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2022年01月30日20:43

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ナチスの過去

ドイツのための選択肢(AfD)という政党の危険性について、2019年に発表した記事です。

ドイツの国是「ナチスの過去との対決」を疑問視する政党

 AfDの最も危険な側面は、この党が言葉の暴力によって、ナチス時代への反省からドイツに根を下ろしていたタブーを崩している点だ。差別を是認するヘイトスピーチで一部のドイツ人の心を汚染している。
 同党の過激性は党幹部らの発言にはっきり表れている。2013年から2017年まで党首だったフラウケ・ペトリは、2016年に「ドイツ国境の警備を大幅に強化して、無秩序な難民の入国を防ぐべきだ。その際には、警官が銃を使うこともやむを得ない」と述べた。つまり難民が警官の制止を無視して国境を越えて来たら、発砲するべきだというのだ。
 これに対しドイツ警察組合は、「ペトリの発言は、過激で非人間的なAfDの思想を示すものだ。ドイツの警察官は、難民を銃で撃つことはない」と反論した。保守的な警察官たちでさえ眉をひそめるのだから、AfDがいかに過激な政党がご理解頂けるだろう。
 社会主義時代の東ドイツ政府は、国境を越えて西側に亡命しようとした市民を射殺する許可を国境警備兵に与えていた。数百人の東ドイツ人が、国境を越えようとして警備兵によって射殺された。ペトリの言葉には、社会主義時代の東ドイツのような非情さがある。
 またガウラントは2018年にドイツの過去の歴史を美化し、ナチスの犯罪を矮小化したことがある。彼はAfDの青年組織「若い選択肢(JA)」の会合で、「ドイツの千年の歴史の中でヒトラーとナチスなど鳥の糞のような物だ」と語ったのだ。
 ヒトラーとナチスは、約600万人のユダヤ人を虐殺し、第二次世界大戦を始めて欧州を荒廃させた、歴史に例のない凶悪な犯罪者・テロ国家である。歴史の中ではしばしば虐殺が行われてきたが、工場のような殺人施設を作り、あたかも害虫を駆除するかのように、青酸ガスを使って流れ作業で市民を殺害したのは、ドイツ人だけだ。それにもかかわらずガウラントは「ヒトラーとナチスは、ドイツ史の中で取るに足らない存在だ」と言ったのだ。これは第二次世界大戦後のドイツでは、タブーとされてきた姿勢である。
 CDUのアンネグレート・クランプカレンバウアー党首(当時は幹事長)は、「第二次世界大戦やホロコースト(ユダヤ人虐殺)を鳥の糞と形容するのは犠牲者に対する侮辱であり、ドイツの名の下に行われた犯罪を矮小化する試みだ」とガウラントを厳しく批判した。
 ガウラントの発言は、フランスのネオナチの言葉と似ている。1987年にフランスの極右政党「国民戦線・FN(後に国民連合・RNに改称)」の党首だったジャン・マリー・ルペンが「5000万人の死者をもたらした第二次世界大戦の歴史全体から見れば、アウシュビッツのガス室は細部に過ぎない」と語ったのと同一線上にある。ルペンはこの発言を理由に、フランスの裁判所から罰金刑に処せられた。ジャン・マリー・ルペンは、現在のRNのマリーヌ・ルペン党首の父親だが、確信犯のネオナチであり、過激な発言のために娘によって党から追放されている。ナチスの犯罪の矮小化は、世界中の極右に共通する姿勢だ。

 *露骨な人種差別

 また、あるサッカー選手に対する中傷も、ガウラントの本質を浮き彫りにした。サッカーファンならば、FCバイエルン・ミュンヘンのジェローム・ボアテンの名前を知っているだろう。ベルリン生まれの彼は2014年にドイツナショナルチームの一員としてブラジルでのワールドカップに参加し、ドイツを優勝させたプレーヤーの一人だ。
 ボアテンは、ドイツ人の母親とガーナ人の父親の間に生まれた。外見は黒人だがドイツ国籍を持っている。
 ガウラントは、2016年に「ボアテンは、ドイツ人によってサッカー選手としては高く評価されている。だが人々は、彼が隣の家に住むとしたら歓迎しないだろう」と発言した。この言葉には、人間を肌の色で差別する、ガウラントの姿勢が表われている。ボアテンは、「今どき、そんな発言をする者がいるとは嘆かわしいことだ」とコメント。メルケル首相の報道官も「ガウラントの発言は低級だ」と批判した。
 AfDの本質は排外主義・人種差別主義であり、ナチスと共通点がある。ドイツの町では毎年12月に、クリスマスの飾りや菓子などを売るクリスマス市場が開かれる。バイエルン州など南部では「クリスト・キントルマルクト(幼な子キリストの市場)」と呼ばれる。ニュールンベルクのクリスマス市場は、ドイツで最も有名な物の一つ。ニュールンベルク市当局は毎年、同市に住む少年・少女から「クリストキント」を選ぶ。クリストキントは祇園祭のお稚児さんのような、祭りのシンボル役である。同市は2019年11月に、17歳のベニグナ・ムンズィさんをクリストキントに選んだ。ムンズィさんの母親はドイツ人、父親はインド人だが、ドイツ国籍を持っている。
 これについてAfDのバイエルン州支部は、フェースブックにムンズィさんの写真を載せ、「ニュールンベルク市は、新しいクリストキントを選んだ。いつの日か我々も米国のインディアンと同じ運命をたどるだろう」と書き込んだ。AfDは、「クリスマス市場のような伝統的な催し物に、ドイツ人とインド人の混血の市民が選ばれるようでは、我々白人のドイツ人は、外国系ドイツ人の増加によって、将来インディアンのような少数民族にされるだろう」と批判したのだ。
 AfDは、ドイツで生まれ、ドイツ語を話し、ドイツ国籍を持っていても、父親がインド人だということだけで差別する。この国の排外主義者は、帰化してドイツ人になった外国人を「パスポート・ドイツ人」と呼んで差別し、ドイツ人の両親から生まれた「ビオ・ドイツ人」だけを真のドイツ人と見なす。ナチスの純血主義に直結する、危険な人種思想である。

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