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2023年02月23日08:43

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『対峙』感想

〜アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が発生。多くの同級生が殺害され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。事件から6年。息子の死を受け入れられずにいるペリー夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をすることに。教会の奥の小さな個室で立会人もなく顔を合わせた4人はぎこちなく挨拶を交わし、対話を始めるが……〜<映画.comさんより>

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危険・警告そこそこ内容に触れていますので、未見の方はご注意下さい。

気になる作品だというのは、ポスターを見て明らかだったので、劇場で流れる予告編もチラ見程度にしておきました。
知っていたのは、被害者と加害者が対峙するということだけ。

すぐに対話が始まったらどうしようと思っていたんですが、まずは準備段階で、深呼吸。
でも、その準備段階からして、どこかしらピリピリモードが漂う。
テーブルは?椅子は?食べ物は?飲み物は?ティッシュは?壁の絵は?装飾は?
それらの位置や、量、醸し出す雰囲気、あれこれチェックされる。
明らかに、相当な配慮が必要な個室なのだ。

最初の夫婦は、一度近くまで来るのだが、妻が落ち着くことができず、一度その場から離れ、しばらくしてやってくる。
そして・・・もう一組の夫婦もやってくる。

後から来た夫婦の妻は、自分で作ったという、フラワーアレンジメントを持参して、相手側に渡す。
だいたいの雰囲気でどっちの夫婦がどっち側か、この時点でわかっていたが、この花で決定的になった。
さて、その花をどこに置いたらいいのか・・・。
そういうところから、次第次第に話は焦点へと移動してゆく。

カメラの動きが、素晴らしい。
各々が動揺するところは、カメラも動揺する。
心を読み、気持ちをすくいとるような撮影。

2組の両親の間に存在する到底分かり合えない壁。
回想シーンや再現場面は無い。その潔さよ!
終始張りつめた空気。緊迫した舞台劇。
あまりにもリアルで、これは演技ではないのではないかと思われた箇所が何度も。

ほぼ室内なのだが、時折、同じ外の風景が映る。
空地の柵の2つのリボン。一つは長く、一つは短く。
これをどう捉えるかは観客に委ねられている。

※予告編
https://youtu.be/Ju3o8ye9B9g

原題は『Mass』
「集団(集まり)」「巨大」「大衆(庶民)」という意味の他にカトリックの「ミサ」「ミサ曲」の意味も。

対話が始まる前までに、すでに教会でのピアノ演奏、それに賛美歌の練習について触れられていたので、勘がいい方は、エンディングが想像できたかもしれない。
それでも、その過程が、つまり脚本が、演技が、演出が、どれもこれも、とんでもなく素晴らしい。

緊迫感をつめこんだ風船が、膨らんだり、しぼんだり、破裂しそうになったり、飛んで行ったり・・・。

「息子はpopularだったから、問題ないと思っていた」
「あなたには、もっと心を痛めてもらいたい」
「話して下さい、あなたの息子さんの事を」

葛藤の末、放たれたこの言葉。
「I am ready」

かつて息子と交わした何気ない会話にこちらまで泣かされる。
「息子は、アメフトは(ユニフォームが)汚れているのが上手い証拠って言ってたんだけど、私は、タックルされないで汚れていないのが上手いんじゃないの?って」

エンディングに目にするのは、遠く、遠くの、ほのかな灯。

脚本&監督は俳優出身のフラン・クランツ。
今作が初脚本&初監督だという。なんという才能!

字幕がとても良かった。松浦美奈さんだったと思う。

社会問題に関心のある方には、是非観ていただきたいです。
圧倒されました。泣きました。息がつまり金縛り状態。ほぼ満点の4.5☆

※映画関連サイト
https://fansvoice.jp/2023/02/15/mass-fran-kranz-interview/

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