佐藤蛾次郎さん死去、78歳 自宅訪れた親族が浴室で発見 「男はつらいよ」源公として活躍
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友人が書いた小説に、母親と「見知らぬ男」との「不気味な光景」を垣間見てしまったという回想シーンがあるものがあります。「不気味な光景」とは、もちろん、情事の光景です。
「スローモーションで捕虫網が宙を舞い、振り返った少年は、五歳のぼくだった」
全体が、ATG的な情緒に包まれた、何ともシリアスで透明な物語です。
それを読んで気が付いたのは、ドラマ化するときのキャストの重要さです。
たとえば、母親が白川和子で、が「見知らぬ男」田中博久(『水戸黄門』の悪役)だったら…
あるいは逆に、檀れいと反町隆史だったら…
図式的になって、全然、面白くありません。
『岸辺のアルバム』という大ヒットしたドラマがあります。
その中で主婦の不倫の話が出てきますが、主婦が八千草薫で、相手の男が竹脇無我だったからこそ、図式的な善悪にはまらずに味わいが出ます。
しかし、この二人は、善悪のレッテルは超越していますが、どろどろっとしたものまで表現できないでしょう。
土俗的なものまで表現できるキャストは、
母親 … 吉行和子
見知らぬ男 … 佐藤蛾次郎
しかないと思いました。
佐藤蛾次郎さんは、「蛇」ではなく、「蛾」です。
あのお顔は、単なる醜男ではありません。悪でもありません。賭場と千ベロ、千ベロと普通の飲み屋などを橋渡ししてくれるような境界を越える存在だと思います。
「蝶」や「蛾」は、変化、蒸発、帰還のシンボルだそうですが、その得体の知れなさと「蛾」の、グロテスクともかわいいともいえる庶民性は、キャラクターに合っていますね。
また一人、他の方では絶対代替不可能な俳優がこの世を去りました。
ご冥福を心からお祈りします。
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