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2023年12月31日23:33

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wonderland(後編)

(続き)

 武術の話。

 さて武術の話をする。
 武術をやっていて良かったと思うことの一つは体調が悪いときでも省エネで動けることだ。
 武術の型に含まれる動きのコツをつかめば、ただ立つのさえしんどい……という状態でも、足を持ち上げる、とか、地面を蹴る、とかいう意識なしに移動することができる。
 やり方は色々あるが、例えば下半身を抜き、重心を胸に移して上半身をちょっと前に傾けてやると、人間の身体にはバランスを保とうとする無意識のはたらきがあるので、足が勝手に前に出るのである。
 仕事中にこの歩き方で歩いていたら、パートのマダムに
 「今にも倒れそうな歩き方」
 と笑われてしまった。
 はい、大正解です。それ以外の何物でもないです。
 ただ、この動きから片腕を前に放り出しつつ重心を骨盤に落としてやるとそれだけで中国拳法でいう崩捶(中段突き)が成立しますのよ。
 ここ数年、武術は止めずに続けている、少しずつ上達している、と書いてお茶を濁してきたので、今年は興味のない人にも伝わるような何か具体的なことを書こう、と思ったら、結局伝わらない話になった。下半身を抜くとか重心を胸に上げ骨盤に落とすとか、現代の一般人はやらんよな……。
 他にも腹・胸・頭を一本の棒のようにして左右どちらかの股関節の上に乗せることで反対側の足をフリー(ゼロ荷重)にして振り子のように前に振り出し、振り出した足に残りの身体を全部寄せ、これを繰り返すやり方とかもある……の、だが……。こうして言葉にすると難解な不条理ギャグでしかないのう。
 ……武術、止めずに続けているヨ!


 今年読んだ本の話。

 箇条書きで。

 ・『アラブ飲酒詩選』アブー・ヌワース(岩波文庫)
 酔っ払いというより世界を斜めから見ている皮肉好きのおっさんがそこにいる。

 “今も昔もこれが私の流儀、
   宗教も金も糞くらえだ。
 私の伴侶としてはタブーが似合い、
   私は公認されたことには背を向ける。” 

 なんていう詩を学生時代の私が読まなくて良かったなと思う。毒にかぶれて馬鹿を加速させていたに違いないからだ。

 ”私に酒をついでくれないか、そしてそれは酒だと言ってくれ。
   私に秘密を注がないでくれ、はっきり言うことができるなら。“

 歳をとった今だからこそ、こういう詩句を読んでもただの美しい言葉と捉えることができるようになった。良きかな、加齢や。

 ・『決闘の辻』藤沢周平(新潮文庫)
 山奥大学の師匠も褒めていた藤沢周平。文章の上手さ、読み応えの重さは今さら私などが言うに及ばず。美文に隠れて世間には気付かれていないかもしれないのが、殺陣(剣術の描写)がしっかりしている点。柳生宗矩の使う柳生新陰流の太刀がちゃんと柳生新陰流なのである。これってすごいことなのでは、と剣術を修行する身として思う。比べると隆慶一郎(おそらく剣術の経験無し)の小説のド派手な殺陣は変態的ですらある。あれはあれで面白いけれども。藤沢周平は結核で闘病していたというが、剣術の経験はあったのだろうか? もし経験が無かったとしたらよほど、それこそ剣術家なみに《想像上の身体》を動かすことに長けていたのだろう。あるいは闘病中に想像力が鍛えられたか。

 ・『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』服部昇大(集英社マーガレットコミックスDIGITAL)
 タイトル通り邦画(のヤバいやつ)を紹介するマンガ。でかいボケや絵面でなく小ボケとツッコミで笑いを取りに行くスタイルは私は大好きだ!
 『ガムテープを小手みたいに巻くな!』
 とか、
 『異様に「ウワーッ!!」って叫びながらエレンが飛び出してくるのですが…!!
  あのシーンは原作にもありま』『知るか!!』
 なんていうくだりは元ネタを知らないのに声を出して笑ってしまった。
 あと、このマンガを読んで少し反省した。
 一巻の後ろの方でヒロインについて主人公が
 『アイツの事がようやくわかった気がする…
 プレゼンという名の暴力!!』
 と理解する場面がある。
 ならば、私が普段LINEで友人諸氏にやっているのは《コメントを返しづらい小ボケという名の暴力!!》であるなあ……と。
 今年の例でいうと
 “人間万事ステイサム”(ジェイソン・ステイサムはハゲたことによってより人気が出た例え話)
 “齧歯類を避けて齧歯類という謎のムーブ”(ニフレルの双子の仔ビーバーをスルーしてカピバラ観に行ったときの話)
 あたりは、我ながら酷い。
 だが……今の私から小ボケを取ると何も残らないので……大目に見てもらえると……助かるのです……。


 今年聴いた音楽の話。

 発売当時に買ったのに聴いていなかったAimerのアルバム『Walpurgis』を二年越しで今年とうとう聴いた。
 なんでかって? だってさ……季節モノのアルバムじゃん……初聴は晩春と初夏の境の時期に屋外がベストじゃん……一昨年も去年もちょうどの時期はコロナで外出しにくかったんだよ!! 今年ようやく四月末に行きつけの沼公園に出かけられたんだよ。
 私がこういう自分なりのこだわりを口にすると、かなりの率で「ハハッ」て薄く笑われる気がする、というのは被害妄想であろうか。今の私は他人の善性を信じられぬ。そして他人に理解されずとも自ら省みて筋が通っているなら譲れん。ワルプルギスナハト(四月三十日の夜)が由来のタイトルのアルバムですよ? 五月の二週を過ぎてから聴いてたら、年明けにクリスマスソング聴いてるようなもんじゃない。 それって間抜けじゃない?
 収録曲の中では『wonderland』がお気に入り。おどろおどろしいストリングスの裏でベースがビヨンビヨン鳴り、歌詞の内容としては異界としての山野の風景と恋愛における心理的な暗がりが二重写しになっていて、全体的にkalafinaの『夏の林檎』をダークかつハードにした感じ。つまり闇の林檎。と書くと不味そうだ……
 ここでkalafinaの曲を引き合いに出したことでお気づきかもしれない。『wonderland』もカジウラさん作詞作曲である。なので、私の調子が悪い時に脳内でガンガン流れるのである。脳内でベースがビヨンビヨン。……おのれ小さいDJめ!!

 さてさて今年もお疲れ様でした。
 河童さん今年は元旦から大晦日までずっとしんどかった。厄年なの? 今からこんなんで実際の本厄はどうなるんだ!? っていうくらい。
 もはや生き延びたのが奇跡、今何かもう一つ駄目押しがあったら即、怨霊にクラスチェンジする自信がある。
 来年の目標? それどころではない! ワシは今から蕎麦を食わねばならぬ!!
 皆様どうか良いお年をお迎えください。 
 河童さん来年も生きる。もし力尽きたとしても第二、第三の河童さんが必ずや人類を(以下略)。
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