オリンピック閉会式が終わり、次はパラリンピックへ。
あっという間だった。祭りが終わった後の寂しさもあるが、短期間に凝縮してやるのが良い。ダラダラ長くやるのではなく、ギュッとやってパっと終わる潔さというか、桜の散り際のような儚さが素敵なのである。
で、前回投稿時は野球の決勝前だったが、結局、金メダル獲得。
山田哲人、村上のヤクルトコンビの大活躍も嬉しいんだが、くどいようだが、彼らはプロ野球という現場で何度も栄光を味わっている。なので、殊更オリンピックの栄光って必要あるのか？と思うので、世間並みに盛り上がれない。
レスリングは、全盛期の頃ほどでもない、と思っていたんだが、フタを開ければ、女子は史上最多タイの４階級で金。男子もロンドン以来の金がでて大繁盛である。
レスリングって、大会最終日直前までやるんだったなー、、そこで駆け込みの金メダルラッシュとなった。さすがである。
とりわけ凄かったのが、50kg級の須��優衣ちゃん。なんというか、他を寄せ付けない強さで、吉田さおりの再来を思わせる。
ちなみに、須��優衣ちゃんは、開会式で八村累とともに、日本の旗持ちを勤めたのだが、2m近い八村に150cmちょっとの須��はまさに大人と子供、というか巨人と小人。なんだが、戦うと優衣ちゃんのほうが強かったりするんだろうか？
空手の形では、喜友名諒が金メダルを獲ったが、僕は女子の銀メダル、清水希容のほうが目が行ってしまった。彼女自身、美しい顔立ちをしていたが、それに加えて形の美しさである。頭の位置が全く動かないで、常に重心が安定している動作が、日本の古典芸能のような究極の美しさだったんでホレボレしてしまった。
決勝ではスペインのなんとかいう選手に獲られたが、僕は清水希容のほうが断然綺麗だと思った。ああいうのって、結局は好みなんじゃないか？
僕は、基準が明確でないというか、審判の判断の要素が強い競技、空手の形とかアーティスティックスイミングとか、ってオリンピック競技種目にしちゃいけないと思う。結局、何ができれば○ポイント、みたいな基準は良いのだが、それ以上に「美しさ」「表現力」なんてのが出てくると途端に怪しくなる。それって、スポーツじゃなく、芸術のコンテストじゃないかって思うんだが・・
バトミントンは、リオの高松ペアみたいのが出てくることを期待したんだが、さすがにそうはうまくいかないもんで。結局混合ダブルスの渡辺・東野ペアの銅メダルだけか。
桃田選手は残念だったな。
でもまあ、桃田は、悲運のオリンピアンていう感じで、その存在感は群を抜いているが、メダル１個くらい獲らせて実績を作ってやりたいなーとは思う。まあ、腐らずにパリ大会でリベンジしてほしい。泥臭くボロボロになるまでやるのが、桃田らしくて良いんじゃないだろうか。
で、僕は今大会で、絶対に観ると決めていたのが、自転車のトラック競技。
日本からは、競輪選手の脇本雄太、新田祐大、小林優香という豪華なメンツが登場するので、このゴールドラッシュの最中、誰かが金メダルを獲るのではないかと思っていた。
ワッキーは、2019年日本選手権、2020年高松宮記念杯の覇者、新田祐大は2019年オールスターの覇者でＧ１の常連。競輪界ではスター中のスター。小林優香はガールズケイリンコレクションの常連であり、その上、オリンピックに出場するためにガールズケイリンに身を置くという、競輪より目的がそっちにあり手段として競輪を利用しているという本格派である。
しかし、フタを開ければ、新田祐大、小林優香は予選落ちをしてしまった。
その上、自転車競技はオリンピックの中でもとりわけ人気が薄いのか、テレビ中継なんかしやしない。
ようやく最終日に決勝をやっている始末で、朝から観たのだが、決勝に残ったのが、ケイリンでのワッキー、そしてオムニアムの梶原悠未であった。
