今夜NHKで八尾のおわら風の盆の中継をしていた。
長いのでお風呂に入るため録画しておいた。
十数年前、いや二十年前かもしれない。
毎年通っている詳しい人が、
個人旅行で私たち数人を誘ってくれたので連れて行ってもらった。
とても情緒のある踊りと、土地柄で虜になってしまった。
ツアーでないので何時間でもお祭りの中に居られた。
沢山のツアー客が宵の口に来て宿へ引き上げてしまうので、
夜が更けるほどに地元の人達ばかりになる。
あの頃、ちょっとまえに高橋治の「風の盆恋歌」という小説が映画化されたり、
それから石川さゆりの「風の盆」がよく流行ったりしていた頃だった。
私たちは3人で夜中まで八尾の街をほっつき歩いて、
知らない地元の人の軒先でお酒やつまみをご馳走になったり、
いろいろお話を聞いたり、風の盆歌のテープをもらったり、
あげく辿り着いたのが、高橋治氏の常宿の軒先だった。
そこは特別なのか、奥に高橋治氏が座ってお酒を飲んでいた。
普通は街中を流して踊っていくのだけど、
高橋氏の宿の前では男踊りの人が軒をくぐって中に入り、
高橋氏の前で素晴らしい男踊りを踊ってみせた。
何だか知らぬ間に、私たちも軒をくぐって中に入っていた。
上がり框に座って見事な男踊りをまじかで見せてもらっていた。
土地の人はお祭りだからか他所ものも鷹揚に受け入れてくれたのか…。
胡弓の音に酔いながら気がつくと夜中の1時を回っていた。
タクシーも旨く拾えて真夜中に宿へ帰った。
女性だけではとてもできない冒険、連れになってくれた人が男性だったから、
ありがたい旅だった。
去年その同行してくれた人が、亡くなってしまった。
はからずも今夜、風の盆をつぶさに中継してくれて、
お世話になったその人のことを懐かしく思い出させてくれた。
あんな素敵な情趣たっぷりのお祭りは、もうこれから味わうことはできまい。
まだスマホも持っていなかったし、携帯も持っていなかった。
自分で撮った写真が一枚もない。
でも、しっかりと覚えている。
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