下記は、2020.2.6 付の 産経抄 です。
記
明治の美術界の先覚者、岡倉天心は日露戦争の最中、米国に滞在していた。羽織はかま姿で、街を歩いていると、現地の若者が無遠慮に話しかけてきた。
▼「君たちは、何ニーズか? ジャパニーズか、それともチャイニーズか?」。天心はすかさず、切り返す。「あんたこそ、何キーだ? ヤンキーか、モンキーか、それともドンキー(ロバ)か?」。世界に向かって日本文化の価値を訴え続けた、天心らしいエピソードである。
▼ロバといえば、米国の二大政党の一つ、民主党のシンボルでもある。由来は第7代のA・ジャクソン大統領までさかのぼる。1828年の大統領選で、共和党側から「ロバ」とからかわれたのを逆手にとって、ポスターに使ったのが始まりだ。
▼さらに半世紀後、漫画家のトーマス・ナストが、ロバのイメージを定着させた。イソップ物語にある、ライオンの皮をかぶって森の動物を怖がらせるロバを描いて、民主党を風刺した。今年11月の大統領選に向けて、その民主党から本物のライオンのような強力な候補者が現れるだろうか。
▼候補者指名争いの初戦となるアイオワ州党員集会には、米国だけでなく、世界の注目が集まった。ところが、集計システムのトラブルが大混乱を引き起こす。結果の発表を待たずに、候補者たちは第2戦の予備選が行われる東部ニューハンプシャー州に向かった。異例の事態で、民主党は出はなをくじかれた。
▼対する共和党は、トランプ大統領が指名を獲得するのは確実だ。ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判でも無罪となりそうだ。4日夜の一般教書演説では、上機嫌で米中合意などの実績を誇示していた。こちらは、共和党のシンボルのゾウさながらに余裕綽綽(しゃくしゃく)の体である。
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20200206/0001.html
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