜索前の上野との揉め事を皮切りに被害者たち、母親、そして佐竹参謀と絡む度に落ち込んで(直接会ってないのもいるけど)、顰めっ面のよく似合う防衛隊員暫定一位の座を譲ることなく半世紀の岸田隊員の眉間に更に深くシワを刻み込む。やる気があるんだかないんだかな～な描写の上野隊員　正論だが辛辣な佐竹参謀の評価、郷が岸田の何処に同心したのか今一つ解りにくい(郷にはウルトラマンとの一心同体案件という人に言えない『重荷』はある)が、フィルムの中で展開される時代劇の世界からその撮影スタッフの惨劇を経て『帰ってきたウルトラマン』の劇中世界にあふれ出してくる恐怖、二重三重に掛けられたフィクションのフィルターの中に浮かび上がる惨劇描写は巧妙で、段取りと演出が強い恐怖感を伴って、際限なく視聴者の胸に迫ってくる。
　現在のコンプライアンス的にもかなりヤバいレベル、シャレでなくトラウマ級と言っても過言じゃない(このフィルム、今でもＧＵＹＳ(『ウルトラマンメビウス』の防衛組織)のデータベース･ドキュメントＭＡＴに死蔵されてるんだろうなぁ)。シナリオが主原因か演出が凄かったかは解らんが、この恐怖感が『毒ガス怪獣出現』全編を貫く『味』になっていることは間違いない。

　この『危うさ』が『毒ガス怪獣出現』の核なのだと思う。

４）『毒ガス怪獣出現』は岸田文夫を踏み外させる

　だが、『旧日本軍』の『化学兵器』で『民間人が虐殺』されて、と目を引くガジェットが重なって目眩ましになってるが、『毒ガス怪獣出現』のテーマはそっちの「思わず筆が乗っちまったぜ」的な勇み足の部分ではなく、岸田隊員の葛藤の方だと思う、多分。
　軍人一家岸田家の一員として、常にそのしがらみを是として育ってきた青年･岸田文夫がふと感じた違和感、そこから生じた悩みと成長と解放(？)の物語が『毒ガス怪獣出現』の主題だ、多分。
　まぁドラマ的には決着までは至っていないので、『岸田の解放･プロローグ』と言った趣であるが、違和感の自覚だけでも大きなドラマである。あの時代に軍人一家という重荷を息するが如くまとってきた岸田の『普通』が実は、他のメンバー(民間登用の郷とか兵卒出身(？)の上野とか)では扱いきれない重みを持つ『錆び付いた鎧』であった…と気付いたことが岸田隊員物語の第二章の始まりだったのだ。ちなみに第一章は第２話から第６話まで、説明は略す。
　そんな訳で『岸田文夫物語』第二章では、堅実でお堅い道を辿るように人生を歩んでいた岸田文夫が、かちんこちんだった第一章の頃からは想像も付かない明後日の方向に道を踏み外し、上野隊員のようなスーダラ隊員(失礼！)に変化していく。『ウルトラ特攻大作戦』『星空に愛を込めて』等参照のこと。

　再三述べてきたが『帰ってきたウルトラマン』は『ウルトラマン』のリメイクであり、ＭＡＴも科特隊のコピーから始まっている。変身機能をハヤタからホシノ君に移し、『ウルトラマン』で描きにくかった要素を削ぎ落としてその分色々注ぎたした。そうやってリフォームした結果、最初の『ウルトラマンシリーズ』の試行錯誤部分を整頓してブラッシュアップして、知らん間にウルトラマン背負わされた郷秀樹の青春グラフィティ的な物語を描き始めた訳だが、これが第１話の時点ではどう決着つけるべきか見当もつかない波瀾万丈な旅路になるかも知れなかった(いや波瀾万丈になるかどうかすら解らない)。
　で、何処へ繋がるか解らない郷秀樹の物語が万一の失敗(下手すると千三くらいには可能性あったかも？)をフォローするために、郷秀樹以外の『副主人公級』の人物が用意された。その内の一人が恐らくはＭＡＴ内部で郷秀樹と対立するようにお膳立てされた岸田文夫隊員なのだろう。念のために書くが、郷よりもヒーロー適性の高い南や上手く育てればアウトロー風味ヒーローになれそうな上野も、無駄に行動力がありすぎる少年･次郎も、郷のドラマが収拾付かなくなった場合の予備だった、というのは考えすぎか(ＭＡＴには主人公系美形ばかりいてデブ系短慮隊員がいないし、そもそも『帰ってきたウルトラマン』一番の主人公キャラは岸田森兄貴だしね)？

