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2023年02月01日10:14

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『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』感想

〜映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した2人の女性記者による回顧録を基に映画化した社会派ドラマ〜
〜ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始めるが、ワインスタインがこれまで何度も記事をもみ消してきたことを知る。被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。問題の本質が業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する〜<映画.comさんより>

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危険・警告そこそこ内容に触れています。ご注意下さい。

2回観ました。
1回目を観終わっての感想は「ちょっと地味だな。『スポットライト 世紀のスクープ』ほどハラハラしなかったし・・・」
で、感想を書き始めたんですが、手が止まって・・・。
ちょっと待てよ。何か見落としてる気がする。
監督が大事な何かを伝えようとしていたいくつかの細かい演出を見逃しているかもしれない。

そして2回目。2回観て本当に良かったと自分を褒めました。

冒頭から、まず、上手い。
アイルランドの某所。何気なく犬の散歩をしていた女性が、映画のロケに出くわす。
スタッフと話しているうちに、自分も手伝うことに。
時が経ち、次の場面では、彼女が泣きながら通りを走ってゆく。

ミーガンもジョディ(ユダヤ系)も結婚している。
ジョディにはすでに2人の子がいて、ミーガンも妊娠→出産となる。
2人の夫たちは、妻たちに協力的で、理解がある。
ミーガンは、産後、鬱状態になってしまうのだが、仕事に復活すると、最初は不安そうなれど、徐々に、水を得た魚のごとく、仕事のおかげで、日々を乗り越えられてゆく。
(先輩ママ、ジョディの電話時の励ましもよかったと思う)

ニューヨーク・タイムスのオフィスの色合いがいいんです。
実際はどうなのか知らないけど、白がメインの中に、ところどころ赤のライン。
ジョディがミーガンに電話する時の階段部分の赤と白。
復活してきたミーガンにジョディが、今、取り組んでいる仕事の説明をする廊下の赤と白。
真っ赤な嘘と、真実の白みたいなね。
(いや、英語では’真っ赤な嘘’っていう表現に’red’は使わないとは思うけど)あせあせ

声をあげたけど、何も変わらなかった。あなたに話せば、何か変わるの?
「起こった事実は変えられない。でも、公にすることで、同じ悩みを抱える人を助けられる」
被害者の女性たちに寄り添いながら、無理強いはせず、心を開いてもらおうとする2人。

ミーガンとジョディ、この2人のバランスがいい。
身長高めで姉御肌でクールなミーガン。
ややおっとりで慎重派でほんわかモードのジョディ。

ある人物の取材に2人が一緒に出向く時に、たまたま同じ白のワンピースを着てきて、一緒に吹き出して「双子?」って言ってるとこ、大好き。

ジョディ「本当に記事を世に出せるのかが怖い」
ミーガン「出したあと何も変わらないこと。人々の無関心が怖い」

個人的に、一番印象に残ったのが、ホテルの廊下に音声が重なるシーン。
いくつかの違うホテルの廊下が、何度か、フェードイン→フェードアウトしてゆく。
そこに、ワインスタインと女性の生々しい録音音声が流れるのだ。
その卑劣な行為が、時間を変え、場所を変え、相手を変え、ずっとずっと続けられていたんだっていう・・・。

確認する場面が多かったのも印象的。
事実の確認。情報の確認。示談で和解金が出された数(人数)の確認。

「私が声をあげることで、沈黙している人にも道が開けるように」
2人の女性が「名前を出していいわ」と決める瞬間。
アシュレイは走ったあと。ローラは手術前。
その瞬間って、実際もそうだったのかもしれないけど、なんだか、わかるぅううって。

で、手術室に向かうローラがその事をジョディに電話で言った後、泣いてしまうのだが、看護婦さんがしっかり「大丈夫、ローラ?」と声をかけていて・・・。
こういうちょっとした瞬間を入れるか、入れないかで、監督の人間性がわかるというか。

※予告編
https://youtu.be/yHhz6qxYTEk

キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、2人ともめちゃ良かった!
ワインスタインがニューヨーク・タイムスに来るシーンがあるんですが(後ろ姿のみ)、そこで彼と対峙する時のミーガンの表情は必見。
ゼルダ役のサマンサ・モートンが猛烈に上手い。アカデミー助演女優賞なんでノミネートされなかった?
ローラ役のジェニファー・イーリー(昔、イールじゃなかった?)もレベッカ役のパトリシア・クラークソンも素晴らしい。
グウィネス・パルトロウが出てくるのかどうなのか、ドキドキしました。

監督は『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』のマリア・シュラーダー。
あの作品も好きだったけど、今作の出来栄えは「お見事!」の一言。
調べてみたら、原作も脚本も撮影も女性でした。

表面上は淡々としています。私の1回目の感想はそこで終わっていました。
でも2回目。細かな演出が見えて、ずんずん響きまくり。
純粋に楽しみたいっていう人には不向きな作品ですが、あの #MeToo ムーヴメントがどうやって起こったのか、告発者たちの痛み、そして、記者たちの信念と勇気ある戦いを観たいっていう方には猛烈にオススメです。
一緒なら、連帯すれば、世界は変えられる。4.5☆
9 6

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