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空港で接客業をしていた頃なので、今からもう30年も前の話なのだが、ある日突然同僚が
『おい、ラウンジに田村正和が来てるぞ!』
と言ってきた。
『へぇ〜、どんな感じだった?』
と訊くと
『田村正和はね、田村正和だったよ』
との理解に苦しむ答え。
それを聞いた1人が、どれ俺も見て来よう、とラウンジに行ったのだが、彼も帰って来るなり
『ホントだ!田村正和は田村正和だったわ』と、やはり意味不明の同意。そして『だろ〜!?』と2人で妙に盛り上がってる。
コイツら一体何を言ってるんだ?不思議に思い、じゃ〜俺も見てみるか、と俺もラウンジに行ってみた。
『オーラ』みたいのがあったかどうかはよく覚えてないが、彼はすぐに判った。
眉間に皺を寄せ、八の字眉毛の困った様な表情を浮かべ、頬杖をついていた。脚を組んで椅子に座っていたが、その椅子はクルクルと回転するタイプで、左右にキーコキーコと小刻みに揺れていた。
『物憂げに何かに浸ってるオレ』
とでも題名をつけたくなる様なナルシスト全開っぷりに、吹き出したくなるのを我慢し俺は同僚達の元に戻って言った。
『マジだ!田村正和は、ホントに田村正和だったわ』
『だろ!?あれこそ「ザ・田村正和」だよな!』
そう言うと堪え切れず、皆で爆笑した。
テレビ画面の中とプライベートが全然違う芸能人もいれば、全く同じ人もいる。彼は間違いなく後者で、テレビで見たまんまのダンディであった。
まぁ、ダンディ過ぎて、何か笑えたんだけど。
田村正和は、あの阪東妻三郎の子供として生まれ、しかもハンサムな俳優3兄弟の1人。
つまり、生まれた時から既に『田村正和』だった訳だ。
そして生涯を『田村正和』として生き、最後も、世間に後ろ姿を見せる事無く、人知れず去って行った。
さて、今夜は古畑任三郎でも観ながら、彼のご冥福をお祈りする事にしよう。
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