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2020年06月23日21:16

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この踊り方、売れますか? 再現データ、サイトで取引

この踊り方、売れますか? 再現データ、サイトで取引
クセの時代(下)
スタートアップ ネット・IT
2020/6/23 11:00
日本経済新聞 電子版

熱心なファンなら、ダンサーやスポーツ選手の動画がたとえシルエットでも、誰だか分かるだろう。長年磨き上げてきた体の動きには、その人独特のクセがあるからだ。動きの解析技術の発展によって、高いスキルを持つ人の振る舞いをデータ化し、売買するビジネスが胎動している。
新型コロナウイルスの影響で3月の開催が中止となった米国のイベント「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」。このテクノロジーと娯楽の祭典で、電通などが発表予定だった構想がある。人の動きを表すモーションデータを記録・取引する「モーションバンク」と呼ばれる事業だ。






電通の「モーションバンク」は専用の服でスポーツや踊りの動きを測定(上)。データ化して他者が継承できるようにする

民族の舞踊やスポーツ選手の動きを専用の服で測定し、取得したデータを一括で管理するという野心的な取り組みだ。「失われつつある文化の保存・継承や、アスリートのトレーニング支援にもつながる」(電通の大瀧篤プランナー)
連携するのは東大発スタートアップのゼノマ(東京・大田)だ。アシックスと組み、着るだけで野球の投球フォームを解析できるセンサー付きシャツを開発している。
電通は今後、モーションデータを提供する協業先を募る。高度な技術を残したい人と、それを習得したい人が売買できる仕組みの構築をめざす。「今後1〜2年でサイトの立ち上げを図りたい」(同社)。歩行パターンと病気のリスクの相関関係など健康データの取り扱いも検討していく。
すでに動きのデータを事業化した企業もある。スタートアップのマイクロエンタテインメント(東京・港)は4月、ダンサーの動きを著作権登録し取引するサービス「ジェスレック」を始めた。
■身のこなしを登録
踊りの動画を人工知能(AI)が分析し、細部の身のこなしに至るまで正確な位置関係を推測。ダンサーは振り付けや表情などを著作権としてサイトに登録する。イベントや動画で踊りたい人や、ゲームのキャラクターに同じ身ぶりをさせたい人が、同サイトを通じて利用料を払う。
妻がダンサーだという小平託最高経営責任者(CEO)は「体力勝負のダンサーは引退後のキャリアパスが少ない。振り付けに関する新たな市場をつくりたい」と話す。日米のダンサー約100人と契約交渉中だ。
著作権法は踊りも保護対象としているが、同法に詳しい桑野雄一郎弁護士は「ダンスの保護は音楽などと比べてあまり活発ではなかった」と指摘する。振付師などが権利を主張してこなかったのに加えて、動きの詳細記録やデータ管理の困難さが背景にあるという。
模倣された際、動きが完全に一致していることを証明する手段も乏しかった。マイクロエンタテインメントの小平CEOは画像解析の進歩がブレークスルーになり、振り付け管理で「日米で4億ドル規模の市場が生まれる」と試算する。
2019年にはTBSが放送したアニメでキャラクターが踊る動きが、著名ダンサーによる既存の振り付けと酷似していると指摘された。番組の製作委員会は公式ツイッター上で「著作権に対する意識が十分でなく、ご迷惑をおかけしたことをおわびします」と謝罪。「振り付け協力」としてダンサーの名前を記載する措置をとった。
近年は「踊ってみた」動画などネット上で踊りを披露する人が増えている。トラブルを防ぐためにもデータ管理のニーズが強まる可能性は高い。
■故人の動きも復活
最新技術は故人のクセすらよみがえらせる。映像制作のデジタル・フロンティア(東京・渋谷)は、CGで本物に見える人間を表現する「デジタルヒューマン」プロジェクトを進めている。
17年公開の映像では、勝新太郎さんの「座頭市」に挑んだ。勝さんを精緻に再現した頭部の模型を使用。演技は本人の過去の映像を分析したほか、役者に勝さんの演技を再現してもらってデータを取得した。妻の中村玉緒さんからも本人と勘違いされる出来となった。


デジタル・フロンティアは故・勝新太郎さんの演技を再現した
「ただ歩いたりご飯を食べたりする動作でも役者の『クセ』は出る。優れた表現のために様々な名優の動きをモーションデータでとりたい」(豊嶋勇作専務)。同社は現役のアーティストの動きを取得する取り組みを進めている。
自分の仕事がデータに取って代わられることを嫌がる著名人も多いというが「人の演技は年齢や経験によっても変わる。昔の自分と共演できるといった可能性を説明し、今後もデータを取得していきたい」(同)と可能性を追求する。
■そっくり映像、落とし穴も
 ミック経済研究所(東京・中央)の推計によれば、機械学習を使った画像認識ソリューションの市場は2023年度に1500億円と19年度の13倍超に急成長する見込みだ。現在は検品・検査などが中心だが、ここにエンターテインメント分野の画像技術が大きく積み上がるかもしれない。
 個々人の動きやクセを再現する挑戦は、時に反発も生む。例えばNHKの企画で昨年末の紅白歌合戦に登場した「AIひばり」だ。遺族の協力を得て、歌手の故・美空ひばりさんの姿や声を再現した。「新曲」披露に喜ぶファンもいた一方で「死者への冒涜(ぼうとく)」との批判もあった。
 優れた映像技術は「ディープフェイク」と呼ばれる偽動画も生んだ。しゃべり方やしぐさまで著名人そのもの。しかし、その内容は事実無根だ。オバマ前米大統領の偽スピーチ映像などは世界中にショックを与えた。
 新たな可能性が広がる一方で、負の影響との上手な付き合い方が求められる。
(花田亮輔)
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