夕方前の雪景色の馬傀駅の広場には、再び
天から
白い雪が舞い降りて来ていました。
近衛兵たちはそれぞれが
かがり火を焚いた木の棒を持って待機しています。
「痛たたたたたたたたぁぁぁ
」
癇癪を出した玄宗皇帝が、ギックリ腰になって、ソファに倒れました。
高力士と銀菊と小柳が陛下に寄り添って、銀菊と小柳が体を摩って労ってあげています。
「父上
どうか
四軍の要求にお応えください
」
龍星皇太子は
容赦なく詰め寄っています。
夕方になり
空から雪が舞い落ちる
幻想的な雪景色の中
お腹を空かした近衛兵たちは、ハイテンションのラリった状態になっていました。
龍星皇太子からバーベキューを御馳走されて、お腹を満たしている四人の将軍の命令で、
作戦通り
近衛兵たちはまた、シュプレヒコールを合唱し
刀で盾を叩き始めました。
玄宗皇帝は、持病の癇癪を出して、ぎっくり腰になると、ソファから立ち上がれなくなっていました。
「父上
罪深き悪女である楊玉環(楊貴妃)に、死を賜ってください
楊玉環が、父上の妃として側に仕えている以上
安飛鳥(アン・ルーシャン)は、
我れらが唐の国への攻撃を止める事はありません
どうか
大唐帝国の、我が役人と兵士
そして民衆の為に
楊玉環に死を
」
龍星皇太子が、力強く訴えました。
「楊貴妃に罪はない
楊貴妃に罪があると言うのなら……
セクシーすぎる、女の業の罪じゃぁーーー
」
ソファに倒れて
痛みを堪えている玄宗皇帝は、しゃがれた声で、泣きながら叫びました。
「陛下
兵士は処罰も覚悟の上です
」
陳玄玲が、
トドメをさしました。
「陛下が今
なすべき事は
兵士たちの心を鎮め
ご自身の安泰を図ることです
」
高力士も、
トドメをさしました。
そして、目に涙を溜めた李瑁が
「玉環、最後に私への言葉を。」
最愛の妻であった玉環(楊貴妃)に言いました。
楊貴妃は潤んだ瞳を輝かせて
赤い
魅惑的な唇を
半開きに開いて微笑すると、李瑁を熱く見つめ
「あなたの幸せを、
これからも
ずっと願い、祈ります。
私は、
あなたの妻になった日から、あなたの
優しい愛を忘れた事など、一日たりともありませんでした。」
楊貴妃は李瑁に抱きついて、涙を流しました。
李瑁も、愛しい本命の女を、強く抱きしめ返しました。
「私とて、
玉環の愛を、一日たりとも忘れたことなどなかった
いや、忘れるどころか
会いたくて
切なくて
狂いそうだった
死にきれなかった自分を悔やんで
ここまで生きてきた。
そなたに
一目惚れした私のせいで
そなたの一生を
変えてしまった……
だから
玉環に罪は無い
」
「李瑁
何を言っているのだ
その女にたぶらかされるな
こうなったのは、その女の自業自得だ
己の出世欲
色欲
名誉欲の為に
もうこれ以上、李瑁だけでなく
父上や私まで、巻き込むな
唐の国を傾けたのは、貴妃、楊玉環のせいだ
」
龍星皇太子にカチン
ときた
楊貴妃は
「高力士
外の兵士たちに言いなさい
貴妃、楊玉環は、国に殉じて死ぬと
」
楊貴妃は、高力士に最後の命令を下しました。
「貴妃、楊玉環様
かしこまりました。」
高力士は、深く御辞儀すると、龍星皇太子の側で仕えている、四軍の頭の陳玄玲将軍に
「陳将軍
陛下は近衛兵の求めに応じて、貴妃、楊玉環に死を賜る。
至急
命を伝えよ
」
「はい
」
陳玄玲将軍は急いで観音開きの扉から出て行き、大きな声で、
雪が舞う
白い広場で
かがり火が
煉獄の炎のように
無数に掲げられて
整列している
近衛兵たちに
命を伝えました。
「皇帝陛下が、貴妃、楊玉環に死を賜る
」
「うおぉぉおおおーー
楊玉環に死を
」
「楊玉環に死を
」
「楊玉環に死を
」
空腹が極限に達している近衛兵たちは、奇声を上げたり、シュプレヒコールを合唱したり、刀を盾に当てて、音を出し合っています。
龍星皇太子の側近は、満面の笑みで、龍星殿下と考えて
実行した作戦の成功を、喜んで見ています。
「行かれよ。私が陛下に付いている。」
龍星皇太子が
高力士、それと阿倍仲麻呂に命令しました。
侍護衛長と潤一には、龍星皇太子は
「貴妃、楊玉環の、
首を絞める絹の布を用意し、仏堂へ行け。」
と命令しました。
つづく
⛩絶世の美女と言わせ続ける妖魔伝説
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