　話を戻す。
　サブ主人公として用意された岸田隊員のドラマはかなり上手くいっているように感じる。
　プロローグでの郷との対立、ＭＡＴ内部での立ち位置(５話で、命令を下す岸田長官の横に立っていたシーンが印象深い)、和解と団結、そして総力戦と勝利…、こうして岸田もＭＡＴの一員として互いを対等の存在として認め合うことが出来た。無論それは岸田だけでなく、郷や上野や丘、南に至るまで、加藤隊長と心を通じ、一つのチームとして任務に精励出来るようになったのだ。
　だがそれは全員が一心同体になったとか一体化したとか言うことではない。南は引き続き兄貴分で郷は能力だけ高い子供で、岸田は相変わらず堅物の鬼軍曹だった。
　だが岸田は木石の類いでも石の狸でもない。それは『決戦！怪獣対マット』でも明らかであり、和解に至った岸田の笑みや勝利後の悦びの表情は輝かんばかりだ。
　その後の岸田隊員はモブに徹してしまい、あまり目立つことなくＭＡＴの一員に埋没していく。『怪獣時限爆弾』など見るからに油断してヘマした郷に、５話辺りの岸田なら絶対一言二言あるハズだし、『恐竜爆破命令』でも判断の甘い南･郷にもっと怒ってもイイ筈だ。
　岸田隊員のその後を描いたお話としては、『毒ガス怪獣出現』、『ウルトラ特攻大作戦』や『星空に愛を込めて』がある。また兵器開発を担当しているらしく、スペースレーザーガン『怪奇甲虫殺人事件』やスーパーカノン『この一撃に怒りをこめて』、新型レーダー基地『星空に愛を込めて』などに関わっている。ただレーザーガンＳＰ70『二大怪獣の恐怖東京大竜巻』の説明は加藤隊長がやってた様だしＺ弾、Ｘ弾、ＭＮ弾、Ｐ弾とＭＡＴの炸裂弾のシリーズでは開発者らしい記憶がない、初期はそんな設定がなかったのかも知れない(ウエノ隊員がイデの孫って没設定あったね)。
　特にこの『毒ガス怪獣出現』は岸田隊員の青春物語における第２章の始まりの役割を果たしており、これ以降のストーリーに散見される、岸田文夫の楽しい青春物語に繋がっている。
　万一『毒ガス怪獣出現』がなければ「あの頑固で威圧的な岸田隊員がどうしてこんな軟派な行動するようになったんだ」とハゲしい違和感が生じていただろう(現にＴＡＣ山中隊員にはあの「ぶったるんどるぞ」パワハラ野郎が何故時たま、それもランダムに『良い兄貴分ムーブ』かますんだという疑惑が生じている)。岸田については間違いなくこの『毒ガス怪獣出現』が間に挟まった故にスムーズな変化に思えるんだから、もしかすると偶然の産物かとも思えてしまうのであった。

