mixiユーザー(id:277042)

2021年11月16日23:22

100 view

経済談義第37回:為替について(その3)

経済談義シリーズ、為替について取り上げています。



企業のコストのうち、燃料や原材料などの輸入分は、たとえ輸出企業といえども円安の恩恵を受けないという話を前回書きました。

ですから、円安の恩恵というのは結局、輸入コスト「以外」の部分に限られます。

輸入コスト以外のコストとはなんでしょうか。いろいろありますが、なかでも大きいのは「人件費」です。
工場の従業員のほか、総務など間接部門や、部品を他社から仕入れているのであれば、部品メーカーの社員の給料も、広く言えばすべて製品の原価に含まれるわけです。

そうした社員の給料は円建てで支払われていて、円安になってももちろん上がることはありません。
ドル建て換算ではむしろ目減りすることになります。


つまり輸出企業の円安競争力というのは、実は社員の給料をこっそり削り取ることによって発生しているのです。
円安万能主義に対する反論として、円安とは労働者から企業への富の移転であると言及されることがあります。少しわかりにくいのですが、それは上記のように社員の給料が(ドル建てで)目減りすることによるものです。


なお円安による海外売り上げ向上分を、すべて社員の昇給に配分すれば給料目減り問題は緩和されますが、それをやると企業利益は全く増えない、つまり円安の恩恵を企業がまったく受けないことになりますので、そうしたことが行われることはまずありません。



一方、給料を削られる個人の家計の観点からいうと、円安には何のメリットもなくデメリットばかりです。
私たちの生活は、ガソリンや灯油、輸入果物、衣料品など多くの輸入品に頼っています。
電気製品も、日本メーカーの製品でも製造は中国工場だったりします。
円安になると、これらすべての価格に上昇圧力がかかり、生活はその分苦しくなってしまうわけです。

円安により日本は救われるといいますが、一部の企業が救われるだけで、実はそれはすべての国民の家計を犠牲にすることで成り立っているのです。



円安により一部企業の業績が改善するというメリットがあるのは事実ですから、デメリットと比較検討した結果、一時的に円安に誘導するというのは、政策判断としてはありうる選択肢です。その意味では円安誘導論には一理あるとは思います。

しかしその場合には、家計が悪化することをはっきり説明して議論を尽くすべきです。
特にネット動画では、都合の悪い話を隠したまま反対論者を無知呼ばわりするような物言いがされることがままありますが、それは経済学者や評論家として適切な態度だとはいえないでしょう。



(つづく)

連載バックナンバー:
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942875057&owner_id=277042
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年11月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930