1970年にイギリスでプログレの爆発が起こり、71年にはドイツで爆発が起こったが、それ以外の国では英独の動きを眺めながら、多様な潮流が生じつつあった。50年前のプリミティブではあるが個性的で独創的なバンドの多彩さを、今のバンドも見習うべきだ。
曲 バンド アルバム
� �Satori part2 / Flower Travelin’ Band [ Satori / Japan ]
1971年、50年も前に日本にもこれほど独創的な音楽が存在したことを我々は誇りに思っても良いだろう。まるで催眠術のようなシタール奏法のギターに乗せて、ジョー山中による魔術的なハイトーン・ヴォーカル。そして繰り出される和太鼓。キーボードはなくて、サイケデリック・ロックの文脈のサウンドだが、どの１音をとってもユニーク極まりなくて、完成されている。
�◆�And his adventure in the land of Flip / Daevid Allen [ Banana moon / France ]
デビッド・アレンのソロ・アルバムでは、アレンのギター・ヴォーカルのほか、ロバート・ワイアットやゴングのメンバーを含む10人がゲスト参加。ゴング以上に自由で実験的な構造を持ったサウンドだ。呪文のようだったり、ケヴィン・エヤーズの真似をして歌ったり。この曲では、車椅子生活になる前のワイアットのドラムスが縦横無尽に駆け巡り、ヴァイオリンが宙を踊る。やがて鋭利な電子音響によって空間が真っ二つに切り裂かれ、異界の深淵が出現する。アレン在籍時の ソフト・マシーンは、こんな感じだったのではないかとされる。
�� L’uomo / Osanna [ L’uomo / Itary ]
この翌年に排出するPMFやバンコに先駆けて、イタリアの暗黒大王オザンナが作品を発表。フルートと生ギターで静かに始まる叙情的なイントロだが、すぐにプラスが大炸裂。ヴォーカルやコーラスが人々の祈りを表し、プラスが神の怒りを表現しているかのようだ。曲のラストではフルートが現れるなど、静と動の移行がみごと。
�ぁ�3 tempo : cadenza ( andante con moto ) / New Trolls [ Concerto grosso per 1 New Trolls / Itary ]
ニュー・トロルㇲが、オーケストラとともに演奏したコンチェルト・グロッソ第1番。正規のオーケストラによるヴァイオリンの長いソロから始まり、ゆったりとしたドラムスとオーケストラのロックサウンドに発展する。メロディーは優美で聴きやすいものの、これもまたこの時代には実験であった。少しだけ男女合唱が入るもののインスト主体の曲であり、この曲では特にヴァイオリンとキーボードの絡みが印象的。歌物主体のニュー・トロールスのポップさは、影を潜めている。
�ァ�Song of the marching children / Earth & Fire [ Song of the marching children / Holland ]
アース＆ファイアは、オランダのポップバンドから2作目で完全に脱皮。この曲は、18分半に及ぶ本格プログレになってる。静かな始まりかと思うと、メロトロンの轟音に度肝を抜かれる。ちょっと男性っぽくて、力強い女性ヴォーカル。 メロトロンの大河の恍惚感。あるときは重厚に、あるときは軽快に、あるいは静謐に変転する楽曲編成の複雑さ。途中で本物のオーケストラまで入る。何と言ってもこの曲は、メロトロンが気持ちよくて、それがラストまで継続する。
�Α�Red light city / McCully Workshop [ Genesis / South Africa ]
南アフリカ共和国はアフリカで最も豊かな国で、トレヴァー・ラビンやマンフレッド・マンの出身国でもある。音楽も既に50年も前に先進国並みに洗練されていた。マコーリー・ワークショップは、チュリーとマイクのマコーリー兄弟を中心とする４人組。ブリティッシュな影のあるメロディーに、トランペット・フルート・トロンボーンという管楽器が加わった壮大なシンフォニック・ロックである。この曲では終盤にブラスを加えた大音響で盛り上がる。
�А�Un caffe de Jenifer / I Pooh [ Opera prima / Itary ]
長いキャリアを誇るイタリアの国民バンド、イ・プーの最も充実した時期の１枚。 バックにオーケストラを起用。メロディーは潤沢にして極上。４人とも歌えるコーラスのおかげで、イタリア的な透明な哀愁に満ちている。後半にオーケストラが盛り上がるという意味で、プログレッシブな音造りである。
�─�Hornschmeyer’s island（ホーンシュメイヤーの島） / The Flock [ Dinosaur swamps（恐竜の棲む沼） / USA ]
アメリカのザ・フロッグは、ヴァイオリン奏者ジェリー・グッドマンが作った8人編成のバンドで、サックス４人・トランペット１人というビッグ・バンド的な編成。管楽器が多用され、狂騒的な騒擾状態が出現するので、全体としてはジャズ・ロック風だ。しかしコンセプトは幻想的で、限りなくシンフォ的。繊細なヴォーカルから入ってブラス大会の狂乱となり、そして 超絶バイオリンやフルートによる静寂が交互に訪れる。
�� Crimson dagger / Polyphony [ Without introduction / USA ]
アメリカのELPタイプのキーボード・シンフォを展開するポリフォニーは5人組で、リズム隊にはドラマーのほかに、コンゴ・ティンパル・パーカッション専門の打楽器奏者がいる。キーボードのクレイグ・マッケイは、冒頭からキース・エマーソンばりの速弾きオルガンで疾走する。この曲では中盤になってようやくヴォーカルとコーラスが入るが、アメリカ的なおおらかさを持っていて牧歌的。パーカッションが多彩な音色を出している。
�� Donna hai ragione tu / I Raminghi [ Il lungo cammino dei Raminghi / Itary ]
イ・ラミンギもイタリアのバンド。イタリアではだんだんとプログレのムーブメントが起こりつつあった。ハイトーンでシャウトするヴォーカルが刺激的。フルートとハードなギターが吹き荒れるヘヴィネスも十分だ。1枚しかアルバムを残していないものの、オザンナやバンコに先駆けて、イタリア的な迷宮を既に創出 していた。
[次点] Le monster de la main / Vos Visions [ Vos Visions / Canada ]
カナダ・ケベック州のフランス語で歌うヴォ・ビジョンは４人組で、キーボードのジャック・ペロンが、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターのピーター・ハミルのような声で、獰猛にシャウトする。暴力的なヴォーカルがあるかと思えば、男女ヴォーカルの優雅なメロディーの曲もある。この曲では、地を這うようなヴォーカルと同時に進行するオルガンが、ヘヴィな音塊を形成していて暴虐的だ。
〇他に候補にしたバンド
Ache, Catharsis, Christmas, Circus 2000, Delilium, Focus, Giganti, Laghonia, Leoni, Locomotivee GT, Luv Machine, Mutantes, Nuova Idea, Pirana, Ruja, Savage Rose, Spectrum, Turbrot,
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