米・大リーグで活躍する大谷翔平は、2023年シーズンのア・リーグMVP投票において、2021年に続いて満票で選ばれた。満票で2度のリーグMVPは史上初の快挙だった。打撃面では、44本塁打を放ち、リーグトップの成績を残した。打率は3割4厘、投手部門においても10勝をあげている。受賞を聞いた瞬間、大谷は、愛犬とハイタッチしたという。愛犬にも活躍ぶりが伝わっていた。
日本では認知度が低いアイスホッケーについて、世界で報じられるニュースがあった。今回、イギリスでの事故と共に、過去ロシアに拠点を置くプロチームが巻き込まれた旅客事故を取り上げる。ロシアに関しては、自国を中心に政治的に繋がりの深い国々によって結成されたリーグKHL(Kontinental Hockey League)のシステムについても紹介する。ロシアが中心となり、国を跨いだリーグは、年々拡大を続けたものの、欧米からの経済制裁により、頓挫した。時にサッカーの事情とも比較しながら、アイスホッケー界の行方について考察する。
目次
・第1章 2023年10月28日にイギリスのプロリーグで、試合中に事故が発生
・第2章 旅客機事故でチームが消滅 アイスホッケー界の未来
第1章 2023年10月29日にイギリスのプロリーグで、試合中に事故が発生
詳細 CNNニュース
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35211543.html
詳細 ねとらぼ
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2311/15/news156.html
接触プレーが激しいアイスホッケー界で、今後競技の運営を見直す事件が起こった。舞台は英国である。プロ化されたトップリーグ(EIHL)の試合中に、一人の選手が、対戦相手のプレーヤーと接触した際に、スケート靴の刃が、首を直撃し、事故死したのである。現地南ヨークシャー警察は11月14日、捜査した末に、加害者の選手を業務上過失致死の疑いで逮捕した。
事件は現地時間10月28日に起こった。英国トップのノッティンガム・パンサーズ 対 シェフィールド・スティーラーズの一戦である。
犠牲になったのは、ノッティンガム・パンサーズのアメリカ国籍のアダム・ジョンソン選手(29歳)だった。世界アイスホッケーの最高峰北米プロアイスホッケーNHLのピッツバーグ・ペンギンズで2年間プレー暦がある。
写真=ノッティンガム・パンサーズのチームロゴ 掲載元 ウィキペディア
今期からイギリスのチームに加わって、プレーしていた。アイスホッケーは、ボード際での攻防が激しく、安全面の配慮から防具の着用が義務付けられている。選手達は、頭部を守るためヘルメットの着用は必須で、競技中に脱げた場合はリンク上でプレーすることは許されない。速やかにベンチに戻り、ヘルメットを被らなければならないのである。未成年の選手に関しては、フェイスガードの着用もルール化されている。首を守るネックガードは、任意だった。
私自身が想像する限り、パックを巡ってのボード際の攻防では、首に傷をつくリスクは少ない。その場合は、頚椎捻挫か、脳震盪を起こしやすい。
首の負傷は、次のパターンが考えられる。加害者の選手が、スケーティング最中、敵の選手のスティックに引っ掛けられて、バランスを崩して、体が前のめりになる。躓いて前に倒れる際、スケート靴の刃がついた足が上がってしまう。凶器となるスケートの刃に、後ろからパックを追った被害者の首が傷つけられる。
その場合、加害者の選手は、競技においては、ファウルを受けた身である。足を引っ掛けて倒されたことをきっかけに、相手のプレーヤーを傷つけてしまった場合でも、不可抗力により、罪に問われることはない。
11月16日に、私自身ネット上で掲載された画像を見ると、被害者のジョンソン選手は、パックを持って、ディフェンディングゾーンから、ニュートラルゾーンへ上がっていた。加害者選手は、戻りながらパックの行方を追っていた。パックを奪うべく、体の向きを変えながら、敵の選手を避けた弾みに、バランスを失い、片足が上がった。結果的に、パックハンドリングしていたジョンソン選手の首に直撃したのである。
