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2023年09月15日11:13

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『ミツバチのささやき』感想

〜スペインの名匠ビクトル・エリセが1973年に発表した長編監督第1作。スペインの小さな村を舞台に、ひとりの少女の現実と空想の世界が交錯した体験を、主人公の少女を演じた子役アナ・トレントの名演と繊細なタッチで描き出した。スペイン内戦が終結した翌年の1940年、6歳の少女アナが暮らす村に映画「フランケンシュタイン」の巡回上映がやってくる。映画の中の怪物を精霊だと思うアナは、姉から村はずれの一軒家に怪物が潜んでいると聞き、その家を訪れる。するとこそには謎めいたひとりの負傷兵がおり……〜<映画.comさんより>

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ずっとずっと観たかった作品をようやくスクリーンで観ることができて感無量。
午前十時の映画祭には、頭が上がらない。
で、私、2回観たんですが(別々の映画館)、最初の劇場では、町山智浩さんの解説付き(観賞前&観賞後)で、もう一つの方ではついてませんでした。
どちらも同じグループなのに。つまり、劇場の判断なのかしらん?
いや、でも、2回目の時は、もう見たくなかったので(笑)、助かったといえば、助かった。
で、解説ですが、まあ、有難かったです。
ただ、私『パンズ・ラビリンス』は観ていたので、解説無しでも、おそらく、大まかなところは分かったような気はしますが、でも、プロの方の説明は、信頼できたし。
ただ、願わくば、映画が終わってから、全て解説してもらいたかったかも。

さて感想。冒頭から、ワクワク。
1940年、内戦終結後のスペインの小さな村に映画がやってくる。おそらく数少ない娯楽。
子どもたちはトラックが到着するなり「映画の缶づめ(フィルム缶)だ〜!」と大興奮。
夕方5時に『フランケンシュタイン』はスタート。6歳のアナと姉イザベルが観に来ている。
2人の両親は養蜂場で蜂の研究をする父親フェルナンドと誰かに向けて手紙を書き続けている母親テレサ。
フェルナンドは仕事帰りに、テレサは手紙を出した帰りに映画を上映している公民館の前を通る。

家に帰った2人。夜、ベッドで、アナはイザベルに聞きます。
アナ「どうしてあの女の子は殺されたの?どうして怪人も殺されたの?」
イザベル「どっちも殺されてない。最初から存在してない。怪人は精霊なの」

アナはある日、列車から飛び降りて、小屋に逃げ込んでいた負傷兵と出会う。
アナは怖がる事もなく、りんごを差し出し、翌日には、父のコートや時計まであげてしまう。
だが、悲劇が起こる。

※予告編
https://youtu.be/Yx_R_fHRLXE

とにかく美しい作品です。どのシーンも構図が考え尽くされています。
一見シンプルながらも、監督の気持ちが込められているのがよくわかる。
私が一番好きだったのは、窓ガラスのオーナメント。まさに蜂の巣!これら人差し指(下)

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フェルナンドが蜂の話をするんですが、それは、まさに、フランコ政権への批判。
「間断なく様々に動き回る蜂の群れの、報われることのない過酷な努力。房室を出れば眠りはない。幼虫を待つのは労働のみ。唯一の休息たる死もこの巣から遠く離れねば得られない」

蜂の巣の蜂たちは、この家族、そして、フランコ政権&内戦で悲しい想いをした全てのスペイン人を表しているのだろう。

テレサが書いていた手紙の差出人は、愛人宛だったのか?
町山さんは確か、フランスに亡命した人民戦線の兵士宛と言ってたような。
その兵士の1人が愛人だったということ?
テレサが手紙を投函するのは駅に到着する列車。車両の外側についてた箱もどき?
(2回観ても、そのポストもどきは煙にまみれて見えませんでした)
ちなみに、その列車には兵士たちも乗っており・・・。
その沈んだ表情の兵士たちはおそらく人民戦線側で戦った男たちで、つまりその列車はフランス行き。
テレサの手紙はフランスにいる愛人宛なのかもしれないけど、人民戦線側の兵士たち全員に向けての想いをのせていたような気もしました。
そして、後半、テレサはまた手紙を書くんですが、それは、投函しないで、燃やしてしまうというシーンがあって、意味深。

姉のイザベルの性格が、物語が進むにつれて、どんどん怖くなっていったというか。
死んだふりをしたり、猫に引っかかれて出た血を唇に塗ってたり、極めつけは炎の上ジャンプ。
友だちたちと一緒に、次から次へと、結構大きな炎の上を飛び越えていくんです炎
それをカメラはローアングルから撮っているんですが、よく服が燃えないなと。
で、しばらく見ていると、彼女たちが何かの儀式をやっている魔女たちのように見えてきて・・・。
そのシーンで、姉たちと距離を置いているアナが印象的。

アナはどんどん単独行動をするように。

この家族4人の見ている方向がそれぞれ違うのが、まさに、エリセ監督が意図していたものだろうと後半確信。

その他印象に残ったシーン
・線路に耳を当てる姉妹。列車が近づくギリギリまで動かないアナ
・森で父から毒キノコの見分け方を教わる姉妹。あとで毒キノコを踏みつけるフェルナンド
・負傷兵の靴紐を結んであげるアナ(その前に、自分の靴紐を結ぶシーン有)

疑問
・アナがタイプライターを使っている時の背後の絵画の意味するものとは?
・後半、イザベルのベッドが片付けられている

そうそう、ビクトル・エリセ監督は31年ぶりに新作『Close Your Eyes』を撮り、今年のカンヌ映画祭に正式出品されたとのこと。
1969年に監督デビューして、現在82歳のビクトル・エリセ。
50年以上のキャリアの中で、3作しか長編映画を撮っていなかった監督の新作には、なんと、今作主演のアナ・トレントが出演しているという。これは楽しみ!

今作は、何はともあれ、一番、頭に焼き付くのは、アナの瞳!!!!!
深くて、可愛くて、純粋で、言葉以上に、瞳で語ってる。

今作は、製作当時、政府からの検閲を逃れるために、直接的メッセージは避け多くの事柄を象徴化して作られた。
ゆえに、観れば観るほど、謎が深まるし、新たな発見があります。
9月28日まで、この名作がスクリーンで観られます。このチャンス、どうか逃さないで下さいませ手(グー) 4.5☆


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