『いだてん』の再放送が終わった。
２回目の方がより面白く観られた。細かい繋がりも確認出来たし。
最終回、ブルーインパルスが五輪を描き、そのBGMとしてテーマ曲が流れる。初見時もそうだが、今回もここでボロ泣きした。
小松君が学徒出陣で出兵する雨の神宮競技場。不条理な万歳。それに重なるように、スカッと晴れた空のもと、日本人選手団に送られる心からの幸せの万歳。この対比にも泣く。
いだてんの本当の主人公は、実は四三でも田畑でもなく、名もなき市井の人々なんじゃないか？とも思う。その名もなき市井の人々にも人生は確実にあったわけで。小松君、シマちゃん、小梅さん、清さん、増野さん、小松君、五りん…彼らも又、主役。
小松君をある意味マヌケ死にする宮藤氏の脚本に、初見時も「ああ、彼はやはり大人計画の脚本家なのだな。」と思った。大人計画の芝居ではよく出て来る設定ではある。本筋と無関係な部分で死んで行く滑稽さや切なさや理不尽さ。この場合、本筋は戦争。小松君は、戦争では生き残るが、『富久』を聴き、堪らず走り出し、ソ連兵に殺される。このマヌケ切なさ。それを大人計画の芝居ではなく、大河ドラマでやるんかい！と。
太賀氏の演技も良い。走ってる時、小松君、ちょっと嬉しそうな顔をするの。もう、自分は死ぬと分かってるのに。走れて嬉しいんだよね。最後の最後、ギリッギリの生であっても嬉しい楽しいと感じる人の滑稽さ、切なさ、素晴らしさ。撃たれる時も、ちょっと恍惚とした表情になる。
この回が、本放送時１番視聴率が悪かった回らしいのだが、私には神回となった。監督は大根仁氏。てか、大根監督の回が、人見絹枝回といい、関東大震災回と言い、まーちゃん失脚回といい、軒並み神回で驚く。もう、テレ東深夜のドラマには戻ってきてくれないんですか、大根監督？とも思う（笑）。
いだてんの冒頭は、東京03の角田氏演じるタクシー運転手から始まるが、この時点で、角田氏は目立つように演出されていた。でも、そのコトが効いてくるのって、後半も後半。この運転手は、聖火調査隊となる。
角田氏は、「又、出て頂くかも知れません。」と言われ、後半に又呼ばれたので、てっきりタクシー運転手役で又出られるのかと思ったら、「組織委員会に入ります。」と言われて、凄く吃驚したらしい。「意味分かんないんですケド！」状態だったみたい（笑）。
「タクラマカンって意味知ってる？帰れない場所または死！だってサ！教えておけよぉ〜！！」の言い方が、まさに東京03の角田氏の言い方で、私は大笑い＆大好きだ。何処かのタイミングで、飯塚氏がツッコミで出てくるんじゃ？とも思った。
満州居残りの志ん生と圓生も面白かった。これ、スピンオフで観たい。
マリーさんの謎。全部外れるマリーさんの占い。でも、最後まで観ると、マリーさんは、実は最初から全てを視（み）ていたような気もする。ある意味この物語における予言者でもあり、人外のような気もする（全く老けないしね）。最後、晴れの予想のタロットの逆「大雨ね。」を言い、一世一代の天候マジックを行う。あの時のまーちゃんの顔も好き。「え？！」の顔。マリーさんの「分かってますよ。」の顔。
おりんさんが志ん生の生死で悩んでいた時、「日本橋によく当る占い師がいるから、そこで視て貰え。」と言われ、マリーさんのところに行くから、きっとマリーさんは、きちんと当たる占い師なんだろう。
何故かまーちゃんがいる時だけ外れるんじゃなかろうか？何か変な電波出してんのか、まーちゃん（笑）。
鬼の大松監督の造形も良かったと思った。大松監督が「選手の人生を犠牲にしてしまう、それで良いのか大松と！」と悩むのは、インパールの生き残りだからかな…とも思う。上司の命令で死に行く仲間達。それを見ていて「これはおかしい。絶対おかしい。」そう思っていたのかな？と。
でも、これは戦争ではなくスポーツ。シマちゃんの明治から受け継ぐ女子スポーツは、いまや自分の意思でやめるコトも出来る物になっていた。
紀行の元東洋の魔女の「誰の為でもない、自分の為にやったんだ。人の為に出来ますか？」の問い。心に残る。
徳井さん演技上手かったな。大松監督にも似てた。
似てたと言えば、岸さん役の岩松了氏が、そっくり過ぎて爆笑する。あれ、似てる人を配したのか？増子さんの黒澤監督も、三谷さんの市川監督も何か似てたしな。
閉会式のシーン。黒人、白人、黄色人種、資本主義、共産主義、発展途上国、先進国、様々な宗教が入り乱れてのグッチャグチャな閉会式。本物の映像も使うし、ボロ泣き。ここでまーちゃんの夢が叶う。まーちゃんのオリンピックは皆のオリンピックになる。
あれ、実況してたアナウンサーは突然のコトでマジで大変だったらしい。「オリンピックは平和であります。」あの名アナウンスも思い出す。
最後は、おりむぴっく噺らしく、たけし氏の志ん生で締める…のだが、足の悪い志ん生が立っている。きっとあれは、志ん生ではない。私は、あの幕の外と内とで空間が分かれたと思っている。幕の内は、我々視聴者側。あれはたけし氏本人ではないか？と思う。たけし氏本人の「なーんてね。これにて噺はおしまい。」なのかな？と。
と思ったら、ツイッターに「あれは、年老いた五りんなんじゃないか？」という意見があり、なるほど！と思った。この場合、「噺はまだまだ続くよ。ほらほら、東京五輪、もうすぐ来るんじゃないですか？」の意味なのかも。
たけし氏に半身不随の役をやらせたり（凄みが半端ないの。本当に半身がちょっと…でしょ？たけしさん）、「潮時」という言葉を使わせたり。意地悪いなと思い、ああ、やっぱり宮藤氏は大人計画の人だな…とも思う。
本当なら、来週から東京オリンピックのはずだった。
今はコロナ禍で、正直、中止か延期か分からない状態。現代のまーちゃんや、嘉納先生のような人が水面下で色々やってるんだろうか？
もし来年、オリンピックをやるのなら、又再放送をして欲しい。
私はその度に、誰の為の何の為のオリンピックか考えるんだろう。
そして、オリンピックは、世界の“ペ”の祭典であって欲しい。例えそれが綺麗事だとしても。
最後に、そして私は美川君がどうなったかが気になる！（笑）
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