譜読みしている、シューベルト/即興曲 Op.142-2の中間部(Trio)ですが、右手のアルペジオの比類なき美しさに気づきました。この部分はDes-dur(変ニ長調)となっています。
上段はそのまま抜き書きしたものです。楽譜上は3連符が続いているだけなのですが、をれを3声とみなして動いている声部と、保留している声部をかき分けたものが下段になります。
ここで分かることは、動いている声部と保留している声部の組み合わせです。最後の2小節以外は、全て異なる組み合わせとなっています。
続いて、動いている声部のみに注目します。最初の3小節が短3度、最後の2小節が長6度ですが、言い換えれば短3度の転回音程となっています。
さらに、旋律の動き方です。最初の小節で下2声が短2度の上行に対し、1拍遅れて上声が短2度で上行しています。その後は3声とも下行が続きますが、最後の小節のみ、動く2声部が上行していきます。
もっと追求すると、動いている声部と保留している声部の音程関係です。開いたり、縮んだりしています。しかも、その収縮幅が小節ごとに違うのです。
一言で集約すれば、『揺らぎ』と言えるのではないでしょうか。分析してこれらのことに気づいた時には、叫び声を上げそうになりました。楽譜に書いてあることは、極めてシンプルでごくありふれたものでしょう。しかし、シューベルトはこれだけ考え尽くして書いているのです。根底には歌があることは疑いの余地はありません。やはり、比類なき美しさにの裏側には、優れた考察に基づいた綿密な構築があってこそだと思いました。
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