５）『毒ガス怪獣出現』の脚本家

　金城哲夫氏である。
　金城哲夫氏と言えば、だ１期ウルトラシリーズを支えた名脚本家で名プランナーで円谷プロの活動を支えた(中略)その偉大さはここで言うまでもなかろう。
　でも知らん。
　いや今は知ってるけど『帰ってきたウルトラマン』放映当時の小生は小学生、知らん知らん。
　当時の視聴者でＯＰテロップに金城哲夫って書いてあるからと行って感激した者はどんだけおるのかよく解らない。多分当時の視聴者の大半を占めるちびっ子たちには金城脚本への感慨はなかろう。
　現在では多くの研究者の努力により、『毒ガス怪獣出現』は『金城哲夫最後のウルトラ』として色々と解析され、評価されている、らしい(ごめんよく知らない)。だが本放送当時は『金城脚本優越』は発生していない。
　なんでも、金城哲夫が『帰ってきたウルトラマン』に参加し、『毒ガス怪獣出現』を書いたのは、偶々上京した時にとっ捕まったから(え？誰に？？)で、カンヅメにされて一晩で書き上げた、と聞いている。ビデオが普及していない当時、どんな資料を見て何処まで基本設定や完成作品を理解して脚本を書いたか解らない(もしこの話『毒ガス怪獣出現』を第５･６話前後編を視聴しないまま書いたのだとしたら、金城哲夫の作品世界観やキャラクターの把握力は超能力レベルではないかと思う)。主役の岸田の葛藤のみならず、郷の使命感や上野の日常、佐竹参謀の想いなど、興味深いエピソード満載だ。
　個人的にはこの第11話は放映時点では『帰ってきたウルトラマン』での佳作だと思うし、『ウルトラマン』よりは『ウルトラセブン』的なクールさを感じる。前述のようにハイテンションで幕を閉じた(いや閉じちゃいないんだけど)『帰ってきたウルトラマン』『プロローグ期』から明らかに勢いが衰えた『停滞期』では頭一つ抜け出しており、失速しかけた『帰ってきたウルトラマン』のレベル維持に大きく貢献していた。何よりも、第二期ウルトラシリーズのスタンダードレベルを明確にしたことは『毒ガス怪獣出現』を筆頭とする『停滞期』の功績である、と小生が感じていることは前述の通りである。

　『毒ガス怪獣出現』が金城氏の最後のウルトラマンであることを大きく評価する向きもあるが、意図的な『最期』でない以上、あまり深入りすべきではないと思う。小生個人としてはそれよりも、もし金城氏が生き存えていてくださっていたら、そして再び円谷作品に参加して頂けたらどんな話を書いてもらえたか予想する方が弩凄え楽しい気がする(いや無意味なのは知ってるよ)。『タロウ』とか『ファイヤーマン』とか、個人的には是非『恐竜シリーズ』のどれかのゲストで一本堅実な奴を仕上げてもらいたかったりするのだが…。

６）『毒ガス怪獣出現』から色々

　キャラクターの件
　主人公の岸田隊員と助演の郷秀樹についてはもう十分だと思う。
　シリーズを通していろいろ振り回されてる上野隊員、郷や岸田に比べて一貫した流れが感じられないが、気性が荒かったり体を張った芸を見せたり熱血友情野郎だったり、多種多様の役割を演じている。今回は石部金吉の岸田の比較対象として、喉が渇いたと任務を切り上げて基地に帰還するスーダラ隊員の姿を見せた。上野隊員を弁護すれば、「喉が渇いたから帰還した」なんて訳がない、昼夜を問わず航空機で山間部を低空飛行しながら怪獣を探し回っている状態なのだから、少しでも体調に異常を感じたら帰還すべきナノだ(ＴＡＣやＺＡＴじゃあるまいし、戦闘機を落としたら幾つもの意味でヤバい状態になるだロ)。無理しないのが上野で無理するのが岸田、と考えれば『毒ガス怪獣出現』における上野の立ち位置が理解できよう。
　一方岸田と周囲の緩衝材となっている丘、普段気配りのヒトなのにあまり印象に残らない加藤と南、『毒ガス怪獣出現』の主軸が郷と岸田の仲だからか、他のＭＡＴ隊員は完全なモブと化している。唯一レギュラーではない佐竹参謀が、岸田と非接触ながらその心に切り込む台詞を放っている…、もしかしてこの台詞を口にするのは岸田長官の方が岸田隊員の心により深く刺さったかも知れない。いやこれはギャラの問題で藤田進さんを呼べなかったのかも知れないが。
　余計な話だが、初登場の５･６話の、６話では佐川参謀と呼ばれ、今回は佐竹参謀である。その後20話や50話にも登場しているけど名前の呼び掛けなしなので、どっちが本名か解らない。確か『ジャンボーグＡ』では小野寺参謀と呼ばれていたなぁ。

