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2023年04月29日14:28

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ボブ・ディラン東京公演2023

4月15日、ロックの桂冠詩人ボブ・ディランの日本公演を観に行きました。

当日、家を出る前にちょうどディランのエッセイ集『ソングの哲学』が届いたので、さっそく電車で読みながら雨の中、東京ガーデンシアターへ向かう。
有明にある東京ガーデンシアターは前回、2016年の会場だったオーチャードホールよりもステージが近くて観やすかった。(席が良かっただけかも知れないけど)。

前回と前々回の来日公演ではディランは客席から向かってステージ右側でキーボードを弾いていて、ステージ中央近くで長身のチャーリー・セクストンがまるでフロントマンみたいにギターを弾いてました。
チャーリー・セクストンが抜けた今回のツアーでは、ディランがステージのど真ん中に据えられたグランド・ピアノを弾いて、バンドマンはみんな彼の方を向いて取り巻いている。

前回の来日でディランは曲によってキーボードを離れてステージ中央に出てギターやハーモニカをプレイしましたが、今回はずっとピアノを弾いて音楽に集中している様子。おかげで歌も演奏もタイトにまとまっている。

最新アルバム“ROUGH AND ROWDY WAYS”では囁くようなつぶやくような声で歌っていたディランですが、ライブではハウリン・ウルフやマディ・ウォーターズのような重低音でがなっていました。

セトリは“ROUGH AND ROWDY WAYS”からの曲が中心で、他のレパートリーも"Like A Rolling Stone""、"Blowin' in the Wind"、"The Times They Are a Changin”、”Knockin’ on Heven‘s Door”といったヒット曲、代表曲はほとんどなしで渋めのチョイス。

ディランはライブでは曲のアレンジをガラッと変えてしまうことが有名で、今回のツアーでは“ROUGH AND ROWDY WAYS”からの9曲はオリジナルに近い演奏ですが、他はゴスペルとブルーズへの変奏が目立ちました。例えば、カントリー・ロックだった”I’ll Be Your Baby,Tonight“はゴスペル調のミディアム・スローで始まって、後半ブギウギに転調します。

メンバー紹介の直後に歌われた新曲”I’ve Made Up My Mind to Give Myself to You”がベストで、美しいメロディーに圧巻のパフォーマンスでした。

後半、突然ドラムがジャングルビートを叩きはじめて、なんだなんだ?と思ったらなんとバディ・ホリーの“Not Fade Away”のカバーが披露されました。故郷のヒビングでディランは少年時代にバディのコンサートを観たことがあって、1997年のグラミー賞授賞式でも「スタジオ収録の時にバディ・ホリーが側にいるのを感じた」とスピーチしてたので、彼へのリスペクトだったのかな。

フィナーレはこれまた美しい“Every Grain of Sand”で、ずっとピアノを弾いていたディランが最後だけハーモニカ・ソロを吹きます。ディランのハーモニカは彼の歌声と同じく突き刺すような時もあるし、哀愁漂う時もあるし、荒野に吹く風のような時もありますが、ここではゴスペル期に聴かせたような癒やしに満ちたプレイでした。

まさに過去の遺産に頼らない現代進行形のアーティストの、今その瞬間を見せつけられたステージでした。きっと人類の集合的無意識がこの男にパワーを与えて突き動かしているのでしょう。

公演中はピアノの陰に隠れていたディランですが、最後にだけカーテンコールのようにステージの手前に姿を現しました。80年代に入ってからディランは体重の変動が激しく、2016年の時はユダヤ人のお爺ちゃんみたいにお腹ぽっこりしてたのですが今は痩せていて、餓えた狼みたいに精悍でした。アンコールはなしで、クールに去る。

この男、本当に81歳か?

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