mixiユーザー(id:16679088)

2021年04月15日11:26

27 view

石井遊佳著『百年泥』を読んだ感想

第158回芥川賞受賞作である。

それがラジオ番組で紹介されていたのを聴いて、あまりにも荒唐無稽な内容に、芥川賞受賞との関係が知りたくなってすぐにネット通販で中古を購入した。

ラジオ放送の2日後の昼には手元に届いて、夕方までに一気に読み終わった。

ひょんなことから多重債務をかかえた日本人女性が、その返済のためにインドのIT企業で日本語講師をすることになり、その最中に百年に一度とも言われる洪水に見舞われたことから起こる物語だ。

それが、水が退いて人々が泥を片付ける中で、そこにあるはずのない物や、年月が経って生きているはずのない人を掘り起こすという現実味のない話と日本語教室という現実の話が混在して描かれているあたりが芥川賞の対象たりうる部分なのかと最初は思った。

でもさすがにそれだけではなかった。

泥の中からは主人公の女性や受講生の若者の『生い立ち』に関わる重要なものが現れる。

とりわけ育ててくれた父母の苦労と無念の思いが長い間の疑問から解放されて理解と感謝に変わっていく様が素晴らしい。

ああ、このあたりが芥川賞なんだなあと納得した。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する