加害者選手は、確かに相手のスティックによって足を引っ掛けられたわけではない。自らバランスを崩したことが原因で、凶器となるスケート靴の刃で、ジョンソン選手の首を強く叩いてしまったのである。ジョンソン選手は、接触プレー直後に、リンクに倒れた。いったんは立ち上がったものの、意識が朦朧とした状態で、味方選手に抱えこまれながら、リンクを後にした。
。地元警察が、逮捕に踏み切った背景には、加害者の行為をラフプレーと判断したからだといえる。意図的に相手を狙ったわけではないにしろ、衝動的にキックをして、被害者を死亡させた場合、日本の法律では「業務上過失致死罪」が成立する。検視の結果、ジョンソン選手の死因は、首の損傷と判明した。競技中において、バランスを崩すことにより、パックと関係ないところでも接触はたえない。滞氷時間が長くなると、息切れがして、上がった足を瞬時に引っ込める力を失う。今後裁判において、加害者の足を上げた行為について、コントロールが利かなかったのか、争点になる。裁判官から注意を怠っていたと判断された場合は、「業務上過失致死罪
」が成立すると考えられる。
写真=2023年10月30日、かつて所属したNHLのピッツバーグ・ペンギンズの試合前の追悼セレモニー AP通信 掲載元 NEW YORK POST
https://nypost.com/2023/11/02/sports/adam-johnsons-teammate-recalls-traumatizing-horror-of-fatal-skate-slash/
アイスホッケーは、危険と隣り合わせのスポーツである。2021年3月には、ロシアを中心とした東欧のリーグKHL(Kontinental Hockey League)のディナモ・モスクワのジュニアチームに所属していた19歳の選手が、試合中頭部にパックが直撃したことにより、意識不明の重態になった。直ちに病院に運ばれたものの、4日後には死亡が確認された。
必:参考リンクのねとらぼの記事では、犠牲になった19歳の選手は、ディナモ・サンクトペテルブルクに所属と記載。KHLにはそのチーム名は存在しない。ディナモ・モスクワ、またはSKAサンクトペテルブルクの間違いと推察される。本文では、ディナモ・モスクワと記載した。
ジョンソン選手の訃報を受け、所属するノッティンガム・パンサーズは直後に予定されていた試合を延期した。選手、スタッフ一堂、哀悼の意を示し、再発防止に向けた対策を練り、ジョンソン選手の意思を告ぎ、ある取り組みを行った。英国アイスホッケー協会(EIHA)の協力を受けて、遺族の意向を聞き入れ、ジョンソン選手の故郷である米ミネソタ州ヒビングの慈善活動を支援するための基金「Love for Hibbing and Hockey Memorial Fund」を設立した。寄付を募り、アイスホッケーの普及に役立てる。
英国アイスホッケー協会は、再発防止策として、選手の安全管理に気を配り、明確なルールを設けた。「選手の安全は何よりも優先されなければならない」と決意を表明し、短期的、中期的、長期的な3つの対策を課す。
写真=アイスホッケーのスケーターの格好の説明 日本アイスホッケー連盟より
https://www.jihf.or.jp/knowledge/tools.php
短期的にはアイスホッケー全レベルの選手に向け、試合だけではなく氷上全ての活動に際して承認済みのアイスホッケー用ネックガード/プロテクターの使用を「強く推奨」する。2023年12月31日までの1ヵ月半は、周知期間として推奨レベルにとどめた。2024年以降はより強制力のある義務と課す。ジョンソン選手の死の原因となった首を保護するネックガード/プロテクターは、メーカーの指示通りに使用し、手を加えることを禁止する。つまりは、より動きやすくするために、脱げやすくすることを避けるのである。
中期的にはヘルメットやマウスガード、フェースガードなど、選手の安全を考慮したあらゆる保護用具の規格を見直す。軽量化すると、動きやすい反面、脱げ易く、怪我に繋がりやすい。長期的には、ヘルメットがより強固になる可能性が高い。
