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2022年01月10日20:21

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フェイク!

またも、読書した本から。
『自分のついた嘘を真実だと思い込む人』(朝日新書・片田珠美)という本をブックオフで購入。100円だったし、ちょっと思うところがあり買っちゃった。
思うところがある、というのは、身近に虚言癖がある奴がいて、まるで息を吐くように嘘をつきシレっとしているのだが、この本の作者は精神科医ということもあり、そういう人を精神病理面から分析していると思ったから。
ところが、実際に読んでみると、精神病理面から虚言癖のある人の分析などとは程遠く、嘘を見破る方法とか、嘘をつかれたときの対応方法とか、そういった処世術ばかりが記載されていて、「あー失敗した・・」と思った。
確かに、息を吐くように嘘をついて、周りを巻き込む迷惑ちゃんがいれば、そりゃ有効なんだろう。この本で例にあげていた偽音楽家の佐村河内とか、STAP細胞の小保方晴子さんとか、世間をペテンに巻き込んじゃうようなケースは、見破ったほうが良い。
あと、宗教勧誘や、マルチ商法、詐欺師など、直ちに嘘を見破り対処するに越したことはない。
が、この女史は、日常のちょっとした嘘でさえ徹底的に糾弾するような考え方で、ここまでくると人間不信に陥り、人間関係も立ち回らなくなる。やりすぎ感が否めないのである。
この女史は四国出身の結構なおばちゃんで、カバーに載っている写真をみると、一癖ありそうな(ぶっちゃけ、性格悪そうな)人である。本の内容から、夫や子供がいるような記載が見受けられなかったので、独身か?と思う。
ただ、精神科医として永年にわたりいろんな目にあっているため、人間に疑心暗鬼を持ってしまうのは仕方ないと思うのだが、読んでいてだんだんウンザリしてきた。
また、差別するわけじゃないけど、四国という土地柄が、そういった人間不信を生み出したり、嘘つきを生み出したりしやすい土壌のような気もする。

僕は、何事も包み隠さず正直に過ごすなんて不可能だと思う。
女史は、「あえて言わない」ことも極悪な嘘であるというが、じゃあ何でもかんでも正直に言ったほうが良いのか?
もちろん、言わなかったことによって、誰かが甚大な被害を及ぼすようなケースはNGである。また、全くデタラメな経歴を周りに吹聴したりして、自分を大きく見せかける虚言癖の人も、自分には実害がないにせよ、まあ人としての信頼が格段に落ちるし、誰も近寄りたくなくなる。
だけど、日常のちょっとした嘘や、あえて言わないことは、相手を傷つけない思いやりや優しさもあるし、毎日の人間関係を円滑にするためにも必要だろう。
女史は、「でもそれがバレたときの相手に与えるダメージは甚大になる」というが、だったら、何でも正直に言っちゃって傷ついても良いのか?
例えば、この本に紹介されていたケース。
ある10代の娘は、父親が、ずっと義理の父だと思っていたのが実父だと発覚して心を病んでしまった。というのは、物心がつくまえに死んだとされる実父の弟(つまり叔父さん)が母の再婚相手で、ずっと義理の父としていたのが、実は実父が死ぬ前に母が叔父と肉体関係を持ってしまい生まれた子だったということが発覚してしまった、というもの。
これなんぞ、いろんなタイミングから母と叔父とが関係していたなんぞ、世間が何こそ言うかわからないし、娘もどんな悪罵にさらされるかわからない。そのため、両親が、全てが平和裏に済むように画策し、墓場まで持って行こうとした結果だろう。
そこには、これからの家族を守らなきゃいけない、という優しさがあると僕は思うし、たまたま娘が真実を知ってしまい、心が病んでしまったのは不幸だが、嘘をついていた両親を極悪人として断罪できるものだろうか?
そりゃ、元夫が死に目に会うような病気のときに、夫の弟と肉体関係を持つなど、倫理感が欠如している!ということも可能だが、人間てそんなに強いのだろうか?
叩いて埃の出ない人など、おそらくギネス級の正直者くらいで、ほとんどいないだろう。
誰しも過ちがあり、欲望に流されてしまうことがある。
程度の大小はあるにせよ、皆、そういうものを抱えて生きていて、それを殊更に暴こうとするのは、そっちのほうが人間としての倫理に欠ける。
虚言癖や、嘘をついて不法に搾取するような詐欺師にたいして、嘘を見抜き被害にあわない処世術はもちろん必要だが、人間関係を円滑にし、誰もが傷つかないようにしようと努力する嘘や「あえていわない」行為は人として必要だ。

昨今、殊更に真実を暴きたてようとする世間、マスゴミ、それにネットユーザーが増殖しすぎている。自分はリスクを背負わずに安全圏にいながら、他人の過ちばかりを糾弾し、「他人の不幸は密の味」をやる連中が多すぎる。
そして、この本に書かれていることは、そういう人間になることへの指南書のように思えてしまった。
僕は、病的に虚言癖のある特殊な人を対象にした、精神病理的な分析が読みたかった。
全く見当違いな本だった。

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