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2020年10月03日22:47

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相撲解説者

大相撲秋場所は、波乱・大混戦の展開が続いた結果、正代と翔猿の一騎打ちへと絞られ、最後は正代の優勝、同時に大関昇進と、実に面白かった。
ここで相撲評を述べて行くとダラダラと長くなるのでやめておくが、今回は、ちょっと感動した相撲中継の解説者の話をしたい。

現在、まだまだ在宅ワークが多いため、何日かBSで幕下の取組からみたのだが、そこに出ていた音羽山親方の朴訥で誠実な語り口が実に良かった。
音羽山親方は元幕内力士の天鎧鵬。2020年2月1日付けで音羽山親方を襲名したとあるから、解説者としても日が浅いが、この場所からはじめて十両の解説を勤めることになったといい、「緊張していますがよろしくお願いします」と、最初はちょっと頼りなさげで、みているほうが緊張してしまった。
話し始めると、しゃべりはそんなに上手ではないのだが、個々の取り口に対して極力丁寧に解説しようという姿勢がみえるし、取組を行っている力士の長所をみつけては評価する。不調でいけてない力士にも、「この経験が次に生きる」とか、「ここを改善すれば絶対によくなる」とかプラスのことを極力しゃべる。
この姿勢が、なんとも聞いていて心地良く、親方の解説を聞くのが楽しみになった。
まあ相撲の解説者(その多くは親方衆)は、ほとんど力士の批判をしない。これは公共の電波で同業者の悪口をいうと色々と問題があるというのもあるだろうが、彼らの多くは角界で実績を積み苦労してきた人たちなので、ファンのように無責任に勝った負けたの結果で中傷したりとかはしないのだろう。
辛口といえば、北の富士がそうだが、北の富士の場合はあの喋り方がスタイルになってしまっているし、相撲好きのじいさんがボヤいているっていう風がよい。それに辛口の中にも力士への愛情が感じられる。
北の富士とセットでよく呼ばれる舞の海は、喋りが格段にうまく、解説もわかりやすいし、通り一遍のことだけではなく、独自の考えを忌憚なく述べる個性がある。舞の海は、「専門の」解説者なので、まあそりゃー他の親方衆とは違いますわな。だが、聞いていて一番飽きずに面白いのは、格段に舞の海。
あと誰もが意外に思ったのが、荒磯親方。元・横綱稀勢の里である。稀勢の里時代は、寡黙で多くを語らない昔かたぎの力士。インタビューなんかもいつも拍子抜けだったが、親方になってから解説者デビューしたら、「これがあの稀勢の里か!」というくらい解説がうまい。
話の展開が理路整然としているし、何より声質が良い。若干早口だが、よどみなく一気にしゃべるので、内容が理解しやすいし、時折、自分自身のエピソードも交えてユーモラスに語るところなんざ小憎い。そう、皆、稀勢の里のエピソードやあの時、稀勢の里が何を考えていたのかを知りたいのだ。それを存分に満たしてくれる。
例えば、朝乃山の取組前について(優勝を左右する大事な一番の正代戦)、朝乃山は右に差して前へ出るという型が出来上がっているから、もう心は決まっているでしょう、という。
だが、稀勢の里も左四つという武器があって磐石の型があったのだが、それでも魔が刺すときがあったという。というのは直前で自信がなくなり「変化すればうまくいくんじゃないか?」とか邪心がよぎったという。それを乗りこえて自分を信じるかどうか、その精神力の戦いだ、と。これなんか、もう稀勢の里くらいのレベルじゃないと言えないだろうな。
その時は謙遜気味に「結局何が正解かわからないまま現役が終わってしまったのですが」と笑っていたが、実況に「いえいえ、それでも横綱までのぼりつめたんですから」と返されていた。
反対に、解説が下手だったのが、辞めてしまった貴乃花親方。
まず声が通らない上に、ほとんど実況に聞かれたことしか答えない。力士への愛情も感じられない。まー、大横綱まで登りつめた人だから、自分にも他人にも厳しいんだろうし、口ではなく実績が全てだという人だから、解説下手でもいいんだが・・・貴乃花親方は解説に呼んではいけない人の1人だったと思う。
例えば陸奥親方なんぞも、しゃべりは下手で、緊張しているのは丸分かりだが、誠実な人柄は伝わってくるし、そんなに不快ではない。貴乃花親方との違いを説明するのは難しいが、何かが違うんだろうなあ。

こうやって解説者の観点で相撲中継をみると、また一味違った面白さが出てくる。
それにしても親方衆、なんだかんだいって、話うまいですわ。というか、実際に現役力士で幕内、少なくとも十両までは登りつめて何場所か勤めただけはあり、現役時代は数々の苦労を乗り越えて上位の位置に至ったから、それまでに様々な苦悩を抱え考え詰めたんだろう。それ故に、こと相撲に関しては自然と言葉が出てくるし、それなりの説得力を持っている。
こうしてみると、我々技術屋にも参考になるべき点があると思われる。
話下手で、人間関係でつまずいている若者なんかから愚痴や相談を聞かされるが、僕のアドバイスは、「余計なことを考えずに技術を磨いて高めていけ」ということ。
誤魔化さずに、出来ないことは素直に認め、出来るように努力する。
その過程で考え悩んだことというのは、他人と会話するときに、自然と言葉になって表れる。
その言葉に嘘はないから、他人からも信用され、それが社会人としての生き方、人間関係の向上にも繋がっていくのだ。
その場を取り繕おうとして、口先で切り抜けたり、お調子もので他人にうまく取り入って生きてきた人は実際にいる。それでそこそこの企業の部長にまで登りつめた人も実際にいるが、そんなものは、非常にもろい立場で、うまく行っているときは良いが、一旦つまずくと坂道を転がるごとく転落していく。
最後にモノいうのは磨いてきた技術だ。失敗を繰り返し煮え湯をのみながらなんとかやってきて身につけた技術は、自分を裏切らない。
自分が第一線を退き、部下や現場を管理する立場になったときに、その言葉は説得力をもって皆に受け入れられるのである。
それが、話下手で、面白みのない内容であったとしても、愚直に忠実に発する言葉は、誰よりも説得力があり、信頼されるものである。

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