現行のルールにおいて、試合中ヘルメットが脱げた場合は、速やかにベンチに戻らなければならない。交代に関しては、ゴーリー以外のリンクに立つ5人は,ゲーム中でも認められる
。60分の試合において、2人のDFは3セット、3人のFWは4セット組む。DFで最も長い時間プレーしても25分から28分、FWでは18分から20分である。1回あたりの滞氷時間は平均40秒から60秒、コンタクトプレーが多く、長時間息が続かない。選手達は、リンクとベンチを往復する。
危険と隣り合わせの選手達の待遇は悪くない。アメリカでは、NNL(アメフト)、MLB(野球)、NBA(バスケットボール)と共に、NHLは4大スポーツの一つに数えられる。NHL契約を結ぶと、平均年俸は億単位になる。
アメリカでは、他の3競技に比べて、注目度が低く、改革に迫られていた。そこで、ルール変更を行い、得点が入るゲーム展開に変えたのである。主催者は、ゴール数が多くなることにより、人気が上がると見込んでいた。緊張感を失っているとファンから印象を持たれたのか、主催者の期待に反して、テレビ視聴率は低迷する。所属するのは32球団、その内訳はアメリカ25球団に対して、カナダ7球団だった。カナダでは、アイスホッケーが国技に指定され、野球やアメフト、バスケを凌ぐ人気スポーツである。米国では、世界的スター選手が集りつつあるMLS(サッカー)に、人気面でも抜かれつつある。
2026年のコルティナ・ダッペツォ(イタリア)で行われるオリンピックには、過去2大会派遣を見送ったNHLもプレーヤーの参加を認める意向を示した。オリンピックを見本市とすることにより、世界からファンの底上げを狙う。
写真=コルティナダンペッツォの景観 写真 掲載元 イタリア関連の旅行サイト
https://freya-intl.com/italy-dolomiti02/
イギリスのアイスホッケーの試合での事故をきっかけに、オリンピックまで、選手の安全対策が求められる。
第2章 旅客機事故でチームが消滅 アイスホッケー界の未来
アイスホッケーは、欧米ではプロ化が進んでいる。アイスホッケー界では、アメリカとカナダの2国から成るNHLのように、複数の国に跨ってリーグ運営している場合が多い。サッカー競技に関しては、国単位のリーグ運営を基本とし、それぞれ1部、2部、3部のようにレベルに応じてカテゴリーが分けられ、入れ替え制である。日本のJリーグでは、1部、2部、3部制である。毎年、それぞれのリーグの下位2チームと上位2チームが入れ替わる仕組みである。2024年シーズン以降、Jリーグ1部は、18チームから20チームへの増加に伴い、入れ替えシステムに変更があった。降格は2023年度1部リーグの18位チームのみに留まり、同年度J2リーグ上位3チームが自動昇格する。
リーグの成績上位チームは、特権として国際舞台への参加が用意されている。トップの1部リーグの上位3チームと、天皇杯優勝チームに加え、4チームは、次年度のAFC(アジアサッカー連盟)チャンピオンズリーグを、国内リーグと共に平行して戦う。リーグ名のことを略してACLと表記される。
ACLは、アジアのトップチームが集うリーグ戦である。2023年以降、春ー秋制から、秋ー春制へと移行した。本戦の参加チームは40、初めに4チーム×10組から成る1次リーグを行う。1次リーグから準決勝までは、東ブロック、西ブロックに二分され、決勝戦で初めて顔を合わせる。したがって1次リーグは、東西それぞれ20チームが、各ブロックにおいて、4チーム×5組に振り分けられる。各組首位で通過した5チームと、2位通過成績上位3チームをくわえ、計8チームがトーナメントに進む。
写真=2023−2024のACLグループステージ組み分け表 You tube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=buPD08F6Zy4
2023年秋に始まり、2024年の春に終える新シーズンには、2022年度Jリーグを制した横浜F・マリノス、2位の川崎フロンターレ、天皇杯で優勝したJ2のヴァンフォーレ甲府、リーグ戦では9位ながら、2022年度のACLで優勝した浦和レッズが参加する。前年の優勝チームの特権として、国内のリーグ戦とカップ戦の結果に関わらず、出場権を得た浦和レッズは、2023−2024シーズンのACLは予選3回戦から戦った。ホーム開催の特典が与えられ、香港の理文に3対0で勝利し、40チームが参加する本戦へ駒を進めた。
