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2022年05月03日23:51

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イチローが嫌いだ

スポーツ雑誌Numberの2022年6月号で、イチローの特集がやっていた。
イチロー、あのスーパースターが引退してからはや3年。この人の引退後の去就はどうなるんだろう、と非常に興味深かったが、普通に監督やコーチをやることはなかった。
もう十分お金も稼いだろうから悠々自適な生活をするのだろうか、と思っていたのだが、ある時、急にアマチュア野球の指導資格を取得した。
その行動の意味がわからなかったのだが、その後、高校野球の指導を無作為に(求められた高校)に行っているそうで、Numberには、その高校野球指導の内容が特集されていた。
現役の時から、引退後もかわらず肩書きはシアトルマリナーズの「球団会長付特別補佐兼インストラクター」というマッタクをもってわけのわからぬものなんだが、これは、結局はマリナーズの選手を指導するという名目の下、マリナーズの設備を使って自由にトレーニングができるという権利を貰っている感じで、今をもって、思う存分野球のトレーニングに励んでいる。
その上で、マリナーズの試合前の練習でバッティングピッチャーやら球拾いやら選手のキャッチボールの相手やらをやっているんだが、この人は本当に野球さえできれば何でも良いのだろうな。心底野球好きで、生涯野球を何らかの形でやっていたいのだと思う。
それで、高校野球の指導である。
今まで指導に赴いた高校は、國學院久我山、千葉明徳、智弁和歌山、高松商業という甲子園の常連校。そこで、自らがバッティングや守備の手本をみせ、NPB、MLBで経験したことを惜しげもなく教えている。
その結果、どの高校も、それなりの成績を収めるようになった。最も結果を出したのは、智弁和歌山で、昨年の夏の甲子園優勝である。
高校球児は、イチローの全盛期を生でみている世代ではないが、伝説の野球選手がやってきたことに興奮し、30代40代くらいの世代の監督などは、もっとタイムリーにイチローが伝説へ駆け上っていくところを目撃しているため、何から何まで興奮しっぱなし、というのがインタビューなどから伝わってくる。
それにまして、イチローは、教えた高校の試合などをきちんとチェックしていて、ラインなどで激励や祝福のメッセージを送っている。これは、単なるイチローがポーズとして高校球児を教えたという「パフォーマンス」をやったのではなく、本当に高校生を教えて結果を出すことに喜びをみだしていたのだなあ、と思わせる。
まあ、イチローらしいといえばらしい。
この人は間違いなく「野球バカ」である。それも世界トップクラスの野球バカなのだ。
例えば、昨年12月には女子高校生選抜チームと自身の草野球チームと試合を行ったのだが、それにピッチャーとして登場。147球を投げぬいたのもすごいが、チームメートによると、女子高生に勝つために、猛練習を強いられたそうだし、相手チームの4番打者にはデッドボールまで与えている(そのくらい本気で投球していたってことだ)。
単なる草野球でも手を抜かず、全力で勝ちに行くあたり、もう野球バカ通りこして、野球キチガイの域まで来てしまっている。

僕は、Numberを読んで、なかなか面白いことをやってるなあ、と思った。在野のプロ球界の監督・コーチとか名前だけの球団の役職にはならずに、好きなだけ野球に打ち込んで、好きなだけトレーニングをして、ある意味、こんな羨ましい生き方はないだろう。
僕も、イチローの大がつくファンだったので、高校球児たちの喜びはよくわかる。
昔のスーパースター、ONなども子供野球教室などやっていたが、あれは完全にテレビ向けだったり、イベントとしてやっていたりしていたが、イチローは赴いた高校には3日間なら3日間、みっちり指導にあたっており、その上、指導後にはその高校の試合をきちんとチェックしてメッセージまで送っている。
元大選手がこのてのことをやっていたということで思いつくのは、故・野村克也氏が少年野球のコーチをやっていたくらいで、あとはあまり聞かない。ノムさんも究極の野球バカではあったが、少年たちにとって、ノムさんとイチローでは大きな開きがあろう。
ノムさんは晩年に監督としての手腕、人間教育の手腕が評価され、それなりにオファーもあったろうが、どうも華々しさに欠ける。少年たちにとっては単なる口うるさいジジイと思われかねないような気がする。
まあここで、どっちがいいかなんて言っても仕方ないが・・

で、イチローが、野球の底辺から底上げしていこうとする努力が評価されているのだが、僕もそれ自体は面白いし評価もしているが、イチローが面倒をみた高校が、甲子園の常連高校だということ。
眩しいほどにキラキラ輝いているスーパースターが、人間界に降りてきたというところだが、やはりスーパースターなのである。
僕は素晴らしいし、高校球児たちが羨ましいと思いつつも、甲子園常連校で野球をやっている球児たちもまた、同年代のなかの「選ばれし人々」なのである。
毎年、夏になると高校野球の特集などがテレビでやるが、あのがっしりした体型に常人離れした運動神経、そして礼儀正しさ。そのどれをとっても、一般の子供たち、もとい一般にも届いていないで燻っている子供たちとは一線を画している。
うちの息子は今年高校生になったが、まあ似ても似つかないこと・・
というわけで、かのスーパースターに教えを受けられる「資格」があるのは、そこに到達するしたエリート層に限られてしまうのだ。
我々は、そこを忘れてはいけないと時々思う。
大谷翔平とか、佐々木朗希など、ともかく人々はスターを追いかけ、その華々しい姿しかみないが、戦力外通知を受けて、日々の生活にも窮している選手のほうが圧倒的多数なのである。
イチローのようなスーパースターは、何億に1人しか出現しない、まさに神のような存在であろう。そして、その神にあやかろうとすることは、もちろん良いことだ。我々はイチローから何かを学びそして少なからず人生のお手本にする。
しかし同時に、等身大のその他大多数の人間がいることも常に覚えておきたい。
そして、その等身大の人々の中にも、ヒーローがいること、ヒーローになりうる可能性があることも。
ちょいと話が抽象的になってしまったので、等身大のヒーローについて、いずれか語ってみたい。

最後に、僕が大好きなCM
https://www.youtube.com/watch?v=aq4N98ngTP8

パラアスリートたちが一様に「イチローが嫌いだ」と言い、その後にこんな言葉を吐く。

あの人をみていると限界という言葉が言い訳みたいに聞こえるから
あの人をみていると自分に嘘がつけなくなるから

はじめて観た時に、ゾクっとした。
もちろん、CMで脚本されたセリフではあるが、多くのアスリートの言葉を代弁しているだろう。
誰しもがイチローになれるわけではないが、誰しもが自分の世界で頑張れるしヒーローになれるのである。

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