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2022年07月28日10:47

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『戦争と女の顔』感想

〜ベラルーシのノーベル賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチによるノンフィクション「戦争は女の顔をしていない」を原案に、第2次世界大戦後のソ連(現ロシア)で生きる2人の女性の運命を描き、第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で監督賞と国際批評家連盟賞を受賞した人間ドラマ。第2次世界大戦に女性兵士として従軍したイーヤは、終戦直後の1945年、荒廃したレニングラード (現サンクトペテルブルク)の街の病院で、PTSDを抱えながら看護師として働いていた。しかし、ある日、PTSDによる発作のせいで面倒をみていた子どもを死なせてしまう。そこに子どもの母親で戦友でもあるマーシャが戦地から帰還。彼女もまた、イーヤと同じように心に大きな傷を抱えていた。心身ともにボロボロになった2人の元女性兵士は、なんとか自分たちの生活を再建しようとし、そのための道のりの先に希望を見いだすが……〜<映画.comさんより>

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キネ旬Reviewでの評価が高く、雰囲気的に絶対私が好きなやつと直感。
この作品だけのために新宿に遠出して観賞。
その価値ありました。良かった、良かった。

ロシア語の原題 『Dylda』 は、戦後の社会を生き抜いていく女性たちの、ぎこちなさ、醜さ、品のなさを意味する言葉だそうです。
英題は『BEANPOLE(のっぽさん)』
これはイーヤがかなり長身だから、そうなったのかしらん?

独ソ戦に、ソ連は勝利したものの、レニングラードは荒れ果て、市民は心身ともどもボロボロだった。

冒頭は、軍病院で看護部として働くイーヤの発作のような症状。
ちなみに、彼女の戦友マーシャは劇中鼻血をよく出しています。
彼女たちの身体異常は、その時代のレニングラードそのものを表し、作品を重く覆っていた。

イーヤに子どもを預け、後から帰還したマーシャ。
自分の息子がイーヤの発作のせいで、亡くなったことを知ります。

行きずりの男に体を許すマーシャ。
マーシャ「体が空っぽなの。人間が体内にほしいの」
マーシャは戦地で被弾し、手術して、子どもをもうけることができない体になっていました。
マーシャはイーヤに「私の子どもを作って」と頼みます。

この作品、とにかくとにかく演出が私好み。
これから作品をご覧になる方は、詳細は読まない方がいいと思うので、ここからは飛ばして、予告編のところまで行って下さいませ。




・パーシュカが亡くなってしまう場面の指の動きは、こちらの心臓まで止まりそうに。
・路面電車の使い方。美しいのだが残酷な使われ方にもなる。
・女性たちの入浴シーンの眩しさ。やたら「生」を感じた
・ある兵士を安楽死させる場面のタバコの煙の使い方が秀逸!!!!!
・マーシャのために子どもを作らなきゃいけない。マーシャ、イーヤ、そして医師の3人でベッドに。
 3人の異なる表情。各々の心情が手にとるようにわかり、しんどいったら。
・緑の使い方。壁から緑のペンキが零れ落ちる。マーシャの1日限りのワンピース。
「まわっていい?」
生まれて初めて自由を得たかのような、狂い咲くほど、まわるマーシャ。

クライマックスは、終盤の、マーシャがサーシャ(行きずり男)の両親に会いに行く場面。
家の近くに来た時、いかにも高級そうな犬が散歩されていて、サーシャが富裕層の子だとわかります。
普通に歓迎されるとは・・・思ってなかったかもしれませんが、母親の態度は、露骨に酷いものでした。
マーシャが戦地で生きのびるために、様々なことをしたと話した直後・・・
母親「つまり戦場妻だったのね」
マーシャ「そうですね、将校ともやったし、何度も中絶しました」
あぁああああああ〜〜〜。この辛さはなんなんだぁあああ〜。
これ、マーシャ、嘘ついたんだよね?えっ、違う?本当にそうだったの?
その当時、戦場に出向いた女性たちに対する一般市民のステレオタイプな馬鹿げた意見に対して、わざと「そうよ、そのとおりよ!」って嘘をついたのよね。
本音は・・・どれだけ敬意を示してほしかったことだろう。

マーシャの帰り道、誰かが路面電車に飛び込んだ。




※予告編
https://youtu.be/eaqt4SWK0Qg

音楽、ほぼ無し。
赤と緑の色使いや、イーヤとマーシャの関係の雰囲気は『燃ゆる女の肖像』が思い出されました。
監督のカンテミール・バラーゴフは本作が長編2作目で、製作当時はまだ20代後半だったという。
展開が読めなくて、でも、随時考えさせられて、映像にはずっと魅せられて〜。
苦手な人もいると思うし、それは理解できます。でも私はかなり好きでした。
おそらく今年のベストテンに入ってきます。気になる方は是非、劇場で!4.5☆

クリップ自分用メモ
・第二次世界大戦の独ソ戦についての知識があまりなかったので、ウィキでお勉強↓
「この戦いにおいて、特にソ連側の死者は大規模である。なお、独ソ戦の犠牲者(戦死、戦病死)は、ソ連兵が1470万人、ドイツ兵が390万人である。民間人の死者を入れるとソ連は2000〜3000万人が死亡し、ドイツは約600〜1000万人である。ソ連の軍人・民間人の死傷者の総計は第二次世界大戦における全ての交戦国の中で最も多いばかりか、人類史上全ての戦争・紛争の中で最大の死者数を計上した。
・人類史上最悪…犠牲者3000万人「独ソ戦」で出現した、この世の地獄
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66675?imp=0
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