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2019年12月19日18:26
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ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年
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国立新美術館で開催中の『ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年』を観ました。
公式ＨＰ↓
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ブダペスト展をやるのは、実に25年ぶり。実は私は展示内容を勘違いしていて、ハンガリー絵画が沢山観られるのかと思っていたら、そうではなく、ブダ側にあるハンガリーナショナルギャラリーと、ペスト側にある国立西洋美術館が所蔵する『ルネサンス〜20Ｃ初頭までのヨーロッパ絵画全般』を観て、ヨーロッパ絵画とハンガリー絵画の歴史を紐解く…というキュレーションだったみたい。後半結構ハンガリー絵画が出て来たケド。
なので、ちょっと展示内容が散漫な印象になるのは否めなかった。でも、逆に言えば、ヨーロッパ絵画の流れが学べるので、西洋絵画鑑賞初心者にも良さそう。持ってる作品は良品が多いしね。
最初は、16Ｃ北ヨーロッパ絵画。キリスト教は改革派が出て来て偶像崇拝が禁止。宗教画は低迷する。その代り、諷刺画や道徳画が多く描かれる。
で、まず出て来るのはルーカス・クラーナハ（父）『不釣り合いなカップル 老人と若い女』醜く老いた男が美女に抱きつき女性の乳房を触っている。男はスケベそうなにやけ顔。妖艶に微笑む美女だが、よく見れば彼女の手は男の財布の中へ…。不釣り合いなカップルには、こんな裏があるんだよ…ってコトな。
女性は男性の腕を取っているので、自ら胸を触るよう誘ってるようにも見える。これも盗みの手段なのだろう。女のドレスの金糸の飾りの細密な美しさ、宝石の細かさが、北方ルネサンスだね！って思う。
その隣りには、同画家の『不釣り合いなカップル 老女と若い男』。こっちは、醜い老女が下卑た笑みを浮かべ、若いイケメン男に金貨を押しつけている。愛を金で買うって意味だ。男は呆れ顔のように見える。これも教訓。
素描も色々あったけど、ヨーゼフ・ハインツ（父）の『アリストテレスとフィリア』が面白かった。四つん這いの哲学者アリストテレスの上に、侍女フィリアが全裸で跨って鞭を振るう。ＳＭチックでちょっとエロ絵。アレクサンドロス大王がフィリアと恋に落ち、彼女を遠ざけるよう助言したアリストテレス。フィリアは怒り、アリストテレスを誘惑。彼は、結果、彼女に陥落してしまう。「ふん！偉そうな哲学者だって、所詮男はこんなもの！」というフィリアの高笑いが聴こえてきそう。北ヨーロッパで人気のテーマだったらしい。
次はイタリア絵画。フィレンツェ派は線と素描を重視。ヴェネツィア派は色彩を重視する。このコーナー大好きだった。やはり私はイタリアルネサンス〜バロック好きなのね。宗教画多いし（宗教画大好き！）
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『聖母子と聖パウロ』
聖母が精悍な顔つきの幼子イエスを抱き支える。左にパウロ。剣を持ち本を開き聖母子を見上げる。パウロのモデルは絵の注文者では？とのコト。イエスの右手にあるのは原罪を表す林檎だろう。イエスは琥珀の首飾りもしてる。ロザリオかな？
ベルナルディーノ・ルイーニ『聖母子と聖エリザベト、洗礼者聖ヨハネ』
ダヴィンチっぽい絵。何でも彼はレオナルドを良く研究していたと（弟子ではない）。この絵、どっかで観たような…と思ったら、彼はダヴィンチの『聖ヨハネと聖母子と幼い洗礼者ヨハネ』のカルトンを所有しており、この絵は、その絵の左右反転の構図だった。右に聖母子。イエスは花（おだまき？）を持つ。左にいるエリザベトと幼いヨハネ。ヨハネはその花の茎を持つ。背景の岩山や花もダヴィンチ風。
ベルナルド・ストロッツィ『受胎告知』。私、ストロッツィ好きなんだな。展示してあるとどうも目がとまる。やたら躍動感のある受胎告知。今まさに天から舞い降りたガブリエル。翼を広げ、衣は風で翻る。左手には白百合。「今来ました、マリア様ーーー！！」って感じだ。左のマリアは驚愕の表情で天使を見上げる。精霊を表す鳩もいる。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ランディゲッティ『監獄でファラオの料理長と給仕長の夢を解釈するヨセフ』
牢獄内。ヨセフは給仕長と料理長の見た夢を解釈。青い衣姿の若い給仕長の夢は「解放」と、顎髭姿の料理長には「処刑」と解き、その通りになった。ピンクの衣を頭から被るヨセフ。繋がれた鎖を握っている。若い給仕は「解放」と言われ、テンション上がって嬉しそうな顔。反面、料理長は頭を抱えている。その様子を窓から覗く老婆（かな？）もいる。