2023年12月には、世界6大陸のチャンピオンズリーグを制覇したチームが集う、サウジアラビア開催のクラブ・ワールドカップに、アジアを代表して出場する。
一方、アイスホッケー界では、各リーグのトップチームが集うチャンピオンズリーグは存在しない。基本的にクラブチーム同士の戦いは、一つのリーグ内のみで完結する。一つのリーグ内においては国際化が進む。NHLに対抗して、ロシアでは、東欧諸国を中心としたリーグ構想を練った。ロシア・スーパーリーグを発展的解消し、2008−2009シーズンから東欧諸国を中心としたKHL(Kontinental Hockey League)を発足する。最新2023−2024シーズンは22チームが参加している。ロシア軍によるウクライナ侵攻前には、フィンランドとラトビアからも一チームずつ加わっていた。スロバキアやチェコ、クロアチア、ウクライナのチームの参加暦もある。2016−2017シーズンには、過去最大となる29チーム属していた。
より巨大化したことにより、NHLに次ぐレベルの高いリーグとして、認知されていた。NHLが選手の派遣を見送った2018年のピョンチャンオリンピックと2022年の北京オリンピックでは、KHLが最大の選手の送り出し機関となった。
政治的にも軋轢を抱える国を跨ぐリーグは、発足以来肥大化するにつれて、運営面でも頓挫した。運営資金が足りないクラブは、選手の給料の支払い、ホームアリーナの使用料、遠征費用の不足により、自治体からの援助で成り立っていたのである。KHL側は、2016−2017シーズン終了後、会議を開き、より健全な運営のため、参加基準を厳格化した。新基準に満たないロシア国内のクラブは、下部のVHLリーグに周ってもらう。2シーズン後となる2018−2019シーズンには、24チームで運営する方針が示され、新たに選手の年俸の高騰を抑えるべく、サラリーキャップの導入も決まった。
詳細 KHLのスリム化 2017年5月16日付け 加藤じろう
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d00ec5a0e2bd5db414ad9826c61ab85f0063be71
写真=最大29チームが属した2016−2017シーズンの分布図 掲載元 reddit
https://www.reddit.com/media?url=https%3A%2F%2Fi.redd.it%2F70thi7nkm5p31.png
一転してスリム化したKHLは、2022−2023シーズン以降、ロシアへの経済制裁を課すフィンランドとラトビアのクラブが脱退した。フィンランドから参加したヨケリト・ヘルシンキと、ラトビアのディナモ・リガは、自国のリーグに戻ったのである。
今ではロシアの19チームと共に、カザフスタン、ベラルーシ、中国からそれぞれ1チームずつ加わる。経済的にもロシアとの繋がりが深い国のみ残った。
ロシアと共に、ベラルーシは、IIHF(国際アイスホッケー連盟)から、対外試合の禁止処分が下り、リーグ運営にも支障をきたしている状態である。ウクライナ侵攻に伴う欧米からの経済制裁は、アイスホッケー界にも大きな打撃を与えていた。
過去を振り返ると、悲劇的な事故に見舞われたことがあった。発足して3シーズン目となる2010−2011シーズンのことだった。
前身のロシア・スーパーリーグ時代のクラブであるロコモティモフ・ヤロスラブリが、被害にあった。2011年9月7日、本拠地ヤロスラブリ市のトゥノシナ空港にて、チームが用意した小型チャーター機Yak-42に、選手やスタッフを含め37人が搭乗した。開幕戦が行われるベラルーシのミンスクへ向う途中だった。トゥノシナ空港から離陸後、滑走路先の進入灯に接触した際、機体が傾いた。浮上することなく、不安定な状態のまま飛行する。運転手は、機体を建て直すことができず、16時5分に約2キロメートル離れたヴォルガ川沿いで墜落した。搭乗者36名と乗組員7名を含め、43名の死亡がその場で確認された。選手一人と整備士一人が救出され、病院に搬送される。9月12日に選手が死亡したことにより、犠牲者は44名となった。整備士は辛うじて命が助かり、回復に努めている。地元警察は、専門家の見解を踏まえ、事故原因について、パイロットのペダルの踏み間違いと結論付けた。
