■防衛省、小中学生向け「白書」作成＝１６日からネット公開
(時事通信社 - 08月10日 16:02)
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岸信夫防衛相は１０日の記者会見で、小中学生向け防衛白書の作成を発表した。国防に関する若者の理解促進が狙い。１６日から防衛省のホームページで公開する。
「はじめての防衛白書」と題した計３０ページ。(1)日本周辺の安全保障環境(2)憲法と自衛隊の関係(3)宇宙やサイバーなど新たな戦闘領域―といったテーマを取り上げ、イラストなどで分かりやすく解説した。
岸氏は「一人でも多くの皆さんに防衛省・自衛隊に対する理解を深めてほしい」と述べた。
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国防は国の基本だから義務教育でも組み込むのが望ましい。それは別に２１世紀に入ったから必要なのではなく、どのような地域であれ国家であれ、太古から行ってきた事である。
江戸時代の日本では各藩が教育に力を入れた例は沢山ある。その教育が明治維新(1868)に結実したと言ってもよい。しかし幕府側の教育が劣っていたから負けた訳ではない。十分な教育の成果があったから江戸の街を燃えカスにせずに済んだともいえる。
人材こそが国家の根幹である、は明治政府にも踏襲された。だから教育勅語(1890)は早くに成立した。だが、次第に教育は実利的な手段にとって代わられる。社会の安定は、群れの中での成功者と失敗者をわけ、あるシステムに適用する事が繁栄するという進化的力学を後追いする。
古代スパルタの敗北を見ても、国家の衰退にはそれなりの理由がある。それは数の有利が働かなくなっている事で観察されうる。多勢に無勢が勝利が逆転する理由には幾つかあるだろう。ひとつに装備／技術の劣勢、文化的習慣的欠陥欠点、士気／忠誠／機知の喪失、それを十把一絡げにすると人材の枯渇に極まる。
またピーク後は大概腐敗するものである。どれだけ慢心を諫めても難しい。それをある人は神話化と呼んだ。
だから子供たちを教育するなら誇りを持ちながらも神話化させない事が重要である。また勇気の中には失敗や敗北を直視する考え方も必要である。実際にそれを経験するのはもう少し後で構わないが、少なくとも考え方を知っておく必要はある。
すると子供の教育の要点に掲げるものは考え方の基本構造であって、それは知識の増大とは異なる。小室直樹の言葉で言うならエッセンスである。
教育勅語のコアにあるものは、忠と孝。これは江戸時代的価値観の近代的復権と呼んでも差し支えない。幕府への忠誠を国家に置き換えただけに過ぎない。恭儉、博󠄁愛、學修、啓󠄁發、��器󠄁という個人的価値を公󠄁益󠄁にまで拡大すること、当然ながら最終的には、危急の大事には軍を形成する一員となる事を諭す。いざ鎌倉へは日本古来以来の美点である。
当然ながらどのような国家も自国の軍に誇りを持つように教育するし、如何なる汚点であってもそれは過去とする。それは例えば、麻薬カクテルを構成する人たちでも持っている価値観である。自分が存在するコミュニティに親愛の情を持たずして貢献は考えられない。
日本は最終的にはその結果としての焼け野原と勝ち目のない敗戦を経験したものだから、教育と軍の間に横たわる溝は極めて大きい。軍に協力するのはいい、しかし、お前が無能でないとだれが保証するのか。いや人間だから失敗もするだろう。だが、その時にお前はどのような責任の取り方をするのか、という不信は今も健全に残っている。それはそうだ。あれだけの大敗をしながら先対戦の敗者たち、その指導的役割を果たした人たちは圧倒的に責任を取っていない。
もちろん黙した人はいる。残りの人生を平和や復興や教育に捧げた人もいる。だが、多くの人は平気な顔をして生きていた。憲兵としていばり散らしていた人で自死を選んだ人は寡少のはずだ。
だが、それは子供の教育とは関係ない。子供にそういう事を教える必要はない。では何を教えるべきか。ここではたと頭を抱えるはずである。日本にも軍隊がある事、それは世界中でそうである事を知る事は必要であろう。しかし国家を体系的に見るならが、軍の前に憲法がなければならない。憲法なくして国軍なしである。
だから、この子供向け冊子に憲法の話が書かれている事は極めて重要でその内容は知らないので、良識的な憲法論が展開されるのか、それとも自民党的荒唐無稽憲法論が展開されているのかは不明だ。
これがきちんとした教材で憲法に触れる具体例としてこれが初めての経験になる事を願う。そうならば価値がある。すくなくとも憲法全文を義務教育で教えていない現状では極めて重要な教本となって欲しい。
しかし惜しむらくはこの冊子の表紙である。いかにも子供向けのほんわか絵である。冊子の中には写真も満載しているだろうが、軍というのは極めて冷徹なまでのリアリズムである。その一端に触れるには、この表紙は看板に偽りありではあるまいか。
何を教えるかは難しい。だから必ず教育とはその困難に立ち向かった人たちの苦難の後でなければならない。それ以外に子供に見せるものはない。それが教育の本質ではあるまいか。
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