ドメニコ・フェッティ『若い修道士の肖像』私、フェッティの絵も良く観てて、何か好きなのよね。筆致が好きなのかな？色彩かな？若いイケメン修道士が白い衣を着て、こちらを見て微笑んでいる。柔らかい笑顔。後ろが後光のように光ってるようにも見える。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ『聖ヨセフをカルメル修道会の守護聖人にするよう、アビラの聖テレサに促す聖母』国立西洋美術館にあるティエポロの絵に似てる。色合いもそうだし、何なら構図も似てない？中央に聖母。両手を広げる。跪くのがヨセフかな？横に骸骨あるし。このパステルチックなふわっと柔らかい色彩を観ると「ああ、ティエポロ」と思ってしまう。
次がオランダ絵画。宗教画は日常の一場面のように描かれるのが特徴。庶民が絵描きを支えたから、分かりやすい風俗画も多く描かれる。
ヤン・ミーンセ・モレナール『聖ペテロの否認』室内の群衆の後ろの１番右端にいる困惑顔で逃げ出そうとしてるのがペテロだろう。でも、主役のはずなのに、ハッキリ描かれてない(^_^;)。周りの人々の方が寧ろハッキリ描かれている。これもある種の風俗画なのかも。右端の暖炉の傍に、侏儒もいる。そして、猫をめちゃくちゃ丁寧に描いていた。１番描きたかったの猫なんじゃあ…。
このコーナーには、オランダといえばなヤン・ステーンの絵などもある。
次はスペイン絵画。16Ｃ以降、カトリック教国のスペインでは十二使徒が人気を博す。そして、王族の肖像画も多く描かれた。
ジョゼペ・デ・リベーラ『聖トマス』私が大っっっっ好きなリベーラ。必死に何か手振りも使い訴えているトマス。黄土色の衣を着て顔は緊張した顔だ。暗闇から浮かぶ姿は、カラヴァッジェスキだね。下部に“S.THOMAS”と書かれた紙が貼られているが、ちょっと剥がれかけている。こういう描写も芸が細かい。後ろにあるのは槍かな？
バルトロメオ・ゴンザレス『王子の肖像』王族の幼い王子の姿。腰回りに色んな魔除けが付いている。赤珊瑚、小さな剣、アナグマの手なんて物も。幼い王子は手でムンズと小鳥を掴む。大きなドレス姿なのは、当時は子供服って概念がないから…ってのも聞いた記憶が（男子もドレス着るし）。長鎖の先にある鐘は何だろう？これも魔除けか？
次は、ネーデルラントとイタリアの静物画。オランダでは、ロブスターや銀器等、高価な物を描く“見せびらかしの静物画”が流行る。しかし、これは同時にヴァニタスの象徴でもあった。豪華な物なんて所詮儚い物よと。
ペドロ・ヌニェス・デ・ビリャビセンシオ『リンゴがこぼれた籠』犬にじゃれつかれて転倒した少年。籠からは沢山のリンゴが転がり出る。随分沢山入ってんな！重いぞこれ！(^_^;) 少年は驚愕の表情でじゃれつく犬２匹を見ている。ちょっとバロック的な体の捻りや手の出し方だな…と。17Ｃの絵なんだケドね。
他にハイムスの静物画等もあった。
次は17Ｃー18Ｃのヨーロッパの都市と風景。17Ｃオランダでは、風景専門の画家が活躍した。18Ｃイタリアでは、ヴェドゥータ（都市景観画）や古代の建物、廃墟を一纏めにしたカプリッチョ（奇想画）も人気に。ヴェドゥータ、何故か東京富士美の常設に結構ある印象。あそこ、何故にあんなにヴェドゥータ持ってるの？
フランソワ・ド・メノ『架空のゴシック教会の内部』フランスゴシック教会内部に時代もスタイルも様々に異なるモニュメントや彫刻をみっちり細密に描いた絵。まず、彫刻の細かさに圧倒される。実在しない教会の絵だね。
フィリッポ・ジュントタルディ『ローマのフォロ・ロマーノ』廃墟の古代ローマっぽい建物の柱。母子や荷馬車も描かれる。当時、廃墟ブームがあったんだよね。廃墟ロマン。今も廃墟マニアはいるけれど。イタリアなので空が青いのが特徴かな。
オランダの風景画もあったけど、軒並み曇天なんだよね(^_^;)。イタリアのようにスカッと青にはならないんだな。
次は17Ｃ−18Ｃのハンガリー王国の絵画のコーナー。1541年以降ハンガリーは三分割になる。北部・西部はハプスブルグ家が統治、東部トランシルヴァニア侯国はオスマン帝国の属国に、中部と南部はオスマン帝国の直轄になる。オスマン帝国の凄さがひたすら分かるって言うね。あと、トランシルヴァニアって聞くと、吸血鬼フリークの私は「いやぁ〜ん
」ってなります。肖像画が人気らしく、展示にも貴婦人の肖像画があった。
次は彫刻。イキナリ彫刻。ちょっと驚いた(^_^;)。
ルカ・デッラ・ロッビア『キリストと聖トマス』オルサンミケーレ教会の外壁を飾る大きな彫刻の注文を取る為の見本。ようはプレゼン用。プレゼン用でも細密で緑や朱の彩色が衣に残る。色も塗るんだね。トマスはキリストの磔刑の傷に指を入れる。トマスは不思議そうな「？」という顔。ようは聖トマスの不信の場面だ。キリストの頭部は欠損している。残念ながらルカは、この教会の仕事はゲットならずだったそうな。
アントニオ・スジーニ ジャンボローニャの原型に基づく『ヘラクレスとケンタウロス』ケンタウロスの上に跨り棍棒を振り下ろそうとするヘラクレス。ケンタウロス、凄く体を捻ってのけぞる。ケンタウロス胴体長くないか？って思うんだケド…。ヘラクレスはケンタウロスの顔面を鷲掴み。ヘラクレスの胸を押し、必死に抵抗するケンタウロス。ケンタウロスのお尻を見たら、プリケツで、ちゃんと金玉があったコトに何か感動した。ペニスまでは分からなかったが。そうか、男だもんな、ケンタ。
