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2021年06月03日00:06

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東京ステーションギャラリー 福富太郎コレクション

6月1日から東京の美術館が再開した。



東京ステーションギャラリーの「コレクター福冨太郎の眼」展に足を運びました。

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福富太郎は、鏑木清方など近代日本絵画のコレクターとして有名ですが、今回の展覧会には、洋画のコレクションも出品されています。



なかでも戦争画のコーナーは、初めて観る作品ばかりでした。


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宮本三郎(1905〜1974年) 「少年航空兵」1942年 福富コレクション

飛行兵募集のポスターの原画です。
ローアングルから明るい大空をバックに、少年らしい矜持で、手招きするポーズは、飛行兵に憧れる少年を魅惑する。

発表された、1942年は2月のシンガポール陥落に湧く南方戦線の絶頂期です。
翌年、宮本三郎は「山下、パーシバル両司令官会見図」を発表します。

しかし、同年6月にはミッドウェー海戦で惨敗し、太平洋戦争のターニングポイントを迎えています。


「少年飛行兵」を観て思い出したのは、松本俊介(1912〜1948年)の「立てる像」です。

調べると二作とも1942年に発表されていました。

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松本俊介 「立てる像」 1942年
神奈川県立近代美術館


道に立つ労働者風の青年は、淀んだ空の下、街、工場を背景にすくっと立ち、彼方を見つめる意志的なまなざしが印象的です。

松本俊介は、1941年に「軍部による美術への干渉」に抗議して美術雑誌に文章を寄せています。

大戦中の同年に描かれた、大地に立つ二人の青年。
意図するところは真反対ですが、不思議な共通性があります。


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宮本三郎 「大和撫子」 1939年
福富コレクション

緑の着物と背景の暖簾(鯉の滝登り)の対比が印象的。



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岡田三郎助 「あやめの女」 1927年
福富コレクション→ポーラ美術館

エロティシズムが薫る作品です。
上気した耳の赤がなんとも官能的です。

「マダムX」のゴートロー夫人は、耳に紅を差す化粧をしていたそうですが、「あやめの女」の耳の赤は紅ではないでしょう。


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サージェント 「マダムX」 1884年
耳に注目!!



さて、コレクションの要はもちろん「美人画」です。


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鏑木清方 「薄雪」 1917年
福富コレクション

歌舞伎の「恋飛脚大和往来」(近松門左衛門)から着想した作品。

飛脚宿の養子、忠兵衛が遊女梅川と逃げる、死を覚悟した最後の抱擁。


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鏑木清方 「京橋・金沢亭」1935年頃
福富コレクション


東京京橋にあった寄席金沢亭。
行灯には、円朝・人情話の文字。
清方に画家な道を勧めた希代の落語家三遊亭円朝。
怪談「牡丹灯籠」の作者です。

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鏑木清方 「三遊亭円朝像」1930年
国立近代美術館


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渡辺省亭 「幕府時代仕女図」 1887年
福富コレクション


S字の構図、紅葉と着物の赤色を追う視線の移動。余白。
ため息が出るほど美しい。

構図は鈴木其一の「群舞図」に似てますね。

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鈴木其一 「群舞図」プライスコレクション


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池田輝方 「お夏狂乱」 1914年
福富コレクション


寛文2年 播州姫路の旅籠の娘お夏と手代清十郎の駆け落ち事件を題材にした、西鶴「好色五人女」、近松「姿姫路清十郎物語」の「お夏清十郎」を画く。

狂乱の果てに座り込むお夏。

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松本華洋 「殉教(バテレンお春)」 1916年
福富コレクション


「爛漫の桜の下、荒筵の上に鎖で繋がれた美人という洪水は、いかにも大正時代好みの際物的な趣味のものである。」と福富太郎が書いています。


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松浦舞雪 「踊り」 1931年
(写真ネット借用)
福富コレクション


阿波おどりを描いています。
踊る少女のポーズ、三味線を弾く女。
作者の松浦舞雪は、北野恒富の周辺で画業を行っていたとのこと。

なんとも可愛らしい作品ですが、少女の寂しげな表情が気になります。


まだまだ、素晴らしい作品が目白押しです。

6/27(土)まで、ローソンで入場30分前までの時間指定券が買えます。
一般1200円也

「福富太郎の眼」の確かさと、絵画への愛に納得する展覧会。


強くお薦めします。
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