去年11月に書いた原稿です。
ある大手電力会社の「グリーン化」
ドイツ最大の電力会社RWEは、今後21年間でグローバルな電源ポートフォリオからのCO2排出量を正味ゼロとし、経営の中心を化石燃料から自然エネルギーに移す方針を打ち出した。
欧州経済界で急速に進む、非炭素化の一環だ。
RWEは2012年から去年までにCO2排出量を6000万トン(33%)減らしたが、2030年には70%削減し、2040年には正味ゼロをめざす。
同社は2030年までにドイツのインデン褐炭採掘場を閉鎖し、オランダで脱石炭を実行する。
ドイツでも2038年までに褐炭と石炭発電を取り止める。
今年8月末のRWEの設備容量(発電キャパシティ)の内、約67%が褐炭・石炭などの化石燃料だが、今後は再生可能エネルギーを拡大する。
同社の再生可能エネルギーの設備容量は現在950万キロワットだが、洋上風力発電基地を順次稼働させることによって、2年後には1210万キロワットに増やす。
同社は今年中にライバル企業エーオンとイノジーの再生可能エネルギー事業を取得するが、「これによって我が社の再エネ設備容量は、スペインのイルベドーラなどに次いで欧米で第4位になる」と主張している。
同社は経営方針の柱として「持続可能性の高い生活を守るために、グローバルな気候保護目標を順守し、エネルギー転換を支援するために、再エネと技術革新に焦点を合わせる」と説明。
ただし電力の安定供給を確保するためにガス火力発電所は維持する。
同社は欧米だけではなく、アジアでも再生可能エネルギー事業を展開する方針で、今年10月に東京にも事務所を開設した。
同社は我が国で洋上風力発電の拡大を目指すものと見られる。
また同社は今年9月に「新しいRWE」というイメージキャンペーンを開始。
子どもや若い女性の背景に風力発電プロペラを映し込んだ写真をホームページや新聞広告に使い、再エネを主力とする企業に生まれ変わることを、消費者にアピールしている。
会社のシンボルカラーにも緑色を選び、エコロジー企業らしい印象を演出している。
RWEは、1898年に炭鉱の町エッセンで石炭火力発電会社として産声を上げた。
そのような老舗が、自然エネルギー中心の企業に変化するということは、ドイツ政府のエネルギー転換がいかにこの国の電力業界を変えつつあるかを如実に示している。
日本の電力業界に比べると、ドイツ電力のグリーン化は、ほぼ20年先を進んでいる。
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ
http://www.tkumagai.de
ログインしてコメントを確認・投稿する