レオンハルト・ケルン『三美神』華麗にポーズを決めているが、下半身デブだよね？と(^_^;)。でも、当時は、こういう体形が良かったんだろうな。
フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミット『性格表現の頭像 子どもじみた泣き顔』『性格表現の頭像 あくびする人』
ずっと観たかったメッサーシュミットの性格表現の頭像がついに観られた！前者は、口がへの字で今にも泣き出しそうな、何かに耐えているような、そんな表情。後者は、口を大きく開け目をつぶり「ふああああ〜〜〜！！！」と大欠伸。でも、シャウトして唄っているようにも見える。眉間の皺もリアルだ。
精神を病み、自分を苦しめる妄想を治療しようとして、性格表現の頭像を作ったシュミット。彼の妄想…幻覚…は、どんな物だったのだろう？
ブタペストの«豊穣»の彫刻家『豊穣』妙に表面がザラザラしてんな…と思ったら、ドイツはブロンズ像の型が蝋や粘土ではなく木彫りなので、木彫りの像から型を取る際、鑿の跡が残るんだそうな。このザラザラは鑿あとなのか。
次はビーダーマイアー。写実的で優美な肖像画と都市や田舎の日常的情景を感傷的に描写した。
マルコ―・カーロイ（父）『漁師たち』クロード・ロランっぽい風景画。夕暮れ。船をしまう漁師たち。夕陽に光る森影が美しい。
フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー『ウィーンのマグダレーネングリュントの物乞いの少年』右掌を突きだし「何か頂戴。」なポーズの少年。後ろに貧しい母子もいる。少年は上着もズボンもボロボロ。靴は履いてない。後ろの聖人の像は、そんな彼らを憐み見つめているよう。
ビーダーマイアーって、平和的な絵のイメージがあったので、この絵はちょっと驚いた。どういう意図で描いたのだろう？福祉施設みたいな場所に飾っていたとか？
ヨハン・バプティスト・ライター『小さな宝石商』キラキラ光る透明な石を光に翳し見上げる少女。期待に満ちたキラキラとした表情だ。単純に可愛い絵。そうそう、ビーダーマイアーって、こういう絵のイメージなんだよ。机の上に色々な色の宝石も乗っている。
次はレアリズム。1840年。フランスでリアリズムの潮流が生まれる。
ここでは、ムンカーチ・ミハーイの絵が面白く、彼の絵はどれも良かった。最後に出て来た最早抽象表現みたいな絵も面白かったな。
ミハーイは、農民や労働者の苦難や不幸をドラマチックに描き人気が出るが、1874年に貴族の女性と結婚し、ブルジョワ階級の婦人や子供の優雅な生活を描くようになったそうな。逆玉に乗って絵のテーマを変えるって、分かりやすい忖度だな！（笑）でも、どの絵も良かったの。
ミハーイ『パリの室内（本を読む女性）』『本を読む女性』前者は、豪華なサロンで白いドレス姿で本を読む女性の絵。後者も同じくサロンで本を読むドレス姿の女性だが、こちらは横向き。傍には子供も寝転がり犬と遊んでいる。ドレスや絨毯は粗い筆致でササッと描かれ近代的な感じがある。でも、少し離れて観ると、きちんと絵。ベラスケスみたいだな。
ギュスターヴ・ドレ『白いショールをまとった若い女性』わぁ！ドレの絵もある！屋外で本を読む白いドレスシャツに黒いスカート姿の美女。ウエストが凄く細い。コルセットで締めてるんだね。ザクッと粗い筆致は、マネを思わせたりもする。私はドレの絵が結構好き。
シニェイ・メルシェ・パール『紫のドレスの婦人』。今回の展覧会のポスター絵に使われたのがこれ。屋外。青空に雲。紫色のドレスの婦人が、膝の上に手を置き（花も持ってる）座る。婦人は何処か遠くを見ているよう。後ろは緑の草。パールは自然の光のもとで目にした風景や人物を見えるままの色に置き換え描こうとする印象派と同じ試みをした。緑と紫の対象色はキッパリとしていて、発表当時は「色味が強い」と酷評されたらしい。
同じくパール『気球』思わず「ああ！視力検査の時の気球みたいだ！」と小声で言ってしまった(^_^;)。青空に白とオレンジの縞模様の気球が浮かぶ。これも対象色だね。やはり色味がキッパリしてる。
ヨーゼフ・イスラエルス『カトウェイクの孤児の少女たち』私の好きなイスラエルス。どうも、フェルメールの影に隠れがちのような気がするが、私は寧ろ、フェルメールより、イスラエルスの絵の方が好きなんだ。
暗い室内。窓があり、そこからは陽が差し込み、針仕事をする少女達がいるテーブル周りのみ明るい。鋏で布を切ったり、縫い物をしたり、静謐な美しさがある。テーブルは上は明るいが、下は暗い。彼女達の置かれた立場を表しているような…。
またもや、ミハーイ『「村の英雄」のための習作（テーブルに寄りかかる二人の若者）』ザクザクな筆致。テーブルに寄りかかり座る男。険しい表情をしている。もう１人は立ってテーブルに乗り出しているようだ。斜め上を見上げている。
もう１枚ミハーイ『フランツ・リストの肖像』。厳格な表情のリスト。ピアノの鍵盤の上に手を置く。ムンカーチ邸を訪れたリストだったが、この絵を描いた４ヶ月後死亡した。リストの最後の肖像画になった。黒い服に白髪のコントラストも良い。
