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2023年07月20日01:14

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サンクチュアリ

「サンクチュアリ−聖域」という相撲をテーマにしたドラマが面白いと知人から聞いて、ネットフリックスのみ配信のそのドラマを観るために、ネットフリックスを申し込んでしまった。
これが実に面白いドラマで、一気に8話全部観てしまった。
まず、役者陣が、ピエール瀧、田口トモロヲ、松尾スズキ、岸谷五朗といった曲者ぞろいに加えて、力士役の役者連中の体つきに感動した。主人公・猿桜を演じた一ノ瀬ワタルをはじめとして、実に力士そっくりな体型に鍛え上げている。ただただ太らせたのではなく、その筋肉のつき方も本物の力士を思わせる徹底っぷり。
それに加えて、稽古や本場所のシーンなども、相撲の取り口が本物にかなり近く、こりゃーすごく鍛え上げたなーと思わせる。
ストーリーは、角界に蔓延る清濁あわせもつ様々な事象を、相当デフォルメして描いている。
さすがにそこまでひどくねーよ!っていうのはあるにせよ、まあ遠からずあるだろうなあ、と思うような描写。
相撲部屋のいじめ・シゴキ、親方同士の確執、理事会の政争、八百長問題、男色、力士の過去を暴くパパラッチ、タニマチの誘惑など、聖域で誰も入れないがゆえに起る内面の様々な問題を取り上げていた。
そんななかで、主人公・猿桜は、福岡・門司の札付き不良少年なのだが、親の借金返済のため、ピエール瀧扮する猿将親方に金につられて相撲部屋へ入門。
最初は型破りで、兄弟子からえげつないいじめを受けても反撃したり、四股を踏んだり一礼したりをいくら指導されても反抗して舐めた態度でやったり、挙句に親方に口答えはあたりまえ、気に喰わなくて殴り掛かったりもするというとんでもない新弟子。
寄ってくるタニマチやキャバ嬢の誘惑には、平気で負けてしまう、どころかそもそも我慢する気なんかさらさらない。
もともとは素質があるので、その破天荒は取り口で本場所は連勝していくんだが、やはり途中で行き詰ってしまう。そしてライバル力士に瀕死の重症を負わされたりするなど、様々な試練を経験して、相撲に目覚めていき、真剣に取り組むようになっていく。
僕のような好角家にとっては、最初のしきたりや礼を無視してメチャクチャやるところなんぞは、とても誉められたものではなく、当然、大相撲協会から何度も潰されかけるがそれも何とか乗り超えていく。ここらへんはドラマだから、まあそれで良いんだが、相撲に真剣に目覚めたあとの稽古への取組あたりは壮観で、鳥肌すら立った。
また、同期入門の染谷翔太がいい味を出しており(このドラマみんないい味だしているんだが)、染谷は体格も華奢で才能もないんだが相撲が大好きで入門し、角界の様々な汚い部分に嫌気がさして脱走してしまう。しかし、主人公の猿桜に相当の期待をしており、悪態をつかれながらも何度も励まし、猿桜に寄り添う存在。
染谷は脱走後、猿将部屋のおかみ(小雪が演じる。これもかなりドラマのキーになるポジション)に説得され、相撲が大好きという気持ちがあるなら呼び出しで再度部屋に戻ってこいといわれ、呼び出しで復活する。
相撲が大好きな好青年・染谷と、悪童で金目当てのためだけに角界に入った凶暴な性格の猿桜のコントラストがいい味を出していて、これもよかった。

このドラマが秀逸なところはまだあり、その滅茶苦茶な猿将部屋(といいつつピエール瀧の猿将親方はかなりの人徳者で角界の伝統を守ろうと清濁併せ持つ手練手管で暗躍。最初はかなりあくどい感じの親方を思わせる演出だったが、回を重ねるごとに純粋な正義の人だということがわかってくる)を第三者視点からみるために、新聞記者を準主役で置いたこと。
ベテラン相撲番記者(田口トモロヲ)と、政治部を飛ばされて相撲番記者に「左遷」させられた若い女性記者。この女性記者が、アメリカ留学からの帰国子女でフェミニズムにすっかり染まってしまったタイプなのだが、ことあるごとに「女だから、というのはセクハラ」とか「お前呼ばわりするのはパワハラ」とか、最初は土俵に上がってしまい注意されても「今の時代女人禁制は時代錯誤も甚だしい」と食って掛かるタイプ。
この女性記者が1つのキーになるのだが、最初はこの人の考えが浸透していき角界に風穴をあけるとかいう展開になるんかなあ、、と思ったんだが、逆。
最初は、理不尽で時代錯誤のいじめ・シゴキ、女性を遠ざける男女差別の体質にプンスカ怒り、主人公をたきつけて裁判を起こそうとしたりするのだが、だんだんその時代錯誤で誰も踏み込めない聖域の中にこそ、理屈では割り切れない感動が生まれることに気づいてきて、猿将部屋の力士たちが逞しく強くなっていくほどに、女性記者の態度がどんどん変わっていく。
最初は、政治部に戻りたい(そもそもが政治部でのタブーを破ってしまったゆえの左遷なんだが、それも彼女の勘違い正義感に基づく)ため、相撲記者を我慢してやっているという設定で、相棒のベテラン記者から猿将部屋の特集記事を書くように言われても頑固に拒絶。
それがいつしか、猿将部屋の力士たちへの、成長に伴い、自然と筆が進んでいく。あらゆる理不尽な仕打ちを乗り超えて肉体を極限まで追い込む力士の、感動的な肉体と強さにほれ込んでいく。
このドラマをみた最初は、相撲の世界を批判したいドラマなのか、と思ったが、いつしか相撲礼賛ドラマになっていて、製作者の相撲への強いリスペクトが感じられた。
田口トモロヲ扮するベテラン相撲番記者が最初に女性記者にいった、常識では信じがたい理不尽が横行する聖域だからこそ、横綱が生まれるというありえない状況が起こる、それを日本人は1500年続けてきた、というセリフが印象的だ。

このドラマをみて、なお一層相撲が好きになった。
今、名古屋場所がやっているが、新入幕力士が3人いてそれぞれが活躍。また関脇3人が全員大関リーチという異例の名古屋場所。
新大関の霧馬山あらため霧島は、大関になった立場がそうさせるのか、相撲の巧さが1段あがっているし、若元春の技術はもはや美しさですらある。新入幕力士の湘南乃海は中卒入門で屈折10年、その間に辛酸を舐めつくしてきたと思われるがようやく花が咲き、無頼の強さをみせている。落合あらため伯桜鵬は、ついこの前まで高校生だったのに、もはや経験豊富な三役力士が取るような相撲が出来上がっている。
そういうのを全て含めて、相撲は面白いのである。

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