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2024年02月24日11:33

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2/22,23 インバル/都響 マラ10

多分マーラーの中で一番好きな交響曲(そうなるとほぼ自動的に好きな交響曲総合ランキング3位以内には入る)。今回も2日目は早々に確保し、初日も当日午前の仕事の状況を見て3時間だけ休暇取って急遽参戦。これでようやく実演6/7回目。結局は断片のつぎはぎでしょ、という先入観を抱かれることが多いのはわかるが、それを言うなら、乱暴は承知だが、作曲家本人の指揮ー改訂というプロセスを経なかったマーラーの大地・9番は問題ないのか(実際、オーケストレーションはそれ以前の作品と比べ効率性に劣る)。トゥーランドットのリューの死以後には違和感を感じないのか。(自分はマラ10以上に(ブル9終楽章補筆より更に?)アルファーノ版ベリオ版双方に強烈な違和感を感じる。リューの死で音楽は終えて、後は映像と字幕のエンドスクロールでいいではないか。)バッハの諸作品はそもそも完成されていたとみなせるのか。マーラーの10番についても、版の選択含め、かつ、版を選択した後の自身の判断による取捨選択等含め、バロック期の作品の受容同様、演奏家の創造的行為を交えた結果と考えればいいのではないか。
クック版のどの稿かについては自分はあまり拘りは無いが、第二稿(クック死後のゴールドシュミット他の改訂の前の版)をベースとするのは個人的には違和感ない。そもそも自分が主に聴いてきたのがレヴァイン盤(1980年前後の録音だったか)ということもあり、この最も簡素な音響世界に馴染む。自分の耳にはわからないが、第三稿で改善された第二稿の各種誤りも反映されていた、らしい。

演奏は、初日は若干消化不良なところもあったが、二日目は特に管を中心にアンサンブルも改善されて、インバルもより自身の解釈を掘り下げて伝えられたという印象を受けた。ただ、それが故に、若干違和感が明らかになっていったところもあった。
一つはインバル自身の作品像。自分はインバルには複数都市で「本拠地指揮者」として巡り合ったこともあり、これまでで最も「お世話になった」指揮者の一人であることは間違いないが、いくつかのジャンルについては彼のスタイルは苦手。ベートーヴェン、ブルックナー、そしてマーラー(ただし8番は例外)がそれにあたる。2014年の都響のときは10番も例外となり得るかなと思っていたが、23日の公演を聴くとやはり違和感。基本的に耽美性を排して硬質な世界を志向しているのだろうが、特にこの作品でそのスタイルが説得力を有しているようには感じ取れなかった。「甘さに浸る」ことを避け,死の想念の先にある達観と葛藤を描きたかったのだろうが、結果的に必ずしも説得されるには至らず、むしろ70分を切りかねないほどの快速テンポに、せかせかした印象というわけではないが、若干面食らったのが実情。
もう一つはオケ。金管の乏しさは、この作品に限らず明らか。ただ、そもそも「日本人は体格が体力が劣るから…」と初めから諦めてかかってはいないか。楽器演奏以上にフィジカルが鍵となるであろうスポーツの世界でもかつてはそういう卑屈な劣等意識が蔓延していたのは事実だが、そこに生きている人々はその現実を受け入れて、葛藤し、工夫し、その結果が今になって出ているところもある。その結果がWBC決勝でのホームラン打ち勝ちであり、陸上他パワースポーツでの一見フィジカルが全てと思われる競技での健闘。うちらは日本人だし…と自己定義しているようでは、金管も歌手も、永遠に負け犬だろう。仮にそんな意識なのであれば、消費者としてはもはや用は無い。そんなことを連日貧相なトランペットA音+ホルン第一楽章冒頭主題回帰を聴きながら思った。厳しいかもしれないが。
オケはもう一つ、弦も若干残念。第五楽章コーダのあの弦楽合奏、難易度はおそらく全然大したことないのだろうが、あそこは絶対に誰一人間違えてはいけない。Vnの1人2人が拍節を間違えただけで聴衆には拭い難い傷が見えてしまう。

と、厳しいことは書いたが、いずれにせよこの作品の実演は無条件に貴重であり、また敢えて繰り返さないが日本のオケのマーラー受容は総じて秀でているのも事実(この作品で言えば、SKDによるドレスデン初演なるものに臨席したことがあったが、オケとしては都響より上だが、まあなんというか…健闘したというべきか…(笑)もちろんそれから20年以上たって消化能力も様変わりだろうが)。あと、合奏もので個々の奏者について特筆するのはあまり好きでは無いが、今回のあの首席フルートはとにかく実力が飛び出ていた。あの瞬間霧が晴れて視界が開けた、そんな印象。


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