ロツ・ローカイ『春ーリッピピ・イロナの肖像』白いドレスの少女。視線は遠くに投げ右を向き手には花。背景には山も見える。春の寓意の絵であり肖像画でもある。
このコーナー面白かったです。正直「誰ですか？」的な画家も多かったケド(^_^;)。
次は戸外制作絵画。バルビゾン、印象派等、ハンガリーにもその流れがあった。
ギュスターヴ・クールベ『オートヴィルのヒマラヤスギ』太い幹の木…ヒマラヤスギだろう…傍らにはポツンとベンチが一つ置かれている。後ろは緑の木立。筆致は粗めだが、リアル。
またもやミハーイ『ほこりっぽい道�供戰團鵐�、白、灰、青、黄土等を使い抽象画のように荷馬車と道を描く。輪郭はぼんやりとしており、地面と空の境も曖昧で分からない。この絵も面白かったな。ミハーイの絵は良いモノが多かった…のに、ポストカード１枚もないってどういうコト〜？
メドニャーンスキ・ラースロー『岩山のある水辺の風景』岩のゴツゴツ感。水面の煌き。遠目だと凄くリアルで「写真みたい！」と思うも、良く観ると岩等結構粗い筆致の部分もある。この絵も面白かった。
次は自然主義。
アデルスティーン・ノーマン『ノルウェーのフィヨルド』水面には点描が使われ印象派っぽくなっている。色彩はハッキリだが、原色ではない。岩山の描写はリアルだった。
チョーク・イシュトヴァーン『孤児』この絵、美しかった。なのに、やはりポストカードはない。青い室内。中央にランプが灯る。机につっぷす少女と厳しい表情で椅子に座る少女。孤児という現実的主題だが、青い室内描写は幻想的で神秘的。象徴主義的印象も与える。自然主義と象徴主義を混ぜたような感じか。
次は世紀末。不安や恐れ、欲望といった精神的なもの、神話、人物、植物等の具体的イメージを借り幻想的にする傾向がある。印象派や自然主義の目に映るまま描くコトへの反動、反発もあるのだろう。
リップル=ローナイ・ヨージェフ『白い水玉ドレスの女性』黒に白水玉のドレス姿の女性。扇子を持ちポーズを取る。美女の絵だけど、どうにも何か不穏な感じがする。全体的にソフトフォーカスがかかっているような絵面。この「何か不穏」も世紀末的だよな。ちょっと分離派の絵を思い浮かべた。
アルノルト・ベックリン『村の鍛冶屋を訪れるケンタウロス』あ、ベックリンだ！そうか、彼も世紀末の画家よな。ケンタウロスは右前脚を切り株に乗せ、手を出し「おひけえなすって」みたいなポーズをしてる。どうやら、本当は、蹄を指していたらしい。鍛冶屋はケンタウロスの蹄を見つめている。後ろで見てる人達は、ケンタウロスが来たコトに驚いたのか「え？！」の表情。
ジュール・ジョゼフ・ルフェーヴル『オンディーヌ』世紀末的ファムファタル美女。赤茶の髪に白い裸体。髪の毛に手をやり挑発的に微笑む。足元にある花は菖蒲かな？とても世紀末的美女。
ヴァサリ・ヤーノシュ『黄金時代』古代女神の彫刻が並ぶ庭。男女が肩を抱きヴィナスに薔薇の花の供物を置く。遠近法がちょっとおかしいと思うんだ。像と人間のバランスも変。わざとかも。立ち昇る煙は額のアールヌーヴォーデザイン（本人が制作した額）と共鳴する。ちょっと下手なクノップフみたいな絵だなって思った(^_^;)。ベルギー象徴主義みたいな感じで。
チョントヴァーリ・コストカ・ティヴァダル『アテネの新月の夜、馬車での散歩』自分が最も偉大な画家になることを告げる幻覚を見て画家になったという、オカルトチックなエピソードを持ってる画家。ピンクと水色の空に白の月。白い建物の前を馬車が通る。絵は独学らしく上手くはないと思う。でも、妙に深層意識に何か働きかけて来る絵というか。あ、デルヴォとか、そんな感じに近いかも。
ポスト印象派。点描技法やナビ派等がついに出て来る。
ツィガーニ・デジェー『子供の葬儀』ペッタリとした画面。濃紺の空、十字架の磔刑のキリストも泣きながら道を歩く農民もシンプルでデザイン的。ちょっとルオーっぽいか。茶色の畑に緑の遠景のコントラストも面白い。
このコーナーにはフォーヴィズムの色彩っぽい絵もあった。
20世紀初頭。表現主義が出て来る。内面の感情の動きを力強い筆致、鮮烈な色使いで描く。1920年代ロシアの芸術家の中では構成主義も生まれる。
ジーノ・セヴェリーニ『静物』古代の仮面、器にはパイナップルが乗る、手前には伊勢海老（かな？とにかく大きな海老）。壺もある。画面全体がラメっぽくキラキラしてて落ち着かない。
ボルトニク・シャーンドル『６人の人物のコンポジション』角ばった幾何学的な人物たち。茶色の人が２人、青い人が３人交互に並び様々にポーズを取る。手前には茶色い人が１人いて、座ってポーズ。シャーンドルは行動主義の代表的作家らしい。構図が面白かった。
他にも表現主義に１度行くも、古典的画風に戻った画家の絵もあって、最後も面白かった。
お土産は、ポストカード４枚。正直、グッズが皆、そこそこ高価で、もう少しお手頃価格の物を作って欲しかった。5800円のバーバーリウムとか、3800円のボールペンとか、ちょっと手が出ない…。六本木価格かも知れないが。ポストカードも種類が少なかったし、紫のドレスの婦人の絵葉書は完売してたし(-_-;)。クリアファイルも種類少ないよな。
