欧州コロナ通信 321回 2020年7月15日
欧州に住んでいるからわかるのだが、今年3月後半〜4月にかけてコロナ危機が最もひどかった時期は、本当に恐ろしかった。
まるでウイルスに人類が包囲されているかのようだった。
当時イタリア、フランス、スペインの状況は酸鼻としか言えなかった。
イタリアやフランスの一部の病院では人工呼吸器が足りなくなったので、ドイツの病院が重症患者をヘリで空輸して、受け入れていた。
これらの国々の一部の病院では、高齢者や基礎疾患のある患者を集中治療室に受け入れないトリアージを行っていた。
イタリアのベルガモでは、墓地に遺体を埋める場所がなくなったので、遺体を軍用トラックに載せて、他の町へ運ばなくてはならなかった。
当時の日本がこうした惨状を経験しなくて済んだのは、「幸運」だった。本当に良かったと思う。
だが今日本では感染者が増える傾向にある。欧州のメディアも日本の感染者増加について伝え始めた。
これまでウイルスの封じ込めに成功していたイスラエルでも、感染者数が急増している。
あの時点で「日本型モデルの強さ」について語るのは、あまりにも早過ぎた。
日本の政府関係者の大半は、3月後半の欧州の恐ろしい雰囲気を体験していない。
だから彼らは、パンデミックの本当の怖さを、まだ知らない。
過去のパンデミックは、2〜3年は続いた。
我々は、まだパンデミックの初期の段階にいる。
初めの成果の上に胡坐をかくことは、禁物だ。
いわんや、この時期に政府が国内旅行の促進キャンペーンを行うなど、論外である。
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