写真 掲載元 AFP=時事 2023年9月7日付
https://www.jiji.com/jc/d4?p=rac907-jlp11345678&d=d4_news
機体を運営するヤク・サービスは、事故後会見を開いた。操縦士と副操縦士は、ソ連製旅機Yak-40の運転暦は豊富だったという。ペダルの形状がやや異なる使用したYak-42の運転暦は浅かったことを認めた。副操縦士に関しては、神経系の病気を患っていたことを明かした。ペダルを踏むタイミングを間違えて、離陸の際の滑走路をオーバーランをしてしまったと分析する。操縦士は、安全面から離陸中止を判断したものの、副操縦士によって制された。事故後回収したヴォイスレコーダーに記録された二人の会話によって、明るみに出た。無理に離陸した結果、機首が上手く持ち上げられず、障害物に接触して、十分な高度を得られなかったのである。
安全性に問題を抱えていた点から、2010年以降ヤク・サービスは、欧州内での飛行を禁じられていた。ロシア国内に関しては、2010年8月11日に運行禁止措置が解除されている。事故により、2011年9月21日に再度運行停止されている。
ヤロスラブリ旅客機墜落事故では、選手37名を含め、44名の命が失われた。生存者は整備士の一名のみにとどまった。事故現場には、当時2008年から2012年まで大統領を努めたメドヴェージェフ氏も顕花に訪れた。
犠牲者の中には、前年の2010−2011シーズンに現役を引退し、コーチとして第二のキャリアを歩み始めたスロバキア代表のデミトラも含まれていた。1974年11月29日産まれのデミトラは、2010年のバンクーバー・オリンピックにて、全7試合に出場し、3ゴール7アシスト、計10ポイント(ゴール+アシスト数)を上げた。ポイントランキングではトップの成績を収め、IIHF(国際アイスホッケー連盟)が独自に表彰した大会ベスト6に選出された。当時36歳の若さで亡くなったデミトラの死を痛み、母国スロバキアでは、2014年に映画化された。タイトル名は、彼が代表チームで付けていた背番号「38」だった。2014年9月11日〜14日付のスロバキア興行成績で映画部門で他を圧倒してトップだったという。
詳細 こぶたのゆう
http://kobutanoyou.asakura.moo.jp/?eid=1399
写真=デミトラ バンクーバーオリンピック 第2節 1対1で迎えたロシア戦のシュートアウトで、ウィニングゴールを決める
掲載元 SN
https://www.sportsnet.ca/olympics/as-olympics-open-slovakia-remembers-demitra/ (Scott Gardner/CP)
試合が行われる予定だった9月8日、開幕戦の会場となる収容人数1万5000のミンスク・アリーナでも追悼式が開かれた。1994年から大統領職に収まるルカシェンコ氏も駆けつけ、犠牲者に哀悼の意をささげる。対戦相手のディナモ・ミンスクの選手は、相手選手の代わりを引き受けるかのように、スケーティングしながら、スティックでパックを自陣ゴールに放り込んだ。観客たちは、黙って見守っていた。
9月10日には、ロシア連邦のヤロスラブリのホームタウンに告別式が行われ、選手全員の死を悼む10万のファンが訪れた。当時首相を務めていたプーチン氏も訪れた。
写真=2011年9月10日 ホームタウンでの追悼式の模様 (Courtesy:@DuaneAAA)掲載元 語り部 加藤じろう 2018年9月8日(土)Yahoo記事
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f508d376cd3b8a0ded4a9425ee6fccde9c346228