あと、家人の土産にワッフル煎餅みたいな物を購入。
ハンガリーの画家は、日本では馴染みがあまりないかもですが、結構面白いと思います。ヨーロッパ絵画全体を見渡せる展示にもなってますので、西洋絵画なんて知らん！って人でも、大丈夫かと。
展示は３月16日までやっています。
公式ＨＰ↓
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ブダペスト展をやるのは、実に25年ぶり。実は私は展示内容を勘違いしていて、ハンガリー絵画が沢山観られるのかと思っていたら、そうではなく、ブダ側にあるハンガリーナショナルギャラリーと、ペスト側にある国立西洋美術館が所蔵する『ルネサンス〜20Ｃ初頭までのヨーロッパ絵画全般』を観て、ヨーロッパ絵画とハンガリー絵画の歴史を紐解く…というキュレーションだったみたい。後半結構ハンガリー絵画が出て来たケド。
なので、ちょっと展示内容が散漫な印象になるのは否めなかった。でも、逆に言えば、ヨーロッパ絵画の流れが学べるので、西洋絵画鑑賞初心者にも良さそう。持ってる作品は良品が多いしね。
最初は、16Ｃ北ヨーロッパ絵画。キリスト教は改革派が出て来て偶像崇拝が禁止。宗教画は低迷する。その代り、諷刺画や道徳画が多く描かれる。
で、まず出て来るのはルーカス・クラーナハ（父）『不釣り合いなカップル 老人と若い女』醜く老いた男が美女に抱きつき女性の乳房を触っている。男はスケベそうなにやけ顔。妖艶に微笑む美女だが、よく見れば彼女の手は男の財布の中へ…。不釣り合いなカップルには、こんな裏があるんだよ…ってコトな。
女性は男性の腕を取っているので、自ら胸を触るよう誘ってるようにも見える。これも盗みの手段なのだろう。女のドレスの金糸の飾りの細密な美しさ、宝石の細かさが、北方ルネサンスだね！って思う。
その隣りには、同画家の『不釣り合いなカップル 老女と若い男』。こっちは、醜い老女が下卑た笑みを浮かべ、若いイケメン男に金貨を押しつけている。愛を金で買うって意味だ。男は呆れ顔のように見える。これも教訓。
素描も色々あったけど、ヨーゼフ・ハインツ（父）の『アリストテレスとフィリア』が面白かった。四つん這いの哲学者アリストテレスの上に、侍女フィリアが全裸で跨って鞭を振るう。ＳＭチックでちょっとエロ絵。アレクサンドロス大王がフィリアと恋に落ち、彼女を遠ざけるよう助言したアリストテレス。フィリアは怒り、アリストテレスを誘惑。彼は、結果、彼女に陥落してしまう。「ふん！偉そうな哲学者だって、所詮男はこんなもの！」というフィリアの高笑いが聴こえてきそう。北ヨーロッパで人気のテーマだったらしい。
次はイタリア絵画。フィレンツェ派は線と素描を重視。ヴェネツィア派は色彩を重視する。このコーナー大好きだった。やはり私はイタリアルネサンス〜バロック好きなのね。宗教画多いし（宗教画大好き！）
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『聖母子と聖パウロ』
聖母が精悍な顔つきの幼子イエスを抱き支える。左にパウロ。剣を持ち本を開き聖母子を見上げる。パウロのモデルは絵の注文者では？とのコト。イエスの右手にあるのは原罪を表す林檎だろう。イエスは琥珀の首飾りもしてる。ロザリオかな？
ベルナルディーノ・ルイーニ『聖母子と聖エリザベト、洗礼者聖ヨハネ』
ダヴィンチっぽい絵。何でも彼はレオナルドを良く研究していたと（弟子ではない）。この絵、どっかで観たような…と思ったら、彼はダヴィンチの『聖ヨハネと聖母子と幼い洗礼者ヨハネ』のカルトンを所有しており、この絵は、その絵の左右反転の構図だった。右に聖母子。イエスは花（おだまき？）を持つ。左にいるエリザベトと幼いヨハネ。ヨハネはその花の茎を持つ。背景の岩山や花もダヴィンチ風。
ベルナルド・ストロッツィ『受胎告知』。私、ストロッツィ好きなんだな。展示してあるとどうも目がとまる。やたら躍動感のある受胎告知。今まさに天から舞い降りたガブリエル。翼を広げ、衣は風で翻る。左手には白百合。「今来ました、マリア様ーーー！！」って感じだ。左のマリアは驚愕の表情で天使を見上げる。精霊を表す鳩もいる。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ランディゲッティ『監獄でファラオの料理長と給仕長の夢を解釈するヨセフ』
牢獄内。ヨセフは給仕長と料理長の見た夢を解釈。青い衣姿の若い給仕長の夢は「解放」と、顎髭姿の料理長には「処刑」と解き、その通りになった。ピンクの衣を頭から被るヨセフ。繋がれた鎖を握っている。若い給仕は「解放」と言われ、テンション上がって嬉しそうな顔。反面、料理長は頭を抱えている。その様子を窓から覗く老婆（かな？）もいる。
ドメニコ・フェッティ『若い修道士の肖像』私、フェッティの絵も良く観てて、何か好きなのよね。筆致が好きなのかな？色彩かな？若いイケメン修道士が白い衣を着て、こちらを見て微笑んでいる。柔らかい笑顔。後ろが後光のように光ってるようにも見える。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ『聖ヨセフをカルメル修道会の守護聖人にするよう、アビラの聖テレサに促す聖母』国立西洋美術館にあるティエポロの絵に似てる。色合いもそうだし、何なら構図も似てない？中央に聖母。両手を広げる。跪くのがヨセフかな？横に骸骨あるし。このパステルチックなふわっと柔らかい色彩を観ると「ああ、ティエポロ」と思ってしまう。
