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2020年04月30日19:42

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茜屋時間 令和2年 令月その356回

 大学生の四年間は 祝祭日と大学の休み以外のほとんど茜屋へ出向いた そして父の仕事を手伝いながらその後の幾年か 週に一度くらいの感覚で茜屋に通い続けた この頃に出会ったのがMさん すでにおじいさんであった 高島屋の時計売り場にいて退任後 茜屋の店長になった 最初はお互いお客同士で 意外に話があったようだ 腕時計はいつも見るからに高級な時計をしていた そしてその左腕には手首に包帯が巻かれておりその意味を知ったのは近年であった

 今宵の音楽は ブダペスト弦楽四重奏団ボックス(20CD)
 Disc2
 ●ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番 Op.18-4
 ブダペスト弦楽四重奏団(ロイスマン、シュナイダー、クロイト、シュナイダー)
 録音:1962年3月30日、クーリッジ・オーディトリアム

 ●ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番 Op.18-5
 ブダペスト弦楽四重奏団(ロイスマン、シュナイダー、クロイト、シュナイダー)
 録音:1943年11月1日、クーリッジ・オーディトリアム

 ●ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番 Op.18-6
 ブダペスト弦楽四重奏団(ロイスマン、シュナイダー、クロイト、シュナイダー)
 録音:1960年11月11日、クーリッジ・オーディトリアム

 ベートーヴェン の弦楽四重奏曲の全曲で 満足すべき演奏に到達すると云ふことは ある意味究極を意味しているのだはなかろうか 指揮者にとっての九つの交響曲 ピアニストにとっての三十二曲のソナタ と同じように

 今宵二枚目の音楽は ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調
 オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 合唱団
 オーセ・ノルドモ・レーヴベリ(S)/クリスタ・ルートヴィッヒ(Ms)/ワルデマール・クメント(T)/ハンス・ホッター(Br) といふ声楽人から見て1957録音と思われる ベートーヴェン が12月生まれだから この曲が12月に多く演奏されるわけではない ロマン・ロランは 「ベートーヴェン の一生は嵐の1日に似ている」 と言いている 余談だが かれのかいた「ジャン・クリストフ」は大作長編だが 一読の価値はある ベートーヴェン の一生は激しい苦難の連続である 若きに母を失い 大酒飲みの父親の英才教育 少年の時から すでに一家を支えねばならなかった そして二十代の半ば 彼の前に音楽家としての洋々たる未来が開けようとしていた時 大事な聴力を奪われてしまった

 茜屋にMさんが店長として迎えられて 久しく週に一度程度の茜屋通いは多分十五年くらい続いたのだろうか カップが その時からウェッジウッドからローゼンタールに変わった ソーサーの裏側に魔笛の音符が書かれてある 多分パパゲーノの歌 これは Mさんが自宅から持ってきたもので ほんの少数の人にしか提供しなかったようだ 晩年は私専用になったが 途中でソーサーが割れて 白地のソーサーにカップとなったが 音符は書かれてあったように記憶する 相変わらず砂糖もミルクもなしで飲んでいた とっても濃い珈琲

 江戸の俳人は 目に写る青葉の美しさ 耳に聞くホトトギスの声 味覚の初鰹 と表現したが 香りがないいのは寂しい

   橘かおる朝風に高く泳ぐや鯉のぼり

 新茶の香りも良し

   駿河時や花橘も茶のにおい  芭蕉

 わが郷は橘の里である 近く橘高校と云ふのがある
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