私の名前は川口民雄。子どものころから、周囲から浮いていた。学校の成績は低空飛行で、お情けで卒業させてもらった。小学校低学年のころからごく普通に生きられないと堪忍した。なんでみんなと同じことができないのだろうか。学校時代の運動会、学芸会、展示会、修学旅行で、周囲のクラスメートと同じ行動をとるのに、非常に神経を使った。仕事をいくつか渡り歩き、発達障害を支援するNPOで働いている。大人になって、検査を受け、検査の結果で、読み書きはかなり厳しいことがわかった。発達障害当事者は別に努力して、普通に見せようとしても、無理である。例え給与は低くとも、暮らしていければ、文句はない。この仕事は自分に向いているようだ。発達障害トラブルシューティングが仕事になった。
埠頭の公園に、川口と相談者村田が来ている。
村田
「いろいろとお世話になるね」
川口
「村田さんの笑顔が見たいもので。どうして、ここに来たかったんですか」
目の前に海が迫ってくる迫力ある景色。
村田
「俺さあ。この前、動物園、行ったでしょ。日差しを浴びることが、気持ちがいいことに気づいたんだ。外へでたくなったのさあ」
川口
「そりゃ、良かった」
村田
「そこで、これからどうしょうか、と考えた。このまま、ニートを続けて、生活保護を受けるのも選択肢だ」
川口
「それは余り、お勧めできなですね。高齢で働けないとか、重い障害があるなら、賛成できますが。村田さんは社会復帰したいという気持ちもあり、現にここまで出てきたじゃな
いですか」
村田
「相談したいんだ。俺、どんな生き方したら、いいんだよ」
川口
「村田さんが、生きていて、幸福だと思う生き方ですよ」
村田
「それが、一番難しいよ。幸福って、何なんだ」
川口
「それを毎日、考えながら、生きるのが幸福なんじゃないですか」
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