次がオランダ絵画。宗教画は日常の一場面のように描かれるのが特徴。庶民が絵描きを支えたから、分かりやすい風俗画も多く描かれる。
ヤン・ミーンセ・モレナール『聖ペテロの否認』室内の群衆の後ろの１番右端にいる困惑顔で逃げ出そうとしてるのがペテロだろう。でも、主役のはずなのに、ハッキリ描かれてない(^_^;)。周りの人々の方が寧ろハッキリ描かれている。これもある種の風俗画なのかも。右端の暖炉の傍に、侏儒もいる。そして、猫をめちゃくちゃ丁寧に描いていた。１番描きたかったの猫なんじゃあ…。
このコーナーには、オランダといえばなヤン・ステーンの絵などもある。
次はスペイン絵画。16Ｃ以降、カトリック教国のスペインでは十二使徒が人気を博す。そして、王族の肖像画も多く描かれた。
ジョゼペ・デ・リベーラ『聖トマス』私が大っっっっ好きなリベーラ。必死に何か手振りも使い訴えているトマス。黄土色の衣を着て顔は緊張した顔だ。暗闇から浮かぶ姿は、カラヴァッジェスキだね。下部に“S.THOMAS”と書かれた紙が貼られているが、ちょっと剥がれかけている。こういう描写も芸が細かい。後ろにあるのは槍かな？
バルトロメオ・ゴンザレス『王子の肖像』王族の幼い王子の姿。腰回りに色んな魔除けが付いている。赤珊瑚、小さな剣、アナグマの手なんて物も。幼い王子は手でムンズと小鳥を掴む。大きなドレス姿なのは、当時は子供服って概念がないから…ってのも聞いた記憶が（男子もドレス着るし）。長鎖の先にある鐘は何だろう？これも魔除けか？
次は、ネーデルラントとイタリアの静物画。オランダでは、ロブスターや銀器等、高価な物を描く“見せびらかしの静物画”が流行る。しかし、これは同時にヴァニタスの象徴でもあった。豪華な物なんて所詮儚い物よと。
ペドロ・ヌニェス・デ・ビリャビセンシオ『リンゴがこぼれた籠』犬にじゃれつかれて転倒した少年。籠からは沢山のリンゴが転がり出る。随分沢山入ってんな！重いぞこれ！(^_^;) 少年は驚愕の表情でじゃれつく犬２匹を見ている。ちょっとバロック的な体の捻りや手の出し方だな…と。17Ｃの絵なんだケドね。
他にハイムスの静物画等もあった。
次は17Ｃー18Ｃのヨーロッパの都市と風景。17Ｃオランダでは、風景専門の画家が活躍した。18Ｃイタリアでは、ヴェドゥータ（都市景観画）や古代の建物、廃墟を一纏めにしたカプリッチョ（奇想画）も人気に。ヴェドゥータ、何故か東京富士美の常設に結構ある印象。あそこ、何故にあんなにヴェドゥータ持ってるの？
フランソワ・ド・メノ『架空のゴシック教会の内部』フランスゴシック教会内部に時代もスタイルも様々に異なるモニュメントや彫刻をみっちり細密に描いた絵。まず、彫刻の細かさに圧倒される。実在しない教会の絵だね。
フィリッポ・ジュントタルディ『ローマのフォロ・ロマーノ』廃墟の古代ローマっぽい建物の柱。母子や荷馬車も描かれる。当時、廃墟ブームがあったんだよね。廃墟ロマン。今も廃墟マニアはいるけれど。イタリアなので空が青いのが特徴かな。
オランダの風景画もあったけど、軒並み曇天なんだよね(^_^;)。イタリアのようにスカッと青にはならないんだな。
次は17Ｃ−18Ｃのハンガリー王国の絵画のコーナー。1541年以降ハンガリーは三分割になる。北部・西部はハプスブルグ家が統治、東部トランシルヴァニア侯国はオスマン帝国の属国に、中部と南部はオスマン帝国の直轄になる。オスマン帝国の凄さがひたすら分かるって言うね。あと、トランシルヴァニアって聞くと、吸血鬼フリークの私は「いやぁ〜ん
」ってなります。肖像画が人気らしく、展示にも貴婦人の肖像画があった。
次は彫刻。イキナリ彫刻。ちょっと驚いた(^_^;)。
ルカ・デッラ・ロッビア『キリストと聖トマス』オルサンミケーレ教会の外壁を飾る大きな彫刻の注文を取る為の見本。ようはプレゼン用。プレゼン用でも細密で緑や朱の彩色が衣に残る。色も塗るんだね。トマスはキリストの磔刑の傷に指を入れる。トマスは不思議そうな「？」という顔。ようは聖トマスの不信の場面だ。キリストの頭部は欠損している。残念ながらルカは、この教会の仕事はゲットならずだったそうな。
アントニオ・スジーニ ジャンボローニャの原型に基づく『ヘラクレスとケンタウロス』ケンタウロスの上に跨り棍棒を振り下ろそうとするヘラクレス。ケンタウロス、凄く体を捻ってのけぞる。ケンタウロス胴体長くないか？って思うんだケド…。ヘラクレスはケンタウロスの顔面を鷲掴み。ヘラクレスの胸を押し、必死に抵抗するケンタウロス。ケンタウロスのお尻を見たら、プリケツで、ちゃんと金玉があったコトに何か感動した。ペニスまでは分からなかったが。そうか、男だもんな、ケンタ。
レオンハルト・ケルン『三美神』華麗にポーズを決めているが、下半身デブだよね？と(^_^;)。でも、当時は、こういう体形が良かったんだろうな。
フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミット『性格表現の頭像 子どもじみた泣き顔』『性格表現の頭像 あくびする人』
ずっと観たかったメッサーシュミットの性格表現の頭像がついに観られた！前者は、口がへの字で今にも泣き出しそうな、何かに耐えているような、そんな表情。後者は、口を大きく開け目をつぶり「ふああああ〜〜〜！！！」と大欠伸。でも、シャウトして唄っているようにも見える。眉間の皺もリアルだ。
精神を病み、自分を苦しめる妄想を治療しようとして、性格表現の頭像を作ったシュミット。彼の妄想…幻覚…は、どんな物だったのだろう？
ブタペストの«豊穣»の彫刻家『豊穣』妙に表面がザラザラしてんな…と思ったら、ドイツはブロンズ像の型が蝋や粘土ではなく木彫りなので、木彫りの像から型を取る際、鑿の跡が残るんだそうな。このザラザラは鑿あとなのか。
次はビーダーマイアー。写実的で優美な肖像画と都市や田舎の日常的情景を感傷的に描写した。
マルコ―・カーロイ（父）『漁師たち』クロード・ロランっぽい風景画。夕暮れ。船をしまう漁師たち。夕陽に光る森影が美しい。
フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー『ウィーンのマグダレーネングリュントの物乞いの少年』右掌を突きだし「何か頂戴。」なポーズの少年。後ろに貧しい母子もいる。少年は上着もズボンもボロボロ。靴は履いてない。後ろの聖人の像は、そんな彼らを憐み見つめているよう。
ビーダーマイアーって、平和的な絵のイメージがあったので、この絵はちょっと驚いた。どういう意図で描いたのだろう？福祉施設みたいな場所に飾っていたとか？
ヨハン・バプティスト・ライター『小さな宝石商』キラキラ光る透明な石を光に翳し見上げる少女。期待に満ちたキラキラとした表情だ。単純に可愛い絵。そうそう、ビーダーマイアーって、こういう絵のイメージなんだよ。机の上に色々な色の宝石も乗っている。
次はレアリズム。1840年。フランスでリアリズムの潮流が生まれる。
ここでは、ムンカーチ・ミハーイの絵が面白く、彼の絵はどれも良かった。最後に出て来た最早抽象表現みたいな絵も面白かったな。
ミハーイは、農民や労働者の苦難や不幸をドラマチックに描き人気が出るが、1874年に貴族の女性と結婚し、ブルジョワ階級の婦人や子供の優雅な生活を描くようになったそうな。逆玉に乗って絵のテーマを変えるって、分かりやすい忖度だな！（笑）でも、どの絵も良かったの。
ミハーイ『パリの室内（本を読む女性）』『本を読む女性』前者は、豪華なサロンで白いドレス姿で本を読む女性の絵。後者も同じくサロンで本を読むドレス姿の女性だが、こちらは横向き。傍には子供も寝転がり犬と遊んでいる。ドレスや絨毯は粗い筆致でササッと描かれ近代的な感じがある。でも、少し離れて観ると、きちんと絵。ベラスケスみたいだな。
ギュスターヴ・ドレ『白いショールをまとった若い女性』わぁ！ドレの絵もある！屋外で本を読む白いドレスシャツに黒いスカート姿の美女。ウエストが凄く細い。コルセットで締めてるんだね。ザクッと粗い筆致は、マネを思わせたりもする。私はドレの絵が結構好き。
シニェイ・メルシェ・パール『紫のドレスの婦人』。今回の展覧会のポスター絵に使われたのがこれ。屋外。青空に雲。紫色のドレスの婦人が、膝の上に手を置き（花も持ってる）座る。婦人は何処か遠くを見ているよう。後ろは緑の草。パールは自然の光のもとで目にした風景や人物を見えるままの色に置き換え描こうとする印象派と同じ試みをした。緑と紫の対象色はキッパリとしていて、発表当時は「色味が強い」と酷評されたらしい。
同じくパール『気球』思わず「ああ！視力検査の時の気球みたいだ！」と小声で言ってしまった(^_^;)。青空に白とオレンジの縞模様の気球が浮かぶ。これも対象色だね。やはり色味がキッパリしてる。
ヨーゼフ・イスラエルス『カトウェイクの孤児の少女たち』私の好きなイスラエルス。どうも、フェルメールの影に隠れがちのような気がするが、私は寧ろ、フェルメールより、イスラエルスの絵の方が好きなんだ。
暗い室内。窓があり、そこからは陽が差し込み、針仕事をする少女達がいるテーブル周りのみ明るい。鋏で布を切ったり、縫い物をしたり、静謐な美しさがある。テーブルは上は明るいが、下は暗い。彼女達の置かれた立場を表しているような…。
またもや、ミハーイ『「村の英雄」のための習作（テーブルに寄りかかる二人の若者）』ザクザクな筆致。テーブルに寄りかかり座る男。険しい表情をしている。もう１人は立ってテーブルに乗り出しているようだ。斜め上を見上げている。
もう１枚ミハーイ『フランツ・リストの肖像』。厳格な表情のリスト。ピアノの鍵盤の上に手を置く。ムンカーチ邸を訪れたリストだったが、この絵を描いた４ヶ月後死亡した。リストの最後の肖像画になった。黒い服に白髪のコントラストも良い。
ロツ・ローカイ『春ーリッピピ・イロナの肖像』白いドレスの少女。視線は遠くに投げ右を向き手には花。背景には山も見える。春の寓意の絵であり肖像画でもある。
このコーナー面白かったです。正直「誰ですか？」的な画家も多かったケド(^_^;)。
次は戸外制作絵画。バルビゾン、印象派等、ハンガリーにもその流れがあった。
