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2022年07月16日05:24

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あめ


小学5年生の秋
しんちょうが とまった

いくら 背伸びをしても
158cmには 届かない

19歳の夏
父が ヘソクリの20萬円をポンと出して
「どうしても あの娘(こ)にだけは
晴れ着を買ってやりたいんだ。
今、買ってやらなかったら、
あの娘は だまって
イトコのお古を着て
さも 嬉しそうな顔をして
記念写真におさまろうとするから。」



そんなこととは つゆしらず
わたしは 妹の顔立ちに合う色の振り袖を
妹なら よく似合う柄の振り袖を

成人式と20歳の誕生日を控えた あの御正月
「19歳のまま
成人を迎えるピーターパンさん、
おめでとう。」

その夜、
まだ おとなになりたくない…と愚図る私に
父は微笑んで
しずかに
灌木の はなしを した


「灌木は
おとな なのに 背が低く
どんなに背伸びをしても
イチョウみたいに 大きくなれない

道端を通り過ぎる さまざまな 人の中で
灌木の気持ちを 考えられる人は
どのくらい 居るんだろうね、

灌木は
おとななのに
なんで こんなに ちいさくて
くやしいよう…って
思っているだろうか?
お父さんは、
そうは 想わない。

あの灌木たちは
あの道端で
灌木で居ることに
誇りを持って生きて居るんだ、

お父さんには
詩のことは判らないけれど、
詩の世界は
灌木が しゃべったって 善いんだろう?

ピーターパンさん、
ひとりぐらい
そういう人間が居たって
善いんじゃないかい?

…ゆえの、
文学部 国文学科なんじゃないかなぁ?」


父の研究を継げなかった わたしでも
大好きなんだ…と


お父さん、
わたし、きのう、あめのなか
道端の灌木と はなしを したよ、

灌木はネ、
じぶんが 灌木と呼ばれることも知らないけれど
あめの中でも
灌木の役割りを果たせて、ウレシイって
でも、長生きするには
ヘンなニオイのケムリが、クルシイって



お父さん、
あちらの世界でも
あめは あめの ままですか?







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