アイドル部活化、一過性アイドルそしてタレントの寿命

数年前からアイドル戦国時代と言われ、秋元康をはじめとする
グループアイドルの競争化が激しく、また、大手レコード会社、プロダクションに
属さず、個人事務所規模のタレント事務所が手掛ける、いわゆる
地下アイドルも跋扈（ばっこ）し、アイドルと称するアイドル業界は
戦場と化している。
とは、これまでの見方だったが、私はここ最近、それに加え、
アイドル業界、アイドルそのものの在り方が変わってきたと考えている。

現在、2022年の秋、象徴と考えられるのは乃木坂１期生、和田と樋口の離脱である。
グループを脱退することを卒業という表現をすることに昔から抵抗があったので
あえて離脱と表現した。
その前に５期生が加入し、少し前まで一番の後輩であった３期生がいつの間にか
ベテランとして引っ張るようになってきた。
既に乃木坂は３期がベテランで、若手ホープである４期が中心であることは
あらゆる媒体の露出を見ても明らかだ。加えて更にホープである５期の加入は
１期２期の肩身を狭くしているのは他ならない。

新規の後輩の加入は、ところてん離脱を促すものであることは、
言わずもがなである。

乃木坂に限らずアイドルが、ところてん式にグループの離脱を余儀なくされている
わけだが、グループアイドルをやめたら、どうなるのであろうか。
それがタイトルで挙げたことで、
昨今のアイドルは、アイドル自体を部活と同義と考えているのではないかと
私は考えている。
十代の非常に短い期間だけアイドルを行い、離脱と共に芸能界を去る。
これが今の潮流ではないかと考える。

80年代のアイドルと言えば、テレビの中の偶像でしかなかった。
現在と何が違うかと言えば、数である。
アイドルと言えどもそれは商品であり、プロダクションが売れる人間を
発掘、養成したものである。
正に石をダイヤに磨き上げてきたのである。
だから、アイドルとしての寿命が短かったとしても、
バラエティに進出したり、芝居に進出したり、タレントとしての寿命が
長かった訳である。
そもそもお金をかけて育てた商品をみすみす手放す訳もなく、
売れる要素があれば、それを売っていく必要があった訳である。
反対に言えば、当のアイドルも、芸能の世界にしがみつき、
売れる要素を模索したわけである。

この、芸能界にしがみつく、この概念が今と昔では違っていて、
今は安易に芸能界を去る風潮ではないかと考える。
アイドルをやりきったと表現するアイドルもいるが、私は
身の程をわきまえる、という表現が正しい感情ではないかと思うが
グループに在籍していた時から、グループ内で売れている子、売れていない子の
グループ内競争は熾烈であり、グループを脱退すれば
グループの冠もなくなり、売れる要素を自分に見いだせないのではないかと
考える。
森元首相の言葉で好きではないが、それが身の程をわきまえた結果、
芸能界を去ってしまう要因ではないかと思われる。

私は一人のファンとして考えれば、グループを離脱しようが
応援したい人はいつまでも、どんな形でも、芸能の仕事をしていて欲しいと思う。
非常に無責任な言い分ではあるが。
無責任に応援していきたいのである。

グループも大勢で巨大になれば、１軍２軍と分けられ、
そもそもグループでもアイドルに選ばれた時点で、勝ち組のはずが、
勝ち組の中でさらに競争をさせられ、疲弊し、その結果、
数年でアイドルをやめてしまうのである。
アイドル消費時代と以前にもコラムに書いたが、消費した結果、
アイドル自身もアイドルとしての価値を自分に見いだせなくなっている
この状況は、非常にナンセンスであると言える。
我々は、アイドルに、勝手に自分たちの思いを投影して応援しているのに
そのアイドル自体が、生々しく、人間であり、我々と同じく、
表舞台から去る姿を見せられるのは、間違っているし、つらいだけだと思う。

プロダクション側からしても、売れる人間は残しておく。
分かりやすい資本社会だ。
開き直って、部活のように、その期間だけアイドルとして活動する。
そういう割り切った考え方がアイドルの方にも蔓延していると思う。
割り切った考えのアイドルを我々は応援できるかと言えば、
やはり何か違うと思う。こちらも冷めた目で見てしまい、応援する気持ちも
少なからず影響するのは確かだ。
だから余計にアイドルに熱を入れられない。アイドルが衰退する。
アイドルの悪循環が起こっていると思う。
アイドル戦国時代は終わったのかも知れない。
アイドルの自然淘汰の時代に移ったのだと思う。