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2021年07月15日20:14

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【映画】『Mr.ノーバディ』

さえない中年男のハッチ・マンセル(ボブ・オデンカークさま)は、職場では実力が評価されず、家族からも頼りない父親として扱われていた。ある夜、自宅に強盗が押し入るも暴力を恐れた彼は反撃できず、家族に失望され、同じ職場の義弟にもばかにされる。鬱憤を溜め込んだハッチは、路線バスで出くわした不良たちの挑発にキレて連中をたたきのめす。この事件をきっかけに、彼はロシアンマフィアから命を狙われてしまう。


脚本と製作総指揮を務められたデレク・コルスタッドさまの代表作である『ジョン・ウィック』シリーズは自分的には全く評価していないボンクラ映画でしたが、同じ脚本家が書いたとは思えない程伏線の張り方も回収の仕方もお見事ですし、ロシア出身の若手監督であるイリヤ・ナイシュラー監督の演出もキレキレで、何よりもハッチ・マンセルを演じたボブ・オデンカークさまが冒頭から放つ強烈な男の色香にノックアウトされました。神ドラマの一本である『ブレイキング・バッド』でのソウル・グッドマン役とも『ペンタゴン・ペーパーズ』でのベン・バクキディアン記者よりも一千倍濃い魅力を巻き散らして、とても同一人物が演じているとは思えないんです。
この映画の秀逸なところは、「人にはそれぞれの事情と言うものがある」と言うことを一瞬のカットで魅せているところでして、最初に強盗に入った二人組が実はメキシコあたりから来た密入国者(推測)で、薬缶で熱湯を沸かし、カップ麺にお湯を注いでいているシーンを映したところで、ハッチがこの家に押し入り、反撃をしようとした矢先に別室で赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。この状況下で復讐をやれるとしたらそいつは文字通り血も涙も無いクズ以下の存在でありますが、彼はそれをしなかった。
そして、追跡をするのが普通に描かれると車なのですが、今回は「路線バス」なのであります。この路線バスの運転手が黒人の女性であることも勿論ですが、うら若き女性が一人乗っていて他には深夜なので乗客が居ないところも、インフラの一環としての24時間深夜運行のバスでしたら納得が行きますし、この映画の「バス愛」は本物であると断言出来ます。「路線バス」に乗ってみて初めて見えてくる人々の営みってあるんです。それを見事に可視化しておりますし、ロシアンマフィアの金庫番であるユリアン(アレクセイ・セレブリャコフさま)が絵画コレクターで自宅にはフェルメールの『牛乳を注ぐ女』(アムステルダム国立美術館蔵)や、ゴッホの『アルルの黄色い部屋』(オルセー美術館他蔵)があって。ハッチが戦利品としてこの絵を選んだのも納得でして、個人的にはこうした映画が観たかった!絶対続編も作って下さいね!


https://www.universalpictures.jp/micro/mr-nobody
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