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2021年05月13日01:16

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市長のワクチン順番破りで検察が捜査

 2月22日に、旧東独ザクセン・アンハルト州のハレ市役所に、検察官と係官たちが予告なしに現れた。彼らはべアント・ヴィーガント市長の執務室に踏み込むと「職権乱用と横領」の疑いで家宅捜索を開始し、書類を押収した。
 ドイツでは連邦政府の政令により、コロナワクチンの予防接種の順番が厳密に決められている。現在は80歳を超える高齢者、基礎疾患を持つ高齢者、コロナ病棟などで働く医療従事者に対して優先的に予防接種が行われている。高齢者を最優先にしたのは、万一ウイルスに感染した場合に,重症化したり死亡したりする危険が高いからだ。
 リスクグループに属する人の予防接種が済み次第、対象は年齢が70歳以上の市民、60歳以上の市民に拡大されていく。
 したがってメルケル首相やシュタインマイヤー大統領ですら、まだワクチンを投与されていない。他の市民と同じく、自分の順番が来るのを待っているのだ。
 ヴィーガント市長は64歳。リスクグループに属していないにもかかわらず、1月17日にワクチンの予防接種を受けた。彼の側近など市役所の他の幹部たちも、ワクチンを投与された。市長はその理由について、「保健所からワクチンが余っており、その日の夕方にはワクチンを廃棄しなくてはならないと伝えられたから」と説明している。彼は「これくらいのことで、検察庁が私の執務室を捜索するとは、大袈裟だ」と反発している。つまり、どうせ有効期限が切れるワクチンなのだから、打ってもいいではないかという論法である。
 だが彼の行動が政令違反であることは、間違いない。ザクセン・アンハルト州政府の地方自治体局は、ヴィーガント市長に対する懲戒処分の手続きを始めた他、辞任を求める声も上がっている。
 ドイツでは、欧州連合(EU)の注文の遅れやメーカーの生産が滞っているために、ワクチンが不足している。このため、一刻も早くワクチンを打ってほしいと思っているのに順番が回ってこない人も多い。
 そうした人々を差し置き、地位やコネを利用して他人よりも先にワクチンの予防接種を受ける人がいるのだ。「政治家は重職に就いているのだから、市民よりも早く予防接種を受けるべきだ」という理屈は、ドイツでは通用しない。
 ドイツは「法の前の平等」という建前を重視する国である。政治家が「つい出来心で」と謝罪するだけでは、市民が納得しない。その意味で、この市長が厳しい処分を受けるのは避けられないだろう。
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 


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