梶原悠未ちゃんは僕は知らなかったのだが、ここまで残っているってことはプロ選手か？と思ったが、思いもかけない選手が残ったなあ、と漠然と思っていた。
期待はワッキーだったのだが、準決勝で敗退。
準々決勝とその後になるが順位決定戦では、圧倒的な先行で１着を取っていたので、実力をフルには発揮していたんだと思う。だが、準決勝は、先行するも、インを取られ、そのまま捲くりに出るか？と期待していたら外からフタをされイン詰まりしてしまった。
こうなっては、ズブズブで、かなり後方へ下がってしまいそのまま６着。つまりはケイリンの競技のなかで、競輪の勝負で負けたことになる。何やってんだか・・
おそらく、あの先行力は出場選手の中でも群を抜いておりトップクラスであったので、決勝に乗ってしまえば圧倒的先行力が爆発して金メダルいけたんじゃないかと思う。
なんとも残念な結果。まあ一回性の勝負なので仕方ないんだが、期待していただけにガッカリである。初の自転車競技で金メダルの可能性があったのに。。
んで、もはや残っているのは梶原悠未ちゃんただ１人である。
並居る競輪選手が脱落した中、名前も知らない梶原悠未ちゃんのみが頑張っているので、そこに一気に注目していた。
そもそも彼女が出場したオムニアムという競技を、今大会で始めて知ったのだが、以下の４レースの総合ポイントで競うそうだ。
第1種目・スクラッチ
第2種目・テンポレース
第3種目・エリミネーション
第4種目・ポイントレース
スクラッチは、7.5kmを走った時の純粋な着順。
テンポレースは、7.5kmを走って１周ごとに先頭選手に1点
エリミネーションは、20kmを走り、周回ごとに最下位の選手が脱落し、最後に残ったものが一番になる。
ポイントレースは、テンポレースとほぼ一緒だが、20kmを走り、10周ごとの着順でポイント加算。こちらは1着〜4着にポイントがつく。
梶原選手は、エリミネーションが始まる段階で3着。これは期待できそうだ、と観ていたら、エリミネーションで最後の2人にまで残り、この時点で2着。さまざまな選手が振り落とされる中で、最後まで残っていたのが圧巻で、思わず鳥肌がたった。
最後のポイントレースは、スタミナとの戦いにもなってくる。そのためか、梶原選手は、無理にポイントを取りに行こうとしていなかった。結局、途中で１つポイントを取っただけ。あとは、総合でポイントが取れれば、金に届かずとも、銀はいけるという作戦だったのかもしれない。
いずれにせよ、そこは勝負の機微で、無理して金メダルを獲りに行きズブズブになって何も獲れないより、確実にいくほうが良ければ、その戦法も大いにありである。
と思っていたら、ラスト10周を切ったところで、横の選手と接触しまさかの落車！
いやーここまできてこれか！と思ったら、この競技、落車しても5周以内に集団に戻れば減点を喰わないとのこと。助かった。あと数周、逃げ切れば・・とみていたら、見事に逃げ切っての銀メダルであった。
これには興奮したねえ。
僕は、プロの競輪選手しか見えていなかったが、まさかの無名の選手が、しかも自転車女子初のメダル。
梶原悠未って何者だ？と早速調べたら、筑波大学の現役の大学院生だという。
オリンピックは中学時代から出たいと思っていたが、その時は水泳をやっていて、全国大会で勝てずに断念。
筑波大学附属坂戸高等学校に入学したときに、自転車競技ならオリンピック出られるんじゃないか？という母親のアドバイスで、自転車を始めたという。
そこからは、努力と、もともとあった才能が融合したのか、国内外の大会でチョコチョコ優勝するようになっていた。
地道に実績を重ねていたら、いつのまにやら五輪代表に選出されていた、という。
