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2023年09月06日22:13

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『福田村事件』感想

〜1923年、澤田智一は教師をしていた日本統治下の京城(現・ソウル)を離れ、妻の静子とともに故郷の千葉県福田村に帰ってくる。澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であったが、静子にもその事実を隠していた。その年の9月1日、関東地方を大地震が襲う。多くの人びとが大混乱となり、流言飛語が飛び交う9月6日、香川から関東へやってきた沼部新助率いる行商団15名は次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。沼部と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の集団心理に火がつき、後に歴史に葬られる大虐殺が起こってしまう〜<映画.comさんより>

フォト


「日本人が朝鮮人と間違えられて殺害された事件」
ちょうど100年前の今日、起こったのね。。。

目下、今作が上映されているミニシアターは、どこも凄い混み具合のようです。
私が行った劇場も、普段は、10人ぐらいしか入ってないのに、平日の昼間に、9割以上うまってて、ビックリ。
年齢層は高めでした。混んでたのは、千葉県で起きた事件っていうこともあったから?

冒頭は1923年。朝鮮から故郷の千葉県福田村(現在の野田市)に帰ってくる澤田夫婦が列車の座席に座っています。
夫婦の前の座席には、シベリア出兵で亡くなった夫の骨箱を抱えた島村咲江。

事件が起きる前の人間模様&背景。
・澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者(通訳をした)だったが、妻の静子にはその事は隠している。
・咲江は寂しさのあまり、渡し舟の船頭田中倉蔵(東出昌大)と関係を持つ。
・静子は、夫が夜、自分を拒絶するので、ある日、家を出ることに決め、行くあてもなくフラフラした挙句、渡し舟に乗り、倉蔵と関係を持つ。
(この後、澤田が静子を探しに来て、どうなることかと思ったけど、無言のまま、腰をかがめるとこ、めっちゃ良かった)

同じ頃、沼部新助(永山瑛太)率いる香川から来た行商団(薬売り)が福田村を目指していた。
この行商一行は、実は、被差別部落の出身で、それがバレないように気をつけています。

ある時、若き鮮人(←朝鮮人に対しての差別語)女性が道端で飴を売っていて、新助はたくさん買ってあげるんですが、そのお礼からか女性は扇子をくれるんです。
その扇子、後で絶対、悲劇に結びつくぞと、瞬間的に思ったんですが、はい、その通りでした・・・。
そのシーンは、場内「あぁああああ〜」というため息が。

行商団はようやく利根川にたどり着く。
数日前に起きた関東大震災の混乱の中「朝鮮人が井戸の中に毒を入れた」等というデマが飛び交っていて、それは福田村にも流れてきていました。
朝鮮人に対する差別的感情が強まり、村は自警団を結成。

そして、行商団が福田村に到着すると、彼らは朝鮮人ではないかとの疑いを向けられ・・・悲劇が起きてしまう。

その直前に新助は、ある身分証明(行商を認める書類?)を渡して、自分たちは朝鮮人ではないと主張していた。
にも拘わらず、それが確かめられる前に、惨劇は起こってしまったのである。

その場にいたある女性の何気ない台詞が猛烈に響いた。行商の女性?それとも村人?
「何が起きているのか、さっぱり」

※予告編
https://youtu.be/qmoGbGfy3hU

今作のメインは福田村事件なれど、当時の混乱の中で殺害されたのは朝鮮人だけではなかった、国家体制へ批判的な言論活動をしていた平澤計七という人物も殺害されたというエピソードが短く挿入されていた。

森達也監督は、史実をベースにしたフィクションで、登場人物たちに、様々な側面(負い目等)を持たせた。
観客は、その時々で、別々の登場人物に寄り添い、視点を変えながら、この事件を多角的に観てゆく。

印象に残ったシーン
・最初に田中倉蔵が出てきた時の美しき背中(すっ、すみません。個人的見解ですあせあせ(飛び散る汗)
・澤田が静子に自分が朝鮮でしてしまったことを話すシーンの朝鮮語(日本語字幕無し)
・静子「あなたはいつもそうやって(見ているだけで)何もしないのよね」
・惨劇の後、自警団の長谷川を慰める妻
「あなたはやるべきことをやったのよ。’日本人’を救おうとして・・・」
・千葉日日新聞の女性記者「このことを書きます。私たちが(真実を)報じないから、こういう事件が起きてしまった」
・ラストシーンの渡し舟の使われ方と台詞

音楽はムーンライダーズの鈴木慶一さん。
和太鼓の音が・・・軽快に聞こえる時もあれば、重く重く、心臓にのしかかってくる時もあって、その塩梅、良かったと思います。

まだまだ書き足りないほど、脚本は細部の細部まで、しっかり行き届いています。
村長田向(豊原功補)や自警団リーダーとなった長谷川(水道橋博士)や井草貞次(柄本明)や千葉日日新聞の編集長(ピエール瀧)ら、脇役たちの造形も見事!

とにもかくにもこの台詞。
「朝鮮人だったら殺してええんか!」
THE YELLOW MONKEYのるんるんJamという曲のインパクトある歌詞を思い出したり。
「外国で飛行機が落ちました。ニュースキャスターは嬉しそうに、乗客に日本人はいませんでした。いませんでした」

今作は、もう、もう、もう、本当に力作です。
観て下さい。知って下さい。考えて下さい。こんなことがあったんです。
実際見ていないのにデマを流す怖さ。流れてきたものを鵜呑みにする怖さ。
知識不足。集団心理。現代にも繋がるテーマも描かれています。

ほぼ満点なんですが、唯一のマイナス点は、ところどころの台詞が聞きづらかったこと。
それだけです。
作って下さって、本当にありがとうございました!!!!!4.5☆
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