西武鉄道吊り掛け電車のお勉強！

縁あってよく乗りに行った西武線の吊掛け電車ですが･･
その歴史を調べるには敗戦直後まで時間を巻き戻さないといけませんね。
第二次世界大戦（太平洋戦争）の空襲等で国鉄をはじめ各私鉄事業者も甚大な被害を受けていました。
そんな中、幸いな事に西武鉄道は1両の戦災車両も出さずに無事に終戦を迎えられたんですね。
とは言え、戦時中の酷使による車両の整備不良や保守部品不足等は深刻で厳しい状況に変わりはありませんでした。
終戦直後の混乱期だったこともあり西武鉄道も他の私鉄同様に輸送力確保は緊急な課題になっていました。
そこで当時の運輸省は「運輸省規格型車両」や国鉄向け戦時設計のモハ63形電車を各私鉄に割り当てようとします。
しかし西武鉄道は戦災車両が無かったので純粋な車両増備となることから難色が示されます。
またこれらの電車導入に対しては地方私鉄への車両供出が条件となってもいたんですね。
そこで西武鉄道はこの提案を拒否して国内に残っている戦災国電の復旧でなんとか輸送事情の改善を図ろうとします。
ちなみに当時の大手私鉄において戦災国電の復旧車両のみで輸送事情の改善を行う事が出来たのは西武鉄道だけなんです。
戦災を受けた旧国鉄17m級車両（57両）を復旧させてモハ311形とクハ1311形になります。
当然、戦災を受けた車両ですから台枠しか残らず焼け落ちた車両もあり大変な復旧作業だったことでしょう。
さらにこの国鉄規格な戦災車両を導入することで西武鉄道は長らく国鉄制式機器が標準仕様となる契機になっています。
また国電は車体幅が2,800mm（西武の車両は2,700mm）なので車体限界拡幅工事が行われます。
この事でのちに西武鉄道が早期に大型車を導入できる道を開くことになりました。
さらに1959年以降、国鉄で廃車となったクモハ11形400番台（13両）も371系として導入します。
いずれも新型車の導入により311系は1973年、371系は1975年にほぼ廃車となりましたが、
旧国鉄17ｍ級車両の台枠だけ譲り受け車体を鋼体化した18両の内の2両（クハ1313・1314）と
クモハ11形400番台の371系を種車とする1両（クハ1336）の合計3両は運転台が撤去されて附随車化。
サハ1313・1314・1336となり晩年クモハ351形の中間附随車としてなんと1990年まで運用されました。
さて、みんな大好き？クモハ351形ですが1954年から1956年にかけて西武鉄道戦後初と新製車両として登場します。
登場時は20mの中間車両サハ1501形を2両挟んだ4両編成として20編成（501-520編成）製造されました。
その後、1957年から登場した521編成からは先頭車両も中間車両同様に20m車両となります。
さらに当初登場した501-520編成も先頭車両を20m車両に新造されて置き換えられる事になりました。
これで1958年には20m車両の4両編成を標準とした新501系となります。
当初の501-520編成に使用された17m先頭車両は新501系に機器類を譲ります（主電動機128kw）
編成から外された17mの先頭車両は311系や余剰なストック品を利用して411形に改称・改番されます（主電動機100kw）
またここで同時期に戦災国電（20m車両）から復旧していたクハ1411系と組んで再度編成を組むことになりますが、
4両固定編成は6本だけとなり2両編成が8本準備され運用することになりました。
さらに1963年から新製された701系（中空軸平行カルダン駆動方式）の増結車両として
1964年には20m3扉車の新411系（吊掛け駆動方式）が登場します。
これに伴って再度の改称・改番が行われ351形になりました。
その後1969年から101系（中空軸平行カルダン駆動方式）の101系が増備され徐々に廃車が進みます。
しかし多摩湖線の国分寺駅はホーム長が17m車両3連分しか確保できないためにこちらで活躍することになります。
それでも1990年には多摩湖線国分寺駅の新ホーム（20m車4連対応）が完成しその役目を終えることになりました。
なお、大井川鉄道へは4両が譲渡、活躍しましたが2002年に運用から離脱し2016年に廃車解体されています。
また上毛電気鉄道へも8両が譲渡、活躍しましたが老朽化により1990年までに順次廃車解体されています。
唯一、横瀬車両基地にクモハ355が静態保存されていて新製当時のカラーとなり登場時のモハ505に車番変更されています。
写真は最後まで活躍した多摩湖線のクモハ351形3両編成。
こちらの写真は池袋線で活躍する新501系の堂々たる8両編成。
当時はごく普通な西武線の風景でした。
やっぱり西武独特の湘南スタイルな前面はいいですね。