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2020年11月24日12:26

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くたばれ!リア充ども!  ショートショート

「Tくん。ご飯。置いておくわね。」
母が階段を下りる音を確認してから、部屋の外に置かれた夕食を部屋に入れる。
どこか階段を下りる母の足音のリズムがおかしい気がする。
僕がこの部屋に引きこもってから30年にもなる。
両親を恨んだ事もあったが、両親を恨んでも仕方がないと納得するには充分の時間が過ぎた。



僕だって働いた事もある。恋をした事もある。
友達だっていなかったわけではない。それが友達と言えるかどうかは分らないが。
僕にだってそれなりの日々はあったのだ。
それもこれも。いつもどこかで誰かが。僕の邪魔をした。
いつだって僕は一人打ちのめされて、気がつけばこの部屋から出られないでいた。



「今の自分が惨めではないのか?」と嘲笑う奴は多くいるだろうが。
僕は今。そいつらを嘲笑うのだ。
何故なら僕は社会への復讐に成功したのだ。
「引きこもり」と世間は僕をバカにするけど。
誰も僕をバカにする資格なんてありはしない!



くたばれ!リア充ども!



2020年。
世界は新型コロナウイルスが猛威を振るった。
日本においては何故か欧米諸国のそれと違って感染は緩やかだった。
未知のウイルスに政府も学校休校などの処置を行ったが、想像以上に増えない感染者数に国民は段々と慣れてきた。



僕は。考えた。
このチャンスを無駄にしてなるものか。
今こそ、迫害されてきた「引きこもり」に光を当てるのだ!と。



僕は。直ぐに動いた。
このパソコンの向うには無限の世界が広がっているのだ。
「日本ひきこもりの会」を立ち上げ、日本中の引きこもり達と連係を訴えた。
何故もっと早く動かなかったのか?と思うほどに、引きこもり達は実は人とのつながりを求めていて。
その上、引きこもり達はパソコン技術に長けていて、「日本ひきこもりの会」は瞬く間に百万人を越える規模となった。


スローガンは「打倒!リア充!」だ。

そのスローガンに共鳴した引きこもり予備軍も賛同し、「日本ひきこもりの会」は百万人規模の仲間を得たのだ。
僕らは、早速、その組織力と技術力で社会を動かし始めた。


利益の為に新型コロナの恐怖を煽るマスコミや、保身の為に新型コロナの恐怖を叫ぶ医療専門家を応援し。
その都度、拍車をかけるようにSNSでコロナの恐怖を拡散させた。
百万人規模の「日本ひきこもりの会」のメンバーが声を上げ。
世論は簡単に新型コロナの恐怖一色になった。
中立を守っていた政府も社会の言動に忖度せざるを得ず、緊急事態宣言を発動し、日本はロックダウンとなった。



ざまあみろ!リア充ども!
たいした感染者数ではなくとも、新型コロナへの恐怖から社会は完全に止まった。
リア充どもも全てが今やひきこもりなのだ。
今や、ひきこもりが世の中のマジョリティーとなったのだ。



僕は社会への復讐に成功したのだ!!!




「Tくん。食器。持って行くわね。」
食べ終わった食器を持った母が。


ガチャン!!!

。。。。。

母が倒れた音がした。。
母が部屋の外で倒れた。。。

恐る恐る戸を開けると、母は下腹を押さえて苦しんでいる。

「救急車を。。救急車を。。。」と弱弱しくつぶやいている。



僕はあわてて119番に電話すると。


「現在。病院は新型コロナウイルス対応で、救急車輛の出動を制限しております。しばらくしてからおかけ直しください。」
とナビダイヤルは切られた。








■GoToイート、ポイント利用期間延長も 補償には慎重
(朝日新聞デジタル - 11月24日 11:59)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6317593
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