小噺0446 足切断

本稿0399【イギリス料理】に、初めての海外旅行(大学2年生)でイギリスに行ったことを書きました。その際にGeoffrey(ジェフリー)という同年代の青年と親しくなりました。「ディスコに行こう、でもお前の服装はダメだからオレのを貸してやる」ということで、彼の実家で着替えたことを思い出します。
2008年だったか2009年だったか、ブライトン近郊の彼の家を訪れて約四半世紀ぶりに会いました。すこぶる美人の奥様が押す車椅子で現れたジェフリーの右脚は膝から下がありませんでした。

「王将」や「無法松の一生」などのヒット曲で一時代を築いた歌手の村田英雄さんが、両足を切断した状態で車椅子に乗って舞台に上がったのをテレビで視てビックリしたことを覚えています。かなり以前こことで、まだ20世紀だったと思います。

大相撲の元横綱・双羽黒が足の切断をせずに死を選んだのは2019年、記憶に新しいところです。

これらの方々が足切断に至った理由は「閉塞性動脈硬化症」という病気です。
動脈硬化(本稿0376参照)が進行すると血管が狭くなり血流が悪くなります。さらに酷くなると血管が詰まってしまいます。これが閉塞性動脈硬化症です。

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こうなると、詰まったところから外側(心臓から遠い方)は壊死してしまいます。足の血管は心臓から遠いのでこうなりやすく、酷くなると腐ってしまうことがあるのです。切断せざるを得ません。

なお、「足」は膝から下を「脚」は、股から下（太股を含む）を指します。

この病気の主な原因は糖尿病です。血液中のブドウ糖の濃度を示す血糖値は、80〜100mg/dlが正常値で、125mg/dl以上だと糖尿病と診断されます。
食事を摂ると血糖値は上がりますが、膵臓(すいぞう)から分泌されるインシュリンというホルモンが血糖値を下げて正常に戻します。ところが、暴飲暴食・運動不足・肥満・喫煙・ストレスなどが原因でインシュリン分泌量が少なくなったり作用が低下したりして血糖値が下がらない病気が糖尿病です。典型的な生活習慣病です。

糖尿病は上述の閉塞性動脈硬化症だけでなく、下記のような様々な合併症を併発します。
・糖尿病網膜症(視力低下)
・糖尿病腎症(腎機能低下)
・脳梗塞(脳の血管が詰まる)
・神経障害(痛みや熱さを感じなくなる)

2021年の統計を見ると、世界の糖尿病罹患者数は、飽食の先進国を中心に5億300万人。日本は950万人、12人にひとり。他人事ではありません。