さて私の題名のわからない映画です。
私が23歳で静岡市の赴任して、たしか金曜日に眠れず夜起きてしまい、何気なくテレビを観たら映画をやっていました。
ポルノ作品っぽい娯楽作品でした。
ですが脚本は面白く、出ている俳優も観たことがある人が多かった。
主人公は老人で、植木等だったか丹波哲郎だったか、そんな感じの人でした。
どうも記憶が曖昧なんです。
調べても丹波哲郎はそのようなポルノっぽい作品には出ていない、植木等のようにも感じられましたが該当する作品はありませんでした。
当時のロマンポルノの一覧を読むと、植木等に人相が似ている人がいました。
その人かと思ったのですが、該当する作品はありませんでした。
途中から観たのですが、舞台はとある温泉街、川の美しい街で風光明媚、当時住んでいた静岡にありそうな温泉街でした。
そこの観光ホテルに、一人の老人と孫が泊まっていました。
御隠居と孫の気ままな旅でした。
実はその老人はとある大企業の経営者、一線を退き目に入れても痛くない孫との旅行でした。
温泉を楽しみ料理を楽しみ、極楽極楽と思ったが、どうもその観光ホテルの様子がおかしい。
立派な観光ホテルなのに、どうも地域の人たち相手の連れ込み旅館のようなことをやっており、売春の場を提供して稼いでいるらしい。
犠牲者と思われる女性たちがホテルの中を歩く、義侠心を感じた老人はホテルの経営者や、地元のヤクザらしい人にも屈せず堂々と渡り合った。
ホテルの経営者と番頭は忌々しく感じ、嫌がらせをはじめる。
それがとても笑えるのである、一番の嫌がらせは老人がお風呂に入ったのを狙い、そこで男湯と女湯を入れ替える。
そこへ若い女性の団体客がやってきた。
老人は懸命に身を隠そうとするが、女性の裸と香り、温泉の熱気でついにのぼせてしまう。
部屋で寝込む老人を、番頭がざまあみろという感じで影で笑う。
老人は密かに会社と連絡を取った。
一番最後、ある女学生が制服姿で意を決して公衆電話をかける。
相手は医者だった。
実はその少女の父が病気で、医療費を無料にするかわりに少女の体を求めていた。
少女から電話を受け、その観光ホテルに電話をし一部屋借りた。
ところがその医者の趣味はSMだった。
少女は縛り上げられ、ムチで打たれ少女は苦痛に沈む。
そこに川で蟹をとった孫が、「おじいちゃん蟹とったよ」と大喜びで走ってやってきて、そこで部屋を間違え、医者と少女のいる部屋に入ってしまう。
現場を見た少年はびっくりする。
そこで医者が言ったセリフが秀逸で、「カニ?そして縛り上げた少女を指差し、エビ?」と言う、少女は「見ないで!」という顔で泣きじゃくった目で少年を見た。
ひどいシーンなのだが、どこかユーモアがあった。
少年は部屋から逃げ出し「お姉ちゃんがいじめられている!」と懸命に騒いだ。
少女は救われた。
しかし医者は激怒し、経営者や番頭に「何てことをしてくれるんだ!」と当たり散らしていた。
それを見た老人はある決意をした。
しばらくして会社員らしい一団がやってくる、彼らはホテルが買収され、老人が経営者になったことを宣言し、弾劾状を読み上げた。
その中で老人に行った色っぽい嫌がらせを読み上げる時に、「私もやってみたい」と思わず言い、老人に「何い!」と怒られ読み続ける。
観光ホテルの経営者は追放された。
老人はさびれつつある温泉観光地の復活を決意した。
そして少女が体を売らないでも、生きていくことができるよう努力することを誓った。
そこで大団円、最後は正義が勝つみたいな話だった。
SMシーンはひどいのだがとてもきれいだった。
映画の最後の流れる中でSM指導が団鬼六とあった、「なるほどそれで」と思った。
ところが団鬼六を調べても、該当するような作品がなかった。
あるいは当時流行したテレビ映画で、劇場映画ではなかったのかもしれない。
ある意味くだらない作品なのだが、特に少女の父のために体を売る、縛られそうになり懸命に逃げようとするが、そこで医者に「◯◯万円だぞ、◯◯万円!」と言われ懸命に耐える、鞭で打たれ抵抗する意志を失ったところに少年がとびこんできた。
絶対に人に見られたくない姿である。
しかしその殉難が老人に最後の決意を促した。
ところで、弾劾状を読み上げた秘書のようなのだが、どこかイッセー尾形の若い頃のような感じだったのです。
夜中で半ば寝ぼけながら見ていたのですが、あの最後のクレジットの量から見て、ふざけながらもきちんと作品だと感じました。
あの老人がのぼせるシーンでも、入ってきた女性たちはひじょうにきれいでした。
ヌードモデルを集めたにしても、かなりお金がかかっていると思いました。
あのハチャメチャな作品、どんなに苦しくても最後は正義が勝つ、どんな理不尽な目にあってもあの少女のように耐えないといけないと思った。
そのぐらい少女は気高く見えたのです。
体を売ることを決意し、公衆電話をかける肩がわずかに震えていたのが印象的でした。
団鬼六さん監督ではなかったので、全体としてひじょうにきれいな作品でした。
ポルノっぽいところや、少女が責められる場面も、全体としてはほんの一部で長くはありません。
お色気よりも脚本や俳優、女優の演技力に重点を置いていました。
出ていた女優さんも、けっこう名のある人が多かったのではないか?と思います。
静岡のテレビの深夜に映されたということは、静岡の温泉街が舞台だったのかもしれません。
当時はまだバブル後、11PMやトゥナイトといったお色気ありの深夜放送がありました。
両親に隠れて音を消してこっそり観たりしていました。
一人暮らしになり、堂々と観てしまいました。
本当に勧善懲悪のある意味くだらない作品なのですが、あの少女が泣かないような世の中にしたいなと思いました。
「あの少女の苦しみに比べれば私の苦しみなんて」と思いました。
当時はバブル崩壊で、日本経済は音を立てて崩れていました。
複合不況の中、多くの少女、そして少年が体を売って暮らすゆようになりつつありました。
そういう世の中になればこそあの作品は印象に残っているのです。
いつか必ず救われることを示していたのですから。
私もどんなに嫌な目にあっても、大学行くのにお金を使い果たしてしまいましたから、やめるわけにはいかなかったのです。
その時にあの映画を観て、本当に心に沁みました。
また観たい作品の一つです。
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