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2023年11月23日08:30

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経済談義第50回:ゼロ金利はなぜ危険か

長期連載の経済談義シリーズ第50回です。日本経済超悲観派の僕がその論拠を解説していきます。


今回は「ゼロ金利」についてです。

各国では中央銀行が基準となる金利「政策金利」を定めています。
日本では日銀が政策金利を定めていて、「無担保コール翌日物」という、銀行同士が1日だけ貸し借りする際の金利を基準としているそうです。


金利が高いか低いかによって経済に影響を与えます。
一般には、金利が低いほうがお金が借りやすくなるので経済が活性化するとされています。住宅ローンが組みやすくなるので家を買う人が増えるなどの効果はわかりやすいですね。

金利が低いほうが景気が良くなるというのであれば、ずっと金利ゼロのままにしておけばよいようにに思われます。
実際日本は長期にわたり、いわゆる「ゼロ金利」政策を続けています。バブル崩壊後の1999年ごろにいったん導入されていて、その後は2010年頃から現在に至るまで「ゼロ金利」政策が続けられています。

しかし、堅実な経済学者の多くはゼロ金利政策を基本的には批判しており、一時的に導入するにしてもできる限り早期に解除すべきだとしています。
それはなぜなのか。この記事では極端なたとえで説明します。

ちなみに2010年の時点では、日銀総裁は白川氏が務めていました。
ただ白川氏は大規模な金融緩和に対しては慎重な態度で、ゼロ金利についても効果は限られたものだと認識していたようです。
自身がゼロ金利を導入したことには何らかの政治的な圧力があったのではないかと僕は推測しています。

参考記事:白川日銀総裁:ゼロ金利と量的緩和の景気刺激効果は「限定的だった」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2008-05-23/K1BM2P0D9L3601



一般的に経済学では、お金が借り放題、使い放題になってしまうと、消費を抑制することができなくなり、消費が過熱することによりインフレが進みやすくなるとされています。

たとえとして、すべての借金の金利をゼロにすると政府が法律で定めたとしましょう。それに加えて、無条件で必ず借り換えができることも保証します。
すると、お金は借り放題、つまり使い放題ということになります。

たとえば僕が個人として銀行から「1兆円」を借りたとしましょう。
何の問題もありません。借金が1兆円あったとしても金利負担はゼロですし、期限がきたときには必ず借り換えができるわけですから、事実上返済しなくてもよいわけです。銀行もなんの審査もせず貸してくれます。


借りた1兆円を握りしめて(1兆円を握りしめることができるかどうかはともかく)、僕は意気揚々とデパートに向かいます。ショーウインドウにならんだ高級ブランド品を全部買い占めてやるぞ。

ところがデパートにつくと、店の周りは大群衆で囲まれていて店に入ることができません。
見ると、押しかけた人々はみな1兆円を握りしめています。僕と同じように銀行から借りてきたのでしょう。

押し合いへし合い、何とかかんとか店内に入ると、ショーウィンドはほとんど空になっています。先客がすでに買い占めてしまったようです。
わずかに残された商品は値札が貼り替えられた跡があり、「10兆円」に設定されています。異変にいち早く気づいた店員が機転を利かせて素早く値上げしたのでしょう。

1兆円で商品が買えなかった僕は素早く銀行に取って返して、今度は「10兆円」借りてデパートに再度向かいましたが、そこは店員も抜け目ありません、値段は再度貼り替えられて「100兆円」になっていました。



上記は極端なたとえです。
ゼロ金利政策といっても今のところは、金利ほぼゼロで借り換えが保証されているのは事実上政府だけで、個人がお金を借りるときには金利が発生していますから、上記のたとえのような極端な事態にはなっていません。

しかし、本来持っていない価値を前借りして所有することに対する、一種の「料金」として金利があるのだとすれば、金利はいわばお金の値段、お金の価値の目安としてとらえることができます。
そうしたとらえ方から見ると、極端な話、「金利がゼロ」というのは、原理的には「お金の価値がゼロ」につながってしまう危険性をはらんでいるのです。

なので、堅実な経済学者はゼロ金利政策を批判しています。本来金利はプラスであるべきものである。やむを得ずゼロ金利を実施するとしても巨大災害直後などに限定すべきで、早期に解除すべき、としているわけです。

欧米各国の中央銀行も一時期ゼロ金利政策を採用していましたが、(日銀と違って)ゼロ金利を早々に取りやめて、ここ1年から2年くらいは大幅な利上げを続けています。
もちろんそれにより住宅建設などの景気が悪くなるおそれは強くなります。
しかしそれよりも、通貨の価値、お金の価値を守るほうが重要だと考えて利上げしているのです。通貨の価値を守るというのは中央銀行の最も重要な責務ですから、当然の判断だといえます。



一部の超悲観派の経済評論家の方は、「ハイパーインフレ」が今後発生する危険性があると警告しています。上記のたとえのような極端な物価上昇のことを「ハイパーインフレ」と呼びます。

楽観派の評論家の皆さんはそれを鼻で笑ってオオカミ少年扱いしていますが、僕は結構深刻にとらえています。
いまのような無茶な金融緩和をこのまま続けていけば、数十年後には上記のたとえにある程度近い事態が発生するおそれがある、少なくとも無視できるほど小さな確率ではない、と考えています。



連載バックナンバー:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942875057&owner_id=277042
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