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2023年02月18日09:12

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『イニシェリン島の精霊』感想

〜1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリックは、長年の友人コルムから絶縁を言い渡されてしまう。理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する〜<映画.comさんより>


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原題『THE BANSHEES OF INISHERIN』
「banshee(バンシー)」は、アイルランドおよびスコットランドに伝わる妖精である。人の死を叫び声で予告するという(ウィキペディア)

結局2回観ました。1回目観終わった時「2度目は無い」って思ったんですけどね。
理由は1回目観賞の後、この町山さんの動画を見てしまったから・・・。
https://www.youtube.com/watch?v=b4gfWncYdFY

1回目観賞後の注目点↓
・ずっと仲良しだったパードリックとコルムの突然の喧嘩=アイルランド本島で勃発している内戦。
・父親(警察官)の息子の対しての虐待
・普段は仲良しの兄と妹も徐々に微妙な空気
・風景が壮大で美しいが、どこか閉じ込められた感もある。
・動物たちが愛おしい

警察官の「6シリング(と昼食が)もらえるなら、誰の死刑でも構わない。喜んで立ち会う」
と台詞で、マクドナー脚本の舞台劇『ハングメン』を思い出したり人差し指(下)
(次に見ることになる死体が、まさかの自分の息子という皮肉)

〜あらすじ〜
『ハングメン』は1963年のイギリスが舞台であり、死刑執行人ハリー・ウェイドを中心に展開する。ハリーは国でも二番目に優秀な死刑執行人で、妻のアリスとオールダムでパブを経営し、15歳の娘シャーリーがいる。ハリーは絞首刑の廃止に向き合わねばならなくなり、パブはハリーの職業に関するさまざまな動機を抱えてやってくる人々でいっぱいである。ムーニーという名のよそ者はパブにやって来てトラブルを起こし、ハリーの娘シャーリーに色目を使ってハリーをいらつかせる。ムーニーはハリーをからかい、自分が娘のシャーリーを誘拐して殺したとハリーとアリスが信じるよう仕向ける。このためハリーはムーニーの首を絞めて殺してしまうが、その後にシャーリーが何も知らずに無事に戻ってくる。芝居は、ハリーが最初に執行した死刑を正当化しようとするところで終わる。

俳優陣が皆、とてつもなく素晴らしく、オスカーノミネートも納得。
脚本賞のノミネートもわかる。
ただ、作品全般としては・・・ちょっと考え込んでしまったというか。

2回目↓
どうして1回目に気づかなかったんだぁああ。
ドミニク(バリー・コーガン)が最初に登場する時に持ってくる棒。
先っぽには、何かを引っかけることができるような形状になっている。
これが終盤、まさか、本人のために、使わることになるとは。
で、それ、多分、マコーミック(不気味なおばさん)が常に持ち歩いている杖なんですよね。

マコーミックがどうしても死神に見えるので、つまり彼女が精霊?と一瞬思ったものの、原題は複数形なので、そうじゃない?
じゃあbanshees(精霊たち)とは、何を指しているのか?

私が思ったのは、もしかして、イニシェリン島に宿っている様々な閉鎖感なのかもと。
もしくは、ちょっとした事でもすぐに島民たちに知られてしまう悪い噂の数々。
皆が皆を知っている。それは平穏に暮らしている時には良いとして、一度、火種が起きれば厄介。
炎上するか、長くくすぶり続ける。周りは海。すぐには逃げられない。

それでも、シボーンの視線は島の外に向けられていた。
読書が好きで、知識もあり、兄を愛しつつも、自分の未来も切り開きたい。
これ以上この島にいてはいけない。
覚悟もあり、度胸もある。兄とは違う。
シボーン「(コルムは兄さんに)新しい自分になってほしいのかも」

喧嘩の最中なれど、警官に殴られたパードリックをコルムが無言で助けるシーンが印象的。
コルムはパードリックを肉体的に傷つけたりはしない。傷つけるのは自分の指。

さて、町山さんが動画で指摘されていた同性愛。
確かに、パードリックもコルムもいい年なのに、独身。
で、教会での懺悔シーンで、神父に「男性に欲情しないか?」みたいなことを聞かれた時のコルムの態度から’それ’を感じられないこともない。
同性愛者と思われていることに耐えられなくなったゆえの、パードリックへの絶縁宣言?

またシボーンも同性愛者ということを言われていたが・・・。
兄にいきなり「寂しくない?」と言うシーンで、ちらりその雰囲気は出てた?
また別の場面で「(そんなんだから)行き遅れになるんだ」と言われていたシボーン。
その時の表情を思い出したりするのだが。う〜ん、同性愛者?
どうにもそこは、100%は納得できないでいる私。

そうそう、前作『スリー・ビルボード』でも、同性愛が、なんとも言えない空気感で醸し出されていましたよね。

話はそれますが、冒頭、コルムの部屋には、いろんな仮面が天井からぶら下がっていて、パードリックが中に入り、一つの仮面をかぶっていましたよね。
あれが何を意味していたのか。

エンディング
「今日は静かだ。内戦もそろそろ終わるのかも」とコルム。
「いや、終わらないね。でもそれはいいことだ」とパードリック。
「えっ?」
以前のパードリックならそういう言葉は出てこなかったと思う。
あの穏やかだったパードリックはすっかり変わった。

一端始まると後には引けない。喧嘩も内戦も。
復讐しあってそれでアイコ?
「アイコじゃない、ロバが死んだ」
ドミニクも死んだのに・・・。
マコーミックが「2人死ぬ」って言ってたのは、ドミニクとロバのことだったのか?

町山さんの解説のおかげで2回目は1回目よりは深く考えられました。
でも、じゃあ、楽しめたのか?と言われると「そこまでは・・・」とやっぱりなってしまう。
それでも、良性の毒があるというか、マクドナー作品はやっぱり魅力あります。
ただ圧倒的に『スリー・ビルボード』の方が好きっていうのは、今作を何度観ても変わらないと思います。
迷った挙句、3.8☆

※この方の感想がめちゃ深読みしていて、私好み、かつ素晴らしかった拍手
https://blog.goo.ne.jp/monndori/e/a1237582eabd49d6596ce59f3131f76e
「切られる5本の指は、ユナイテッド・キングダムこと英国(UK。正確には、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)を示しているのかも。
UKは、4つの国による連合国家(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド)だが、分け方次第で、アイルランド共和国は、南アイルランドと北アイルランドになり、5つになるので」

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