下記は、2020.1.30 付の 産経抄 です。
記
半地下に暮らす全員が失業中のキム一家と、高台の豪邸に住むIT企業社長のパク一家。今話題の韓国映画『パラサイト』は、格差社会をグロテスクに描き出す。善良なパク家は、貧しい人たちの生活に無関心だった。それが一家の悲劇につながっていく。
▼中国政府の発表などによれば、新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は、中国本土で6千人を超えた。連日、このウイルスに関するニュースが流れている。ただし、先のパク家の人たちの視点だけで伝えられているのではないか。
▼そんな疑問を抱いたのは、今週号の「ニューズウィーク日本版」の記事「新型肺炎の最大の犠牲者は貧困層だ」を読んだからだ。記事によれば、私たちがニュース映像で目にするマスク姿の中国人旅行者は、ほんの一部の富裕層である。これに対して、発生源となった武漢市内の生鮮市場では、主に出稼ぎの単純労働者が働いていた。
▼彼らの多くは、武漢が封鎖される前に、長距離バスや相乗りトラックで故郷に向かっている。たとえウイルスに感染しても、貧困層にとって病院は遠い存在である。身分証もインターネットのアカウントも持たない人たちは、中国自慢の監視網さえ潜(くぐ)り抜けてしまう。つまり国内においては、すでにウイルス拡散を防止するのは手遅れということだ。
▼『パラサイト』では、キム家の父親は、ベンツの運転手となってパク家にもぐりこむ。ベンツは「格差」の象徴だった。先ごろ北京の世界遺産、故宮にベンツで乗り込んだ女性が、「特権階級のわがまま」と、批判を浴びたばかりである。
▼中国の習近平国家主席は、ウイルス感染の流行を「悪魔」と表現した。悪魔を生み育てたのは、中国の超のつく格差社会である。
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20200130/0001.html
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