　これはキャラクターじゃないが、このお話では『ウルトラスピンキック』が小学館の学習雑誌で話題にされている。毒ガスも旧日本軍も触れたくなかった小学館が無理に話題にしたのだろうか？

　モグネズンのデザインは哺乳類的で、毒ガス怪獣のくせに目つきが可愛く、比較的愛嬌のある顔をしている。背中のとげとげもなんだか可愛い。これが毒ガス怪獣でなければ『ウルトラマンメビウス』辺りで再登場(無論、着ぐるみ新造で)して、アイドル怪獣にされたかも知れない。

７）『毒ガス怪獣出現』の余談
　イエローガスに関する考察、…ないしは妄想
　旧日本軍が本国で開発していた(本土決戦用かよ！)化学兵器イエローガス、僅かな量で大の大人があっと言う間に行動不能･意識を失い、そのまま息を引き取るという毒性を持ち、怪獣が食ったら体内に蓄積され(却って濃縮されてないか、アレ)、ウルトラマンさえ生命の危機を招く、ってそんなんあるか！宇宙空間の真空に耐えるウルトラマンに呼吸障害なんかないし(ないよね)、ウルトラマンの肉体に生物学的な毒が効果をもたらす部分があるとは思えない。
　果たしてイエローガスがウルトラマンに効果をもたらした理由は何か。
　ウルトラマンの弱点として有名なのは低温だが、別にそれ以外に弱みがない訳ではない。例えばウルトラマンの活動限界は人間の気持ち、精神の活動に左右されることがある、それも生命を共有する相手(変身するヒト)だけでなく周囲の人間の気分や不安に影響されるのだ。
　そーゆー訳で仮説を立てる。
仮説あ　長年埋まっていたイエローガスが熟成され、その目的(大量殺人)の『悪意』が増幅され、ウルトラマンの行動を阻害するレベルに育っていた(俗に言うマイナスエネルギーが強くなったのであって、毒ガスの毒性が上がった、という意味ではない)。
仮説い　同化していた郷隊員が苦しんでいた…って、それじゃ宇宙へ出たら同化してる郷は呼吸が出来ずに窒息して死んじゃいそうだ。
仮説う　ウルトラセブンは莫大なエネルギーを持って地球に来ていたが、『零下140度の対決』で戦闘以前に消費してしまい、その際のガンダーとの戦いやその後の戦いで更にエネルギーを消耗して最終的に過労死寸前に追い込まれた。地球に来る時は余剰なエネルギーを持ってこないとウルトラマンといえども万一の場合があるのだ。実は帰ってきたウルトラマンは地球に来る特にエネルギーをケチってＭ78星雲光の国に残して来ていた。そのためスペシウム光線やら巨大化時戦闘でのエネルギーの維持などに四苦八苦する羽目に陥っていた。スペシウム光線やその他の光線でキングザウスス３世のバリアを撃ち抜けなかったのも、イエローガスごときに体を蝕まれたのもそのためである。後にウルトラセブンがお説教と共に忘れ物(置いて来ていたエネルギーを充填したブレスレット)を届てくれた。ブレスレットは本当に帰ってきたウルトラマンの本体だったのだ！！
　…他に仮説を思いついたら教えてね。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一応おしまい

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