ここで凄いのが、その学歴をみても分かるとおり、文武両道で勉強も良く出来るということである。勉強もしながら、自転車も研鑽し、プロの競輪選手がどんどんと脱落していった東京オリンピックで、たったひとりの大学院生がメダルを取得したっていうのがすごいドラマじゃなかろうか。
なんだか、凄くカッコイイ。特別なコーチがいるわけではないため、取り立ててスポーツ経験のない母親が全面的にトレーニングをサポートしていたそうだ。
職人の父親も、全面的に協力していたそうで、親からすれば、なんとも自慢の娘であろう。羨ましい限りである。
ただし、だからといって、出場した競輪選手たちが情けないとは思わない。
そもそも彼らはプロなのであり、日々の斡旋で着を残すことが使命なのだ。逆にいうと、そこが本業だから、無理してオリンピックにでる必要もないんじゃなかろうか？やはりお金には換えがたい名誉というのがあるのかもしれないが、僕は、彼らはすでに競輪のビックレースを制覇していて名誉に加えてお金も得ているわけで、そこが本分なのだ。
オリンピックは、僕はアマチュアの祭典に徹しても良いと思う。
普段無名のアマチュアが、この一回性に勝負をかける。梶原悠未ちゃんは次回以降、もう出てこないかもしれないし、その時は、何か他の仕事に就いていることだろう。一市井の人として、平凡な日々を過ごしている可能性が高い。（メダリストを利用してタレントになっていたりの可能性もなきにしもだが、彼女はそういうキャラとは程遠い）
彼女がこの先、時たま「かつて東京オリンピックで銀メダルを獲った人」って、周りにビックリされることがあったりして鼻が高かったり、そんな程度でよいんじゃないか、と僕など素人だから思ってしまう。
例えば、ガールズ競輪の賞金女王、児玉碧衣ちゃんなんかは、オリンピック出場を目的としたナショナルチーム入りは一切拒否しているという。
その理由は、ナショナルチームに入っている期間は、競輪ができずに収入が減るからだという。オリンピックで金メダルなんていう不確定なものよりも、確実に収入が入ってくる競輪でじゃんじゃん稼ぎたいとのことで、お金のために競輪をやっていると明言して憚らない。
これこそが、プロじゃないか！と思った。プロはそれでいいのだ。その世界で勝って少しでも多くの収入を得るのが目的だっていうのは、これぞプロの考え方だ。
彼女は清清しいほどに、プロに徹した思考をしていて、なんだか昭和の男を思い起こさせる。今時、男でもこれほどプロに徹した考え方をしている人は少ないんじゃなかろうか。
なもんで、オリンピックは、梶原悠未ちゃんのように、純粋にスポーツで頂点を獲ってみたい、という人のためにあるべきものじゃないか、ということを思わずにいれない。
とまあとりとめもなく書いてしまったが、要は東京オリンピック、僕は非常に楽しんだということですよ。
最後に、全体としてみてて思ったことが。
メダルを獲得したアスリートの皆さん。判を押したように「スポーツを通じて皆さんに勇気を与えられたら嬉しい」みたいなことを言っていたが、ホントか？
もし純粋にそんなことを思っていたら、さっさとその思考は辞めるべき。
アスリートは、与えられた条件の中で、最大限のパフォーマンスを発揮し、最高の結果を目指せば良いわけで、他の誰のためでもない、自分のために全てを行えば良い。
我々一般庶民のことなど考えることもなく、自分が競技をやることの意義なんか考えることはない。
僕はそんな欺瞞をみたくはないし、あまりにもそれを言わされている、或いはそう思うように洗脳されている選手が気の毒でならない。
酷な言い方をすれば、アスリートは結果が全てを物語るのである。
やたらとインタビューが多く、アスリートの皆さんも、模範解答をただ口走るだけの茶番にウンザリはした。
アスリートに言葉はいらないのだ。その競技に最大の力を使っているその姿こそが、何よりも雄弁に語っているのだから。
ログインしてコメントを確認・投稿する