2011−2012シーズン、飛行機事故でチーム全員の命が失われたロコモティモフ・ヤロスラブリは、棄権扱いになった。主催するKHLの協力を受けて、同年12月に下部のVHLからスタートする。翌2012−2013シーズン以降、新規参入ドラフトにより、他チームから選手を獲得し、KHLのクラブとして再スタートを切った。
KHLは、事故が起こった9月7日を追悼日とし、客が足を運びやすい休日と重なっても、試合を行っていない。
アイスホッケーは、団体競技の中でも、怪我のリスクが高く、歯を折ることは日常的だった。プロリーグの運営に際しても、国を跨ぐことにより、移動距離が長い分、事故に遭遇する可能性が高まる。予算が限られるチームは、より低コストで手配できる格安のチャーター機を利用せざるを得ない。ロシアでは、規制緩和により、130もの航空会社が乱立している。競争の激化に伴い、値下げ合戦が繰り広げられることにより、運営費用をかけられなくなった。乗客の立場上、コストを安くできる反面、事故のリスクを背負っていた。運営資金が潤沢なクラブでは避けられた事故だといえる。
ロコモティモフ・ヤロスラブリは、2012−2013シーズンから新チームとして発足し、毎年上位16チームが参加するプレーオフへ勝ち上がり、安定した成績を残す。
大国ロシアの国際大会締め出しに伴い、KHLの参加チーム数の減少により、アイスホッケー界は逆風が吹きつける。日本では、国内の5チームと韓国の1チームが加わり、6チームから成るアジアリーグを結成している。かつてはロシア、中国から1チーム、韓国から2チームが参加していたものの、予算不足により脱退している。2015−2016シーズンは、9チームが属していた。国を跨ぐリーグは、移動距離の長さが、ネックになった。
写真=2015−2016シーズン アジアリーグの加盟チーム
韓国からHigh1、デミョン・キラーホエールズ、中国のチャイナ・ドラゴンが脱退した。ロシアから加わっていたサハリン・シーライオンズは、日本の経済制裁の一環として、アジアリーグの参加を見合わせている。チーム数が少なくなると、リーグ存続が危惧される。唯一の希望は、2020−2021シーズンから新チームとして横浜グリッツが参戦したことにある。首都圏では、2008−2009シーズンを持って解散した西武プリンスラビッツ以来、11年ぶりに新チームの誕生だった。アジアリーグは、新型ウィルス感染拡大に伴い、2020−2021シーズン、2021−2022シーズンは、開催中止に追い込まれた。日本の5チームは、代わりにジャパン・カップを開催し、総当りのリーグ戦を行っていた。2022−2023シーズンに、3年ぶりに国を跨いでのアジアリーグが再開される。ロシアのサハリン・シーライオンズは、参加を見合わせ、韓国からは2021年3月に親会社の経営不振に伴い、デミョン・キラーホエールズは解散した。コロナの影響は、各チームに影響を及ぼしていた。
写真=2022−2023シーズン、2023−2024シーズン アジアリーグの加盟チーム
2023年10月27日にイギリスでの試合中の死亡事故により、安全対策が見直されつつある。選手達が氷上で激しくぶつかり合う、格闘技の一面を持つ競技は、今改革期を迎えている。
過去 アイスホッケーに関する日記
��2022年3月17日付 2022年アイスホッケー北京五輪の結果 ベラルーシのアイスホッケーについて
・ロシア・ウクライナ危機2021−2022 第3回 ベラルーシの政治体制 アイスホッケーとサッカーを中心にスポーツ、大統領選挙、ハイジャック事件 氷上の奇跡 動画アリ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981842802&owner_id=32437106
��2019年8月19日付け 日光アイスバックス 対 ユクリット(フィンランド)戦のレポート
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972694388&owner_id=32437106
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