開演して佐渡さんがマイクを手にお話し。佐渡さんとＰＡＣは演奏旅行中で明日は富山だとか。
おかげで冒頭の曲の概要が理解できたがウェルセンバーグのHeroic Dreamscape Fantasyは
プログラム最後の「英雄」の終楽章が用いられている。一昨年、尾高忠明さんと大フィルが
ベートーヴェンの交響曲全曲演奏会をやり、その時に知った事だが、この楽章の主題は
バレエ音楽「プロメテウスの創造物」Ｏｐ．43の終曲が転用されている。この主題を様々に変奏
して本楽章は展開されるが、ウェルセンバーグは、この主題や変奏を引用して自らの音楽を
展開していく。このような構成になった経緯をウェルセンバーグは「作曲の課題が、
ベートーヴェンの主題を用いた作品」であった、と語る。オーストリアでは夏にグラフェネッグ
音楽祭が行われており、佐渡さんが音楽監督を務めるトーンキュンストラー管弦楽団がホストを
務めるそうだが、2016年ワークショップが契機で本曲は生まれた。同年９月５日に同地で初演。
改めてウィーン楽友協会大ホールでも佐渡さんの指揮で演奏された。
「今回が日本初演です。厳密には昨日、ですが。」(佐渡さん)
因みに本公演のコンマス、キリル・マキシモフさんはトーンキュンストラー管弦楽団
第１コンサートマスターである。
それにしても大編成。木管楽器は２管だが、ホルン４、トランペット３、トロンボーン３、チューバ
シンバルも２種、ハープ、・・・
それから鍵盤楽器としてピアノとチェレスタが使われる(両者はピアニストが兼務)が、舞台を
見渡すとグランドピアノが２台ある。本曲の演奏で用いられるのは左手でチェレスタの後ろに
いる１台。右手は音響板に鍵盤が蓋されている。佐渡さんは、この後で舞台の大転換がある、
とお話しされたが、それと関係があるのだが、それは又、後の話。
それにしてもベートーヴェン目当てでコンサートへ赴いて日本初演に当たるのは４回目。但し、
今回が最もベートーヴェンが思索の源泉になっていると思われる。しかしながら佐渡さんも
仰っていたが、「超現代曲」である。「田舎の踊りが宇宙へ飛んでハリーポッターの世界へ行った
ような感」(佐渡さん)楽曲説明を受けていた時はホンマカイナであったが。
フルート・トップ奏者フランチェスカ・ブルーノさんのソロで始まる。この旋律も「英雄」。これが
序奏で、バンと一撃が入って、ウェルセンバーグ・ワールドが始まる。全くベートーヴェンも
驚く豊かな才能である。これが17歳の作品とは。まだ21歳の音楽家なので、まだまだ凄い
作品が今後、生まれるかもしれない。演奏時間８分半の作品である。(つづく)
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