ギュスターヴ・クールベ『オートヴィルのヒマラヤスギ』太い幹の木…ヒマラヤスギだろう…傍らにはポツンとベンチが一つ置かれている。後ろは緑の木立。筆致は粗めだが、リアル。
またもやミハーイ『ほこりっぽい道�供戰團鵐�、白、灰、青、黄土等を使い抽象画のように荷馬車と道を描く。輪郭はぼんやりとしており、地面と空の境も曖昧で分からない。この絵も面白かったな。ミハーイの絵は良いモノが多かった…のに、ポストカード１枚もないってどういうコト〜？
メドニャーンスキ・ラースロー『岩山のある水辺の風景』岩のゴツゴツ感。水面の煌き。遠目だと凄くリアルで「写真みたい！」と思うも、良く観ると岩等結構粗い筆致の部分もある。この絵も面白かった。
次は自然主義。
アデルスティーン・ノーマン『ノルウェーのフィヨルド』水面には点描が使われ印象派っぽくなっている。色彩はハッキリだが、原色ではない。岩山の描写はリアルだった。
チョーク・イシュトヴァーン『孤児』この絵、美しかった。なのに、やはりポストカードはない。青い室内。中央にランプが灯る。机につっぷす少女と厳しい表情で椅子に座る少女。孤児という現実的主題だが、青い室内描写は幻想的で神秘的。象徴主義的印象も与える。自然主義と象徴主義を混ぜたような感じか。
次は世紀末。不安や恐れ、欲望といった精神的なもの、神話、人物、植物等の具体的イメージを借り幻想的にする傾向がある。印象派や自然主義の目に映るまま描くコトへの反動、反発もあるのだろう。
リップル=ローナイ・ヨージェフ『白い水玉ドレスの女性』黒に白水玉のドレス姿の女性。扇子を持ちポーズを取る。美女の絵だけど、どうにも何か不穏な感じがする。全体的にソフトフォーカスがかかっているような絵面。この「何か不穏」も世紀末的だよな。ちょっと分離派の絵を思い浮かべた。
アルノルト・ベックリン『村の鍛冶屋を訪れるケンタウロス』あ、ベックリンだ！そうか、彼も世紀末の画家よな。ケンタウロスは右前脚を切り株に乗せ、手を出し「おひけえなすって」みたいなポーズをしてる。どうやら、本当は、蹄を指していたらしい。鍛冶屋はケンタウロスの蹄を見つめている。後ろで見てる人達は、ケンタウロスが来たコトに驚いたのか「え？！」の表情。
ジュール・ジョゼフ・ルフェーヴル『オンディーヌ』世紀末的ファムファタル美女。赤茶の髪に白い裸体。髪の毛に手をやり挑発的に微笑む。足元にある花は菖蒲かな？とても世紀末的美女。
ヴァサリ・ヤーノシュ『黄金時代』古代女神の彫刻が並ぶ庭。男女が肩を抱きヴィナスに薔薇の花の供物を置く。遠近法がちょっとおかしいと思うんだ。像と人間のバランスも変。わざとかも。立ち昇る煙は額のアールヌーヴォーデザイン（本人が制作した額）と共鳴する。ちょっと下手なクノップフみたいな絵だなって思った(^_^;)。ベルギー象徴主義みたいな感じで。
チョントヴァーリ・コストカ・ティヴァダル『アテネの新月の夜、馬車での散歩』自分が最も偉大な画家になることを告げる幻覚を見て画家になったという、オカルトチックなエピソードを持ってる画家。ピンクと水色の空に白の月。白い建物の前を馬車が通る。絵は独学らしく上手くはないと思う。でも、妙に深層意識に何か働きかけて来る絵というか。あ、デルヴォとか、そんな感じに近いかも。
ポスト印象派。点描技法やナビ派等がついに出て来る。
ツィガーニ・デジェー『子供の葬儀』ペッタリとした画面。濃紺の空、十字架の磔刑のキリストも泣きながら道を歩く農民もシンプルでデザイン的。ちょっとルオーっぽいか。茶色の畑に緑の遠景のコントラストも面白い。
このコーナーにはフォーヴィズムの色彩っぽい絵もあった。
20世紀初頭。表現主義が出て来る。内面の感情の動きを力強い筆致、鮮烈な色使いで描く。1920年代ロシアの芸術家の中では構成主義も生まれる。
ジーノ・セヴェリーニ『静物』古代の仮面、器にはパイナップルが乗る、手前には伊勢海老（かな？とにかく大きな海老）。壺もある。画面全体がラメっぽくキラキラしてて落ち着かない。
ボルトニク・シャーンドル『６人の人物のコンポジション』角ばった幾何学的な人物たち。茶色の人が２人、青い人が３人交互に並び様々にポーズを取る。手前には茶色い人が１人いて、座ってポーズ。シャーンドルは行動主義の代表的作家らしい。構図が面白かった。
他にも表現主義に１度行くも、古典的画風に戻った画家の絵もあって、最後も面白かった。
お土産は、ポストカード４枚。正直、グッズが皆、そこそこ高価で、もう少しお手頃価格の物を作って欲しかった。5800円のバーバーリウムとか、3800円のボールペンとか、ちょっと手が出ない…。六本木価格かも知れないが。ポストカードも種類が少なかったし、紫のドレスの婦人の絵葉書は完売してたし(-_-;)。クリアファイルも種類少ないよな。
あと、家人の土産にワッフル煎餅みたいな物を購入。
ハンガリーの画家は、日本では馴染みがあまりないかもですが、結構面白いと思います。ヨーロッパ絵画全体を見渡せる展示にもなってますので、西洋絵画なんて知らん！って人でも、大丈夫かと。
